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彼の香りと私の匂い

私は読書、映画、音楽、時々漫画などが好きな根っからのインドア派であり、どのジャンルにもそれぞれ好みがあるが、全てに共通しているのが「恋愛を主体としたいわゆるラブストーリー」にほとんど興味がない、という事だ。もちろん人間生活を描く上で恋愛というのは関わってくる事が多いし、恋愛要素が含まれる作品は多々有、それを読むのが嫌というわけではないのだが、「究極のラブストーリー」「切ない初恋物語」「胸キュン☆青春ラブコメ」のように恋愛が主体になっているものが苦手なのである。

そんな中、私が「全くそんな気なかったのに、まさか購入までしてしまった」作品がある。暇な時に「LINE漫画」で何か面白いものないかなーと探していた時、何の気なしにテキトーに読み始めた漫画だ。

それは広田奈都美著・「彼の香りと私の匂い」という一応恋愛とか結婚とか不倫だとかが主体になっている漫画である(お仕事漫画的な一面もあるが)。多分、マイナーな作家さんなのかも。

これ、最初は「うーーん」って感じで本当に暇つぶしに読んでいた。しかも、困ったことに絵が全く好みではない。本来だったら早々に切り上げるのだが、後半になるにつれ、徐々にリアリティのある話になっていき面白さが増し、ずるずると読み続け、LINE漫画無料分が終わって読めなくなった後はコミックスを電子で買ってしまった。
なぜ、惹かれたのか。それは主人公のバリキャリ「森川みどり」の、本当に今までの漫画でありそうでなかった、絶妙にリアルなキャラクター設定と、夫の浮気相手である派遣社員の、「みどりの劣化版」のような女、香のこれまた絶妙にリアルな設定である。
話としては主人公みどりが「匂いが大好きな高校時代の先輩」と同じ職場で働き半ストーカーをして、付き合い結婚もするが、白川というライバル関係になる男が現れ、ぶつかりつつも互いに惹かれていく、でも夫である先輩は仕事はできて見た目もいいが人として不器用すぎるところがあり、みどりに依存し、寂しさからにみどりによく似た「香」という派遣社員と5年にも及ぶ私身体の関係を持ち破局に向かう…でもこの香という女が自他共に認めるぶっとび女みどりよりもそらにぶっとんでいた…。
うーん、解説が難しい。最近の漫画における「他人の彼氏寝取るぶっとんだ女」って、なんかこうあざといぶりぶり女だったり、ホラーレベルに極端に狂気じみた女として描かれるケースが多いと思うんだけど、そういう感じでは全くない。見た目も本当に普通。金持ちに憧れているが母親とせまいアパートで二人暮らし、コーンスープが食事のおかずになったり、食べ方が汚く、会社で個包装のお土産が配られるとこっそりたくさん持ち帰り「私の為に後輩が買ってきてくれたの」と嘘をついたり、お給料が出て高級なケーキ屋さんにケーキを買いにいくも爆買いする女を横目に一番安いシュークリームしか買えず、歴代の男たちには殴られて当然だった、「先輩」ははじめて殴らなかった、だから手に入れたかった、けれど女友達とファミレスで語り明かす事もしてみたくて本妻であるみどりとも仲良くしたい…現代社会においてこういう女性ってきっと少なからずいるんだろうね、って言う描かれ方が絶妙なのだ。
そしてみどりはツイッターの裏垢を作ってくだらない事をつぶやいてるんだけど、そのつぶやき方が…もう本当にこれ漫画?漫画でしかも女性の主人公だったら、もうちょっとつぶやき方配慮しない笑?って思うところを完全に容赦なくリアルな「オヤジ女子」としてつぶやいているのがマジで笑えてくる。またこうやって解説してみると結構ドロドロした内容に思われがちだが、コメディ要素も強くかなり読みやすいというのが魅力でもある。
とまあ説明が収集つかなくなってしまったが、とりあえず「いや~この漫画、地味だけど、本当に地味なんだけど、地味におもろいわ」と言いたくなってしまう魅力がある。とりあえず新刊が出るのが楽しみである。

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