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考察: ライドシェアの価格帯はどのくらいに収まるのか / 消費行動に影響を与えるのか

動機

「(これまで公共交通機関を用いていた人々が)ライドシェアを用いて移動するようになる」という現象が日常的に生じるとするならば、駅付近以外におけるフットプリントの増加による不動産価格の変動、商業施設の立地変化といった変化が生じ、新しい事業機会が生じる。この現象が実際に起こるのか、検証しようと考えた。

前提

ライドシェアは価格競争が起こりやすい市場である。サービス間で顧客体験に大差がないためプレミアを載せにくいため価格以外の競争要因を担保しづらく、かつ業界トップの企業のみが安定的な収益を獲得出来るから競争を激化させるからである。Uber Eatsのようなフードデリバリー領域と近い。
したがって、業界で最も資金力のある最大手のプレイヤー(Uber)が価格競争に勝っていたとして、Uberの収益構造を分解すれば大体の損益分岐点価格に近い数字がわかるのでは無いか、という前提に基づき考えている。

ライドシェアの価格帯はどれくらいに収まるのか

極限まで最適化されたオペレーションが実現した場合、1キロあたり200円(楽観シナリオ)、規制維持等の要因で価格が現状維持された場合、1キロあたり500円程度 (悲観シナリオ) になる。

根拠は以下の通りである。もしおかしい部分があったら、コメント・DMなど頂けると有難い。

  • Uberのライドシェア部門の利益率は7%しか無い→現状よりも減少する可能性が低い

  • 従って、ライドシェアプラットフォームの経営を維持するためにはライドシェアの価格はドライバーの時給 * 1.3を下回ることは無い

  • タクシードライバーの年収がフルタイムで年収700万とした場合・タクシードライバーが平均40km/hで走っている場合 - 時給3650円、キロあたり91円となる

  • プラットフォームの取り分を考慮すると最低で1キロあたり120円

  • ただ、現実的には配車の空き時間があるため、稼働時間の60%のみ人を運んでいたと仮定すると、120*1.66≒200円となる

これらはいくつかの仮定に基づいており、改善の余地があるだろう。

*なお、自動運転の普及による価格低減は現地点では考慮しない (自動運転レベル3によるロボットタクシーはまだ実証実験段階であり、公道での走行にはあと5年程度はかかるのでは無いかと考えている)。

ライドシェアは個人の消費行動に影響を与えるのか?

気になるのは、これまでタクシーで移動しなかった個人が、価格低下したライドシェアで移動するのか?という点である。イメージとしては、渋谷でランチを食べた大学生三人組が、混雑を避けておしゃれなカフェを探してひと乗りする、ような状況を想定している。ライドシェアの価格は楽観シナリオと悲観シナリオの平均値となる1キロ350円に落ち着くと仮定した上で考えてみよう。

消費行動に与える影響を考察すると、三人組のグループが近距離の移動に対して1人約600円まで支払うモチベーションがあると仮定した時、約5キロまで移動可能である。試しに渋谷駅を中心とし、直線距離が3キロ圏内、5キロ圏内の区域に円を引いてみた (道のりが5kmであるとき、直線距離は3キロ程度と仮定)。結果として、中目黒、目黒、下北沢、乃木坂のあたりまでは移動できることがわかる。

渋谷駅から5キロ圏内 (緑円) と3キロ圏内 (赤円) - はんけいを用いて作成

ここからは自分の肌感だが、日常の移動手段として全然悪く無いラインだし、集団で”ちょい乗り”して他の場所を訪れるようなライフスタイルは普及する のでは無いだろうか。渋谷など大きな駅付近の混雑したカフェに入り浸るより、ライドシェアで"ちょい乗り"して、駅から少し離れた場所へ向かい、"コト消費"出来る体験施設へ向かうようなライフスタイルが若者の間で流行ると考えている。


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