第二部 妖精たちの歌

8/22の田園調布 せせらぎ館のコンサート
そちらの曲目の和訳ページになっております!

詳しくはこちらのページから!https://www.musia.link/posts/36088055


オペラ「ミニョン」より
「私はティターニア」

アンブロワーズ・トマ作曲

さぁ、今夜の妖精の女王は私よ。
ほら、私の金色の魔法の杖をご覧になって?
それから、杯もあるのよ!

私はティターニア、金色の髪をした風を司る娘
私は微笑みながら世界を駆け巡るの
鳥よりもすばしっこくて雷よりも速いのよ

浮かれた小さな妖精たちは
空飛ぶ私の馬車を追っかけてきて
私と一緒に夜の中へ消えていくの
喜びと愛を歌いながらね!

浮かれた小さな妖精たちは
空飛ぶ私の馬車に駆け寄ってくるの
一緒に光の女神の轍を通ってくるのよ

夜明けが花を目覚めさせる時、
森の中や、色鮮やかな草原、
霧の中の滝つぼで泡立つ水面で
軽やかに飛び回る私の姿が見られるでしょう

これこそ私、ティターニアなのよ!

画像4

題名:『オーベロンとティターニアの諍い』(1849)
作者:ジョゼフ・ノエル・ペイトン 
所蔵:スコットランド国立美術館

左前の女性がティターニア、中央の男性は夫オベロン
「真夏の夜の夢」冒頭で、2人が喧嘩をするシーン

妖精の歌 

フーゴー・ヴォルフ 作曲

夜中に森で見回りが叫ぶ
"11時だよ"と
小さなかわいい妖精が眠っていた
11時に

妖精はこう思った、自分の名を谷の中から呼んだのは
夜鳴きうぐいす、
それか友達のジルペリットかなと

妖精は眼をこすりつつ、
カタツムリの殻でできた家から出てきた
さながら酔っぱらいが歩いているように
まだまだ眠たかったのだろう

足を引きずりトコトコと
ハシバミの森を通り、谷を降りていって
狭い岩壁をするりと抜けると
そこには蛍の光でいっぱいだった。

"あの小さくて明るい窓はなんだろう?
あそこで結婚式があるのかな?
小人たちが食卓に座って
パーティーでもやってるのかな?
ちょっと覗いて(Guck)やろう!"

"いてて!硬い岩に頭をぶつけちまった!"

妖精よ、これで満足かい? 
カッコー!(Gukuk!)

魔女の歌

メンデルスゾーン作曲

つばめが飛び、春は咲き誇り
あたしたちに冠のための花をもたらしてくれる
あたしたちはもうすぐ戸を飛び出して、
華やいだ舞踏会にくり出すのさ

黒い雄ヤギにホウキ、
火かき棒に、糸巻きが
あたしたちを雷か風のように素早くさらってくの
ごうごう唸る疾風とともにブロッケン山へ

あたしたち魔女は悪魔ベルゼブブの周りをくるくる踊って、彼の鉤爪の手にキスを落とすの
ひとだまの群れはあたしたちを包み込みながら焔を揺らす

その後ベルゼブブは一緒に踊ったあたしたちに次々に褒美をくれるの
"お前は絹の羽衣を着てどんどん美しくなれ、
お前は埋蔵金を掘り出すんだ"

火を吹くドラゴンが屋根の周りを飛び回って
バターや卵をあたしたちに持ってきてくれるのさ
近所の人たちは火花が散るのを見るやいなや、
その前で十字を切るのさ

つばめたちが飛び回り、花々が咲き乱れる、
春爛漫のこの日。
まもなくあたしたちは足を忍ばせ戸から飛び出して行くのさ、
ヤッホー、華やいだ舞踏会へ!

画像2

題名:『魔女の夜会』
作者名:フランシスコ・デ・ゴヤ
所蔵:プラド美術館

真ん中が悪魔ベルゼブブ、それを取り囲むように魔女が貢ぎ物を悪魔に渡している 。この貢ぎ物は様々であるが、この絵の中では誘拐してきた赤ん坊が描かれている。


ローレライ

ハイネ作詩
リスト作曲

なぜだかよく分からないのだが、私は悲しみに暮れている
古い童話が
私の頭の中から離れないのだ

冷たい風の吹く夕暮れ時
ライン川は静かに流れていた
山頂はキラキラと輝いていた
夕陽を浴びながら

美しく若い女性が
あそこの岩の上に座っていた
金色のアクセサリーが光っている
彼女はブロンドの髪を梳いていた

彼女は金色の櫛で髪をといている
歌を歌いながら
その歌は摩訶不思議で、
とてつもない魔力を持つメロディだった!

そこを通りかかった小さな船乗りに
恐ろしい危機が迫る
彼は水底の岩には目もくれず、
ただただ天を見上げるばかり。


ああ!
ついに波が飲み込んだのだろう
小舟と船乗りを
彼女の歌の力が仕向けたのだ
これがローレライの為すことなのだ。


画像5

題名:『ローレライ 』(1878)
作者:ヴィルヘルム・クレイ
所蔵:ヴィースバーデン博物館(ヴィースバーデン、ドイツ)
中央の女性がローレライ、
急なカーブが現れ、切り立つ岩の崖に船が衝突することが多発し、その場所は妖精が現れるという謂れが始まりました。


オフィーリアのアリアに登場する妖精 ウィリ

画像5

題名:『グリージ扮するジゼル』(1841)
作者不明
オペラ美術館(パリ、フランス)
バレエ『ジゼル』は、主人公ジゼルがウィリという妖精に変身するお話。フランス語ではヴィリ。
恋人に裏切られそのショックで死んでしまった彼女の魂は、この世に想いを残し妖精の姿となって夜に彷徨う。妖精ウィリとは彼女のように、婚前に死んでしまった女性の霊たちを指す。ウィリたちは夜に湖のほとりに迷い込んだ男性を誘惑し、一緒に踊る。その舞踏は、男性が死ぬまで続くという。


オペラ「ハムレット」より
私を遊びの仲間に入れてください

誰か遊びに私も入れてくださらないかしら…
誰も追いかけて来ないわね。
夜明けとともに城を飛び出したのだから……
夜露で地面が濡れてるわ
ひばりが夜明け前に飛び回っている

だけどどうして低い声で喋っているの?
私のこと、ご存じない?
ハムレットは私の夫、私はオフェーリアよ?
あの優しい誓いは私たちを結んでいる
私たちは互いに心を許しあったの

彼がどこかに消えて私を忘れたなんて、
誰かが言ったところで
そんなこと信じるはずないわ
ハムレットは私の夫、私はオフェーリアなのだから

もし彼が裏切ったとしたら、気が狂ってしまうわ

花を分け合いましょう
あなたには慎ましき小枝とローズマリー*を
あなたにはこのツルニチニチソウ*を

さぁ、今から私の歌を聴いて

青白い顔をしたブロンド髪の妖精ウィリが深い水底で眠る
その瞳は焔のようであった
神は川のほとりで夜更けに帰路に着く夫婦を見守る
幸せな妻は夫の腕のなかに
これほど甘い幸せに私は嫉妬しているの。
ニンフは眼に焔をたぎらせながら、
湖の底で眠るのよ。

その人魚はあなた方を眠る湖の底へと手招きする
辺りは一面霧に包まれるのよ。
さようなら、白い星たち、
空よ、優しい恋人よ。
幸せな妻は夫の腕のなかに
これほど甘い幸せに私は嫉妬しているの。
眠る湖の底で、私の恋人とは永遠に会えないの。

…アハハ!ラララ……♪

ああ、愛しい夫!
愛しい恋人!
あの愛の告白、あの優しい誓い!
私の一番の幸せ!

ああ、ひどい人!貴方を私は愛しているわ!
私の涙を見たでしょう?
私、貴方のためなら死ぬわ!

画像3


題名:『オフィーリア』(1852)
作者:ジョン・エヴァレット・ミレー
所蔵:テート・ブリテン美術館(ロンドン、イギリス)
柳の枝に花冠をかけようとして小川で溺れたオフィーリア。シェイクスピアの原作では妖精ウィリではなく、ヴァレンタインの日に起こる女性の悲劇を皮肉る。
*1ローズマリーは婚礼の際の花嫁の花冠に使われることもあり、誠実、変わらぬ愛を意味する。
*2ツルニチニチソウは、若い友情や楽しかった追憶を花言葉に持ち、不死のシンボルともされている。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?