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「オンライン開催のドラフト」とは

今年のドラフトはオンライン?

今年のNPBドラフトで形式を大幅に替え、
オンライン形式の導入も検討しているとの報道があった。
現状では
特定の会場に多数の人を入れて行う従来の方式は不可能なので
妥当な判断だと思うが、
巷の声を見ていると
そもそもオンラインでのドラフトがどんな形で行われたかが
全く知られていないばかりか
よく知らないのに「MLBのようにしろ」と主張する人が多い。
既にリモート形式でのドラフトが行われた
MLBとNFLのドラフトについてみてみたい。

むしろ派手になったMLB

MLBのドラフトについては何も知らずに
「(現実には行われていない)MLBドラフトを見習え」と言う人が
野球解説者も含めて後を絶たないのだが
まずはこの動画を見てほしい。
YoutubeにMLBが公式であげている2019年のMLBドラフトである。
14時間半弱ととんでもなく長いので飛ばし飛ばしでいい。
(1巡02:03~ 2巡2:13:29~ 3巡(Day2)3:03:46~ 11巡(Day3)7:52:32~)

それがリモート形式の今年はこうなった。
全体1~10位
5巡160位(最後)
MLBは以前から
オンライン視聴を前提としたドラフト演出をしていたため、
リモートドラフトでも大きな変化はなかった。
当日は私も少ししか見ていないのだが、
2日目2巡の序盤が160位の選手とほぼ同じ演出だったので
2~5巡は同じ形で続いたと思われる。
今年は指名が40巡から5巡と大幅に減ったのが猛批判されているが、
指名が5巡までになったことで
3~5巡の指名選手1人1人にかける時間は
むしろ増えていた。

オンラインなりの演出と一体感を出したNFL

毎年3日間かけて
6桁の観客動員と様々な演出が行われるNFLはどうだったか。
こちらは
今年のBest Momentsがわかりやすい。
また1~4巡までは
各巡(1巡は10人ずつ)ごとに
全ての指名が公式チャンネルにあがっているので
そちらも探してみるといいだろう。

NFLは例年のような大規模な観客動員ができない代わりに
各チームのファンともオンラインで接続。
コミッショナー自らブーイングをあおったり(02:22)と
いつもの会場に近い盛り上がりを演出するように努めていた。
NFLでは指名直後のウォールームの様子を映すこともしばしばだが
こちらはヘッドコーチの自宅などへの接続で代用していたようだ。
ペイトリオッツのベリチックHCの飼い犬(02:06~)なんて
日本なら一瞬でも画面に映った時点で猛批判にさらされるだろうが、
NFL公式でこの犬がサムネになっているのは
アメリカと日本の国民性の違いか。
2017年のBest Momentsサムネはオランウータンだしな。

MLBとNFLの共通点

どちらにも共通した演出は、
選手の自宅をオンラインで中継し
その場で選手へのインタビューも行っていることだ。
NFLではもともとドラフト会場へ有力選手とその家族を招待して
大観衆の前での
コミッショナーによる祝福やインタビューを行っていたが、
ここ1、2年は招待に代わって
選手の自宅へのオンライン接続が増えていたので、
その流れが一気に加速した形と言える。
MLBはそもそも現地への招待選手がせいぜい3人程度だったから
この点でもむしろエンタメ要素が大きくなったわけだ。

NPBでも今までの記者会見に代えて
同じ手法を取り入れるべきかどうかは何とも言い難い。
選手の自宅を映せるか否かは
アメリカと日本の住宅事情の違いも大きいし、
映像には
どう見ても三密状態になっている箇所が多かった。
向こうだと視聴者の反応がどうだったかはわからないが、
日本でやったら間違いなく大問題になる。
インタビューを行うなら音声のみにするか、
背景をあらかじめ公式で提供、設定してもらい
周囲の物が映らないようにするかになるだろう。

1位抽選はどうなる

さて演出過多との批判も多いNPBのドラフトだが、
1位抽選以外にエンタメ要素はほとんど存在しない
1人あたり1分もかからない2巡以降の指名速度は
MLBでは昨年までの11巡以降とほとんど変わらず、
見ている方も選手のことがよくわからないまま淡々と進行していく。
観客もよほどの有名選手(ほぼ甲子園の高校生)以外は反応がなく
ほぼ「お通夜状態」で指名が行われていた。
1位指名の地上波中継と記者会見、
1位指名後の地上波番組しか知らない人にとっては
いかにも演出過多に見えるのかもしれないが、
全体で見れば
100人程度の指名が非常に地味な、機械的な形で行われるのが
NPBの特徴である。
この唯一と言っていい演出である1位抽選を
今年はどう行うのか。
1位指名をウェーバーにするのでなければ抽選になるはずだが、
ここでどのような形式がとられるのかが
今年の見どころになる。

NPBで取り入れてほしい演出

今年のドラフトも
例年通り1日で行われる。
ただ個人的には、
選手や関係者は気が気じゃないかもしれないけども
ドラフトに1日じゃなく2日、
そこまでいかなくてももっと時間をかけてほしい。
なぜこんなことを言うかというと、
指名選手がその場で紹介される時間が欲しいからだ。
何度も言っているが
ファンは自分の好きなチームに指名された選手のことをよく知らない。
下位指名や育成指名の選手はおろか
大学生や社会人は1巡指名でもほとんど知られておらず、
大学全日本代表の四番打者や
社会人最大の全国大会MVPですら
「誰だよそれは」と叩かれる
始末である。
だが会場でのドラフトでは
1人1人の指名発表の間隔が非常に短くかつバラバラなので
選手を紹介するのはほぼ不可能。
指名選手の解説を行うには
MLBのようにプレーや簡単なスタッツの映像を交えつつ、
解説が終了してから次の指名発表を行う演出が絶対条件になるのだ。

難しい点もある。
まず指名選手の情報を事前に全て網羅するのが困難なこと。
高校生と大学生はプロ志望届があるので
志望届提出選手の最低限の情報と映像を入手することは可能だし、
社会人は主要なチームの一定の年齢の選手から
指名凍結の要請があった選手を引いた数を
全て集めておけば何とか対処はできるはずだが、
都市対抗予選の序盤で毎年敗退する社会人チームや
クラブチーム、準硬式・軟式、海外のチームの選手を網羅するのは
人が多すぎてさすがに厳しいだろう。
もっとも
各チームのテーブルから行われている入力は
NPBのほうで指名候補選手のデータベース化が行われていないと
難しいはず。
となるとNPB側には
開催当日までに各チームの指名候補リストが
少なくとも合計数百人ぶん送られていると考えられる。
情報をある程度選定しやすい高校、大学、独立リーグ以外は
各チームからの情報提供を生かして
何とかできないこともないのではなかろうか。

あとは解説の人選。
NPBにはMLBのような
機構そのものに専属している解説者がいない。
そうなると
指名選手の特徴やチームの補強ポイント、指名意図に対し、
自分の好みをいったん脇へ置いておいて分析、推察して
解説できる人材
が複数必要なのだ。
そんな人が在野にいるかどうか。
プロの元スカウト、フロントトップでは
どこかのチームから離れているフリーの人自体がそうそういないし、
何よりも元プロ、プロ経験のないドラフト評論家を問わず
在野で自分の好みを脇に置いた解説をできる人が
ドラフト後の採点を見る限りだと見当たらないのだ。
指名した瞬間に
公式の解説者が選手の能力やチーム戦略を全否定するようでは
大山悠輔指名での惨状どころじゃない事態を招く。
それだけは何としても避けなくてはいけない。

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