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【翻訳】ポットの幾何学(ジオメトリー)【セオリー】GTOWブログ.25


ポットの幾何学(ジオメトリー)とは何か?

「ポットの幾何学」とは、各ストリートでポットの同じ割合をベットし、リバーまでにオールインすることを指す。このベット戦略は「ジオメトリック(幾何学的)ベットサイズ」または「ポットの幾何学的成長」(GGOP)とも呼ばれる。

幾何学的にベットすることには、一つの大きな効果がある: この戦略は、相手がポットに入れる金額を最大化する。もしあなたがリバーまでにすべてのチップをポットに入れたいのであれば、幾何学的にベットすることで、相手に理論的には最も広いレンジでのディフェンスを強いることが出来る。

この記事では、ポットジオメトリーの理論、なぜ相手に広いディフェンスを強いるのか、例を挙げて説明し、このベッティング戦略の限界についても議論していく。

敵のディフェンスレンジを最大限に広げる

なぜ幾何学的なベットサイズは相手のコールレンジを最大化するのか?
あなたに2つの目標があるとしよう:

  1. リバーまでにお金を全部入れる。

  2. 相手にできるだけ多くのハンドをコールさせる。

これを達成するためのベッティング戦略は無限にある。大きくベットし、次に小さくベットし、次に大きくベットする。あるいは2回オーバーベットする。あるいはチェック>チェック>オールインでも良い。しかし、ヴィランに最も広くコールさせるのに最も効果的なベット戦略は何か?そう、幾何学的ベットサイズだ!
各ストリートで同じ割合のポットサイズをベットすることで、理論的にはヴィランがコールするレンジを最大化し、ポットへの平均的に投入する額を最大化することができる。
でもなぜだろうか?
最小防御頻度(MDF)を使って、ヴィランのディフェンスレンジを見積もることができる。各ストリートでのMDFを掛け合わせると、最終的なコールレンジが求められる。

ポットは100ドル
スタックは$1300
フロップでアクションは開始する

二つのベッティング戦略を検討する:

戦略A) $1300をオールインする
戦略B) 各ストリートでポットサイズをベットする

戦略A)
ヴィランがコールする確率: 1/(1+13)=レンジの7%。
ヴィランが平均してポットに投入する額: スタック$1300の7%、合計$91。

戦略B)
ヴィランがコールする確率: 50% * 50% * 50% = 相手のレンジの12.5%。
ヴィランが平均してポットに投入する額: スタック$1300の12.5%、合計$162.5。

戦略Bでは、ヴィランは2倍近い金額をポットに投下することになるが、これには早いストリートでコールした金額やショーダウン前にフォールドした金額は含まれていない。それを考慮すると、ヴィランの平均的に投入する額は$237近くになる。

ベッティングストリートがいくつあるのか

ポットは6ドル
スタックは$97

幾何学的なベットサイズは、残りストリート数(ベット数)の関数である。ストリートの数が少ないほど、リバーまでにお金を入れるには大きなサイズが必要になる:

幾何学的なベットサイズを求める一般的な公式は以下の通りである:

実際のゲーム中にこれを計算するのはやりすぎだが。リバーまでのスタックとポットの大きさを考えて、単純にざっくりと幾何学的な大きさを見積もるのがベストだ。

スムーズなベッティング

ベッティング戦略の「スムーズさ」を、各ストリートでのベットサイズ(ポット%単位)の標準偏差として定義してみよう。

ここでは、400通りのベットパターンを持つスプレッドシートを作成した。次に、ベットのスムーズさを、ベット総額に対してグラフにする。下のグラフから、ベット戦略がスムーズであればあるほど、ポットにより多くのお金が入ることがわかる。

縦軸はヴィランがポットに入れる金額を表し、横軸はフロップ/ターン/リバーのベットサイズの標準偏差(広がり)を表す。

ヴィランのコールレンジは、こちらのベットのスムーズさに比例して広くなる。私たちのベッティングパターンが幾何学的なものから外れれば外れるほど、私たちがブラフが利益的になる事を否定するためにコールダウンする必要性は低くなる。

これが、ディープスタックになると、よりタイトなレンジでスタック全てをポットに入れるようになる理由である。ナッツの優位性は、スタックオフの幅が狭くなるほど価値が高まる。

次に、異なるベッティング戦略を、ヴィランがポットに入れる金額に対してグラフにした。フロップ、ターン、リバーのベットサイズが同じ場合、ヴィランが最もポットに資金を投入していることに注目しよう(ポットに占める割合)。

このデータを紐解く

スプレッドシートをここにリンクしたので、遊んでみて欲しい。スタックやポットのサイズを変えて試してみよう。

*訳者注:ジオメトリックサイズ計算機が上のリンク先にあります。ぜひ触ってみましょう。

どのようなシチュエーションでジオメトリックベッティングを行うべきか

GTO戦略は通常、大きなナッツアドバンテージでバリューを最大化したいときに幾何学的なベットサイズを使う。これは自分のレンジがポラライズされていて、相手のレンジがキャップされている場合に最も効果的である。

幾何学的ベット戦略はMDFから派生したものであり、ポラライズド対ブラフキャッチャーのトイゲームにおいて真価を発揮する。しかし、大きなナッツのアドバンテージがあるときは、やはりジオメトリックにベットすべきである。

最も一般的な例はターンプローブベットである。

例1.BB プローブ vs IP SRP

ここでは、フロップがチェックスルーした後のAK22rのBB対BTNプローブ戦略を見る。ポットは5.5BB、スタックは97.5BB、残り2ストリート。ここでのジオメトリックサイズはポットの252%である。見ての通り、ここでのGTO戦略は幾何学的にベットするか、全くベットしないかである。

BBはトリップで、ナッツのアドバンテージがあるので、リバーまでにスタックを入れるためにそのアドバンテージを可能な限り押し付ける。

Example 2: IP C-Bet vs BB

フロップのインポジションでも同様の戦略が見られる。ここではBTNはトップペアのアドバンテージを持っており、3ストリートの幾何学的なベットサイズを使ってそれを押しつける:

非幾何学的戦略

ジオメトリックベッティング戦略の目標と仮定を再検討してみよう

目標
・リバーまでにすべてのお金を入れる。
・相手にできるだけ多くのハンドをコールさせる。

仮定
・相手はMDFに従ってディフェンスする。
・こちらのナッツの手はリバーまでナットのままである(これは隠れた仮定である)。

これらの目標や仮定は必ずしも真実ではない。ジオメトリックベッティング戦略は完全に両極化した状況を想定して設計されているが、実際にはそうなることは稀である。
完全に両極化されたレンジは、(ヴィランのレンジに対して)絶対に勝てるナッツと純粋なブラフのみから構成される。エクイティはスタティックである(何も改善されないし、悪化もしない)。しかし実際のポーカーはドローだらけで、エクイティは静的では無い。ほとんどのハンドはリバーまでに改善したり悪化したりする。
さらに重要なことは、この戦略を実行するのに十分なナッツハンドを持っていることはほとんどないということである。ほとんどの中程度の手札は、その価値をオーバープレイすることなくスタックを稼ぐことはできない。

GTOの戦略は大半の場面で非幾何学的である。GTOがターンの前にジオメトリック戦略を使うことは稀である。エクイティは後のストリートになるにつれ強固になり、レンジはよりポラライズされ、ジオメトリックなベットサイズが奨励される。エクイティがより拮抗しており、より簡単にひっくり返るようなアーリーストリートにおいて、このようなことは殆どない。

結論

幾何学的なベッティングは、リバーまでにすべての資金を入れる一方で、ヴィランが守るべきレンジを最大にするようにデザインされている。
このベッティングパターンはMDFから派生したもので、ポラライズド対ブラフキャッチャーのシナリオには理想的である。しかし、レンジが完全にポラライズドされることはめったにないため、現実の世界では必ずしも理想的とは言えない。
幾何学的なベットサイズは、静的なテクスチャで明確なナッツのアドバンテージを有している時に最も有効である(ナッツのハンドはリバーでもナットのままである可能性が高い)。GTOでは、レンジが明確になった後のストリートでこの戦略がより一般的になる。

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