生命としての樹皮(前編)◆ 『指輪物語』 と水俣
この数年、ファンタジーの名作〈『指輪物語』と水俣 〉というテーマ* で文章を書いてみたい気持ちが高まっている。
ファンタジー文学に夢中になった高校時代、時を同じくして学校のフィールドワーク学習で水俣という世界と出会った。大人になった今も、私は相変わらず『指輪物語』や『ゲド戦記』に夢中で、そこに描かれている世界に水俣の記憶の断片を感じることがある。それらはいずれも〈自然としての人間〉だった時代を描き、近代化・工業化に伴い私たちが忘れてしまった記憶の古層を呼び起こしてくれる。