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【司法/予備・選択科目の選び方②】知的財産法編〜判例学習が肝〜

司法試験・予備試験の選択科目を何にするかは決めましたか?

倒産法、経済法、知的財産法、労働法、国際関係法(私法)、租税法、環境法…たくさんあって悩みますよね。

「興味があるのは知的財産法だけど、自分に合わなかったらどうしよう…」「基本7科目がまだ不安だからできるだけ楽な科目がいいな…」「知的財産法に決めて法科大学院でも履修はしているけどイマイチ勉強法がわからない…」など、様々な悩みがあると思います。

本記事は、司法試験や予備試験の選択科目を何にするか決めかねている受験生と、選択科目を知的財産法に決めたものの勉強法がわからないという受験生に向けて、様々な不安点・疑問点を解消していただこうと執筆したものです。是非、選択科目を決める際の参考にしてください!(ライター:神原/The Law School Times ライター


知的財産法とは

知的財産法という法律はない

知的財産法(以下「知財法」)とは、特許法・著作権法・意匠法等の総称をいいます。選択科目の知財法では、特許法と著作権法から出題されます。司法試験では、例年第1問で特許法が、第2問では著作権法が問われる傾向にあります。予備試験では、特許法と著作権法のいずれかが問われる傾向にあります。

知財法を選択した場合には、特許法と著作権法の2つの法律をマスターする必要があります。

特許法と著作権法のイメージ

皆さんは「〇〇会社がワクチンの特許を取った」といったニュースを耳にしたことがあると思います。特許法は、個人が発明した技術等を保護する法律です。特許を取得するための要件や得た権利がどのような場合に侵害されどのような場合に侵害されないかを学ぶというイメージです。

一方、著作権法は「初期ミ〇キーの著作権が切れる」など話題になったこともありましたが、イラスト等といった個人の創作的表現を保護する法律です。どのようなことをしたら著作権を侵害するのか、どのような場合では侵害しないのか等を学ぶというイメージです。

民法と書き方が似ている

特許法と著作権法の問題は、民法に近いところがあります。

ただし、書き方が民法に近い問題が多いというだけで、民法の知識が必要不可欠というものではありません。

具体的には、特許法・著作権法の問題の約7割近くが相手方の反論を踏まえながら損害賠償請求や差止請求が認められるかという問題であり、請求者側と反論を主張する側の二者構造が民法に似ています。

例えば、特許法と著作権法のいずれでも権利侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求の可否について問われる問題があります。このような問題では請求者の主張として権利の存在、侵害、侵害と損害との因果関係等を書き、相手方の反論として権利無効の抗弁等を主張し請求の可否を論じていくことになります。権利の存在や抗弁の内容が知財法独特なものであるだけで書き方は民法に近いです。

なお、このような請求の可否について問う問題以外では、行政事件訴訟法に関連して判決の拘束力といった問題等が出題されます。

どんな受験生に向いているか

民法に似ているとは言いましたが、民法が苦手な人が向いていないというわけではありません。

判例の勉強をすることが苦でない人が向いているといえるでしょう。その理由としては、知財法は他の選択科目に比べて百選記載の判例が多いからです。どの科目でも百選は勉強すべき教材の一つとして挙げられますが、倒産法は倒産判例百選、労働法は労働判例百選と1冊なのに対して、知財法は『特許法判例百選』と『著作権法判例百選』の2冊を勉強する必要があり単純計算で2倍の勉強量になります。判例の勉強が苦しいという人は高得点が取りにくい科目といえるでしょう。もっとも、司法試験の問題は百選の判例ベースであることがほとんどのため、百選の知識を取り入れれば高得点を取りやすくなります。

なお「特許法と著作権法の2つの法律を学習しなければならないのは大変そう…」と心配に思っている方がいるかもしれません。確かに特許法と著作権法は制度として別個のものなので違うところがそれなりにありますが、似たような論点もあります。そのため、例えば、民法と商法の2つをマスターするような負担はありません。

学習方法

まず、オススメの書籍等を紹介します。

・小泉直樹『プレップ知的財産法』(弘文堂、第6版、2019)
・小泉直樹『特許法著作権法』(有斐閣、第2版、2021)
・愛知靖之ほか『リーガルクエスト知的財産法』(有斐閣、第2版、2023)
・『特許法判例百選』(有斐閣、第5版、2019)
・『著作権法判例百選』(有斐閣、第6版、2019)
・『論文対策一冊だけで知的財産法』(辰巳法律研究所、改訂版、2022)
・小泉直樹ほか『知的財産法演習ノート』(弘文堂、第5版、2022)
・司法試験論文式試験過去問 知的財産法(2006〜)
・予備試験論文式試験過去問 知的財産法(2022〜)

基本書は非常に分厚く、初学者にはとっつきにくいと思います。そこでまず『プレップ知的財産法』を一読することをおすすめします。同書は特許法と著作権法の両方についてコンパクトにまとめられているため入門編としては良い一冊となっています。

そして、本格的に知財法を勉強するとなった場合は『特許法著作権法』がオススメです。判例を引用しながら基本的知識について大方網羅しているため、基本書はこれ一冊で司法試験を乗り越える人もいるぐらいです。

論証集は『論文対策一冊だけで知的財産法』がオススメです。

また、試験対策には演習がマストですが、中心に据えてほしいのは過去問です。毎年非常に良質な出題がなされており、最良の演習教材です。また、似た論点が出ることもあるので、解くことでアドバンテージになります。法務省のホームページにて問題・出題趣旨・採点実感が公表されていますから、必ず入手して取り組んでください。

いきなり司法試験の過去問を解くのはハードルが高いという方には『知的財産法演習ノート』を解くことがオススメです。

知財法は年々改正されているため、常に最新のものを買う必要があります。ここで示した教材であっても最新のものが第何版であるか調べたうえで購入することを強くオススメします。

最後に、教材ではないのですが知財法では全般として条文が重要です。細かい条文も出題されますから、常に条文を参照することを心がけてください。

おわりに

いかがだったでしょうか?知的財産法がどんな選択科目なのか、どのように学習すればいいのか、視界がクリアになったでしょうか。「もう少し知的財産法がどんな法律なのか知りたい」という方、「自分に合うかまだ不安…」という方は、上記に列挙した書籍を書店等で手にとって眺めてみてください。よりイメージが膨らむはずです。


The Law School Timesは司法試験受験生・合格者が運営するメディアです。「法律家を目指す、すべての人のためのメディア」を目指して、2023年10月にβ版サイトを公開しました。サイトでは、司法試験・予備試験やロースクール、法律家のキャリアに関する記事を掲載しています!noteでは、編集部員が思ったこと、経験したことを発信していく予定です。

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