超進学校・二番手中高一貫校・公立進学校の違い

 日本には約一万の高校が存在し、それぞれの学校は地域や種別、そして偏差値によって様々な違いがある。大学は格が自己目的化しており、「出口の実績」に相当するものが観念しにくいが、高校の場合は進学実績という明確な指標があるので栄枯盛衰を考察しやすい。
 また、高校の種別の違いも重要だ。同じ高校でも高校単独の学校もあれば中学入試でしか募集していない学校もあり、大学付属校もある。そうした種別が高校の個性に彩りを与えているのである。
 今回は主に上位の進学校を中心に大まかな進学校の分布とレベル感を考察していきたいと思う。

進学校のカーストが明瞭な関西圏

 関西の進学校の序列は非常に明確でわかりやすい。関西圏は首都圏と比べて中学受験がメジャーではなく、大半は公立進学校への進学を目指す。京大や阪大も大半が公立進学校の出身だ。
 しかし、上位の生徒に関しては様相が異なる。関西の場合は関東以上に優秀層の中学受験志向が強い。東大や国立医学部に進学する層は中学受験組が大半である。

 関西の進学校のうち、頂点に君臨するのが灘だ。1960年代に日本一の超進学校になってから一度もその座が揺らいだことはない。関西の中学入試では憧れの的である。

 灘の次のゾーンの二番手進学校が東大寺・西大和・甲陽学院・大阪星光学院・洛南・洛星である。これらの学校は地理的に分散しており、灘回避組が受ける甲陽や灘落ちを拾う洛南など性質の違いはあるが、学校のレベルに大きな違いはない。関西の中高一貫校では灘を含めた7校がセブンシスターズとなっている。

 これらの学校に次ぐ三番手の進学校となると、途端に公立が優位になってくる。北野・天王寺・堀川・神戸といった学校である。清風南海など同レベルの私立中高一貫校も存在するが、かなり地味だ。入試難易度も大きく下がる。関西の特徴は上位層のみが中学受験をし、三番手以下は高校受験で公立進学校に進学する者が多いことだろう。
 
 関西の場合、最近まで女子の進学校が少なかったことが関東との違いだ。関西には女子の入れる超進学校は存在せず、実質的に洛南中の女子枠が超進学校の代わりとなっている。他には西大和と神戸女学院が女子優秀層の受け入れ先で、これらの学校は二番手中高一貫校と言えそうである。
 
 関西の優秀層の場合、中学受験が明確に高校受験組の上位に立っている。洛星や甲陽学院は高校入試が存在せず、東大寺も廃止に向かっている。大阪星光学院も極めて少数のため、編入枠と考えたほうが良い。洛南と四天王寺は高校受験組が多いが、マンモス校という特殊な構造のため、中学受験とは水準とカリキュラムで大きな差がある。高校受験の二番手以上の難関校がほとんど存在しないのである。
 例外は灘だ。灘の高校入試は日本最難関で、極めてレベルが高い。生徒のレベルは内部生に引けを取らない。西大和も内部生に若干劣る程度のようだ。関西の高校受験で公立進学校よりもレベルの高い学校はこの二校のみと考えられる。
 関西をモデルに超進学校・二番手進学校・三番手進学校のイメージを想定したいと思う。テンプレは超進学校が灘、二番手進学校が甲陽、三番手進学校が北野だ。
 大学別で考えると阪大は公立進学校が多く、大半が高校受験組だ。京大になると三番手の公立進学校と私立が半々になり、二番手中高一貫校の存在も目立つ。東大・国立医学部になると二番手中高一貫校が大半だ。理三・京医に関しては灘が大半を占める。偏差値帯によってボリュームゾーンが明確に異なるのである。

超進学校

 最近、受験関係の動画などで「超進学校」というワードを見かけるようになった。日本の進学校の中でも特にレベルの高い学校を指すようだ。具体的には超進学校として挙げられるのは灘・開成・筑駒・桜蔭の4校である。

 東大理三の半分がこの4校の生徒によって寡占されている。学年の半分以上が東大合格ラインにあり、トップテンに入れば理三安全圏である。また文系は文科一類に進学者が集中するという傾向も見られる。
 以前は他にも超進学校に当てはまりそうな学校は存在した。ラ・サールは全盛期には学年の半分が東大に進学していた。しかし、他にも中高一貫校が増加したことで遠隔地のラ・サールは人気がなくなり、現在は二番手中高一貫校のレベルに落ち着いている。
 全盛期の学芸大付属は東大合格者が100人を超えており、やはり超進学校の水準に近かった。しかし中高一貫校ではないというのがハンデになり、凋落傾向だ。
 学校群制度以前の日比谷高校は現在の開成とレベル感が近く、やはり超進学校であったことは間違いない。

 近年躍進が著しいのが聖光学院だ。東大現役合格率は開成に肉薄している。神奈川県のトップ校という地理的強みを考えるとまだまだ躍進が続くかもしれない。聖光学院は新たな超進学校の有力候補である。

 なお、超進学校のうち灘・開成・筑駒は高校入試も実施している。層は薄いが高校受験の最上位層も結局これらの超進学校に吸収されている。

二番手中高一貫校

 この偏差値帯の学校は関西でいうと東大寺・西大和・洛南・洛星・甲陽・大阪星光の6校がピタリと該当する。神戸女学院や四天王寺も場合によっては入るかもしれない。
 関東では麻布・駒東・栄光・聖光・海城・渋幕・筑附と近年では浅野・渋渋も入るだろう。女子学院・豊島岡・武蔵は入れてよいか微妙である。概ね鉄緑会の指定校に入るラインと同じ水準だ。いずれも早慶付属と同等か、それ以上の難易度となる。
 九州ではラ・サールと久留米大附設が該当するだろう。公立優位の地方であってもこの二校は別格扱いだ。公立進学校を勝る実績とブランドを勝ち得ている。
 中学受験の難関校は基本的に二番手進学校と超進学校を指すことが多い。これらの学校はいずれも公立進学校よりもレベルが高く、早慶付属と同等以上のため、東大と医学部を狙う生徒にとっては入学の意義が大きいからだ。

 概ね学年で東大に進学できるのは上位20%〜30%程度である。超進学校と異なり入学=東大まであと一歩、とは行かない。しかし落ちこぼれリスクが超進学校に比べて低いので、東大レベルを狙う生徒にとってはお買い得と思われる。

 この偏差値帯の学校は完全中高一貫校が多い。高校から入れるのは関東では筑附と渋幕、関西では西大和のみだ(洛南の高校組は大きくレベルが異なるので除く)。超進学校は圧倒的なレベルの高さから高校からでも入りたい人が多い。一方で二番手進学校はそこまでの集客力がないので公立上位進学校と競合することになる。したがって内部生と同水準の生徒が集まりにくいという事情がある。

 公立進学校のうち、二番手一貫校と同レベルにあると思われるのは日比谷高校だ。男子に限れば学年の3割程度が東大合格圏にいると思われる。以前はこのゾーンの生徒は筑附・学大附・早慶附属・海城に流れていたのだが、近年は日比谷への集中が激しい。二番手中高一貫校が高校入試を廃止した背景にこれらの公立進学校に生徒を奪われてしまうという事情があるだろう。

三番手進学校

 この偏差値帯になると急に公立が優位になり、私立中高一貫校のブランド力が低下する。同じ偏差値帯だとどうしても学費と伝統の観点で公立進学校が強くなるからだ。「わざわざ中学受験して私立にいくなら地元の公立進学校で良いじゃないか」という具合である。
 この偏差値帯の高校は日本全土にたくさんある。関東なら都立西・国立・千葉・浦和・翠嵐、関西なら北野・天王寺・神戸・堀川、名古屋なら岡崎・旭丘などである。大都市圏を除く地方ではこれらの公立進学校が最上位層の進学先となる。

 私立の場合は難関校ではなく中堅校という扱いになることが多い。関東では芝・攻玉社・市川・栄東あたりで、関西では清風南海あたりだろう。この手の私立高は高校受験で公立進学校に太刀打ちできないので、完全一貫校か公立進学校の滑り止めであることが多い。

 概ね東大に合格するのは学年上位10%程度だ。また特徴として理科二類や文科三類の合格者が多いというのもある。

平均進学先

 大学の偏差値帯によって出身校の最頻値は異なる。

 早慶旧帝レベルの場合、そもそも有名校の出身者は少なく、三番手進学校が上位にランクインする。ただしそれ以下の学校からの進学もかなり多い。最頻値となると三番手進学校よりもさらに下だろう。早慶附属の偏差値は三番手進学校よりも明確に高いので、実は早慶に入るのは大学が一番簡単ということになる。内部生は確実に早慶に進学できるし、しかも上位学部に行くことが多いので非常に人気なのだ。

 京大・一橋・東工大レベルの場合、中高一貫校が上位にランクインしてくる。ただし、公立進学校もかなり多く、半々くらいだ。中学受験組は半分以下だろう。
 この偏差値帯の大学の場合はトップの公立進学校と中高一貫校が拮抗していることが多い。

東大・医学部レベルの場合は更に様相が異なる。この偏差値帯になると中高一貫校が圧倒的に多くなる。合格者の最頻値となると二番手中高一貫校だろう。大都市圏の公立進学校から合格する者も多いが、数の上では少ない。
 なお、東大理一に関してはあまりにも上下差が激しく、レベルというものを観念するのが難しいので考察対象としては不適切だと考えている。

 その上のレベルになると、ついに超進学校が姿を表してくる。京医・阪医・慶医・医科歯科辺りの超難関医学部は超進学校の生徒が多く、二番手中高一貫校と拮抗するようになる。伝統的に文系最難関とされている東大文一でも超進学校の出身者が他の科類よりも多く、灘や筑駒の場合は文系の東大進学者はほとんどが文一である。文一は公立進学校の文系首席クラス・二番手進学校のトップ10・超進学校のそこそこ優秀層で形成されている感じだ。
 
 東大理三は出身者の半分が超進学校であり、残りもほとんどが二番手中高一貫校だ。公立出身者は皆無だ。基本的に理三に現役合格できるのは超進学校のトップ10と二番手中高一貫校の理系首席クラスと考えたほうが良い。

 すると概ね高校と大学の学力ゾーンの対応関係が見えてくる。

レベル7 東大理三=超進学校
レベル6 阪医・慶医=超進学校・二番手中高一貫校
レベル5 東大理二=二番手中高一貫校
レベル4 一橋・東工大=公立最上位校・中堅上位中高一貫校
レベル3 早慶旧帝=公立名門校・私立中堅校
レベル2 MARCH=私立中堅校・公立二番手校
レベル1 日東駒専=無名校

 レベル7とレベル6は大半が中学受験組だ。公立高校の出身者は非常に少ない。灘や開成の高入生もそこまで多くない。
 レベル5となると首都圏の場合は70%程度が中学受験組となる。関西の場合はもう少し高いかもしれない。
 レベル4となると中学受験組が半分を割るようになる。京大で半々、一橋の場合は公立の方が多い。中高一貫校ブームではあるが、実際のところ東大・医学部以外はそこまで中高一貫校に通う進学上のメリットはなさそうだ。
 レベル3となるとそもそも有名高校の出身者は稀だ。無名校からでも合格のチャンスは掴めそうである。

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