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【翻訳】エクイティリアライゼーション(エクイティの実現)【セオリー】GTOWブログ.22


エクイティ(EQ)とEV

ポーカーの業界用語である「エクイティ」とは、ショーダウンしたときに相手のハンドやレンジに対して、そのハンドが平均してどれだけポットを獲得できるかを表す。エクイティの魅力は、多くのポーカーの指標とは異なり、シンプルかつ正確に計算できることである。もしこれ以上ベットがなかったら、あなたのハンドがポットのどれくらいの割合を獲得できるかを理解することで、そのハンドがどのような状況でどの程度の価値があるのかを大まかに知ることが出来る。

しかし、「それ以上ベットがなかった場合」というのは、非常に大きな注意点である。ポーカーはベットがすべてだからだ!エフェクティブスタックが多くあり、ベットの機会が多く残っていればいるほど、エクイティはハンドのEV(ベッティングがすべて終わった後に実際に勝てる金額)を正確に表せなくなる。

極端な例として、オールインした場合を考えてみよう。あなたは5枚のカードをすべて見て、ショーダウンすることが保証されており、フォールドしたり、相手にフォールドさせたり、ポットにそれ以上お金を入れる可能性は無い。この場合、それ以上ベットすることはないので、あなたのエクイティはあなたのEVに正確に追従する。

もう一方の極端な例として、ディープスタックのノーリミットホールデムゲームにおけるプリフロップの判断を考えてみよう。スタックに残っている金額はポットのサイズよりもはるかに大きく、ショーダウンまでにあと3回のベッティングストリートがある。その結果、A6oやK2oのような比較的エクイティの高いハンドは、65sのようなエクイティの低いハンドよりもEVが低くなる。65sの方が「プレイアブル」だ、と世間では言う。

もしあなたがEVやEQについての知見が少ない場合以下の記事を先に読むことを推奨する

エクイティリアライゼーション

エクイティリアライゼーション(EQR)は基本的にプレイアビリティを測るものである。EQRは特定の状況において、そのハンドがエクイティに対してどの程度のパフォーマンスを示すかを示す。エクイティリアライゼーションはパーセンテージで表され、EQRが100%より大きいハンドはエクイティがオーバーリアライゼーションする、と表現され、EQRが100%より小さいハンドはアンダーリアライゼーションであると言える。
エクイティリアライゼーションは、エクイティとEVを繋ぐ架け橋となる。ハンドのエクイティにEQRを掛け、ポットの大きさを掛けるとEVになる。

Equity × EQR × pot = EV

エクイティの「オーバーリアライズ」とは

ハンドがエクイティをオーバーリアライズする方法は2つある:

①獲得が期待されるポットにより多くの資金を投入する。
これは通常、バリューベットの形で起こるが、相手のブラフや、より弱いハンドでのミステイクンバリュー(バリューだと思って弱いハンドでベットをすること)をコールした結果としても起こる事がある。
②相手のエクイティのあるハンドをフォールドさせる。
ブラフはこの最たる例であるが、非常に強いハンドであっても、相手がフォールドする事によって、エクイティがオーバーリアライズされる。

簡単な例

あなたはプリフロップでAAを持っており、相手は72oを持っている。ポットには100ドル入っている。あなたのエクイティは88%であり($88とも言える)、もしあなたが$100をオールインして相手がフォールドすれば、あなたは$100のポット全額を獲得することになり、これはあなたのエクイティの114%に相当する。
相手がコールした場合はより状況が良くなる。あなたのエクイティは88%のままであるが、ポットには$300が入っているので、この88%は$264の価値がある。賭けた$100を差し引くと、平均$164のポットを勝ち取る事になり、つまりベットする前のエクイティの186%の価値がある。
いずれにせよ、あなたはエクイティをオーバーリアライズしたことになる。これは、強いハンドの素晴らしい点の一つである。彼らは多くのエクイティを持っているだけでなく、ベットしてポットを大きくしたり、相手にエクイティを放棄させることによって、そのエクイティをオーバーリアライズすることができる。

ブラフ

少し直感に反するが、非常に弱い手もまたエクイティをオーバーリアライズする傾向にある。だからといって「良い」わけではなく、元々のエクイティがほとんどない場合、EQRがそれを上回るにはそれほど時間がかからないことを反映しているだけである。例えば、リバーブラフは均衡状態においてEVが低い傾向がある。経験豊富な対戦相手は、ブラフが非常に有益になるような頻度でフォールドすることはない。しかし、ブラフで使う手は通常、ショーダウンで勝つ可能性がほとんどないため、ブラフによるEVが小さな額だとしても、エクイティが0に近い状態でショウダウンするよりはましである。

エクイティの「アンダーリアライズ」とは

エクイティリアライゼーションが最も低いハンドは、中程度の強さのハンドであり、ショーダウンで勝つ可能性は十分にあるが、バリューベットするほど強くはないハンドである。このことは、エクイティリアライゼーションがプレイアビリティ、つまり将来のベット機会によってハンドがどれだけ得をするか損をするかによって測られるものであることを思い出せば理解出来るだろう。強いハンドはポットを大きくすることで利益を得る。弱いハンドはブラフから利益を得る。ベットによって苦しめられるのは中間に位置するハンドであり、より良いハンドに対してより多くのペイオフをするか、より弱いハンドにフォールドさせられるリスクがあるからである。

これがエクイティがアンダーリアライズする2つのポイントである:

①勝てる見込みのないポットにより多くの資金を投入すること。
たとえポットオッズの観点からコールを正解としても、そうせずにショーダウンに持ち込める方法があるのなら、資金を投入しない方がましである。

②ショーダウンで勝てる可能性がある場合のフォールド
勝つ可能性が高ければ高いハンドであるほど、フォールドさせられることで苦し目られる。リバーでアウツが1つしか無いようなハンドをフォールドしても、元々勝つ見込みは薄かったため、それほど損にはならない。リバーでのブラフに対してベストハンドをフォールドさせられることは、ポットの全てを失う高く付くミスになってしまう!

エクイティリアライゼーションの推定

エクイティリアライゼーションはハンドの絶対的価値を測るものではない。覚えておいてほしいのは、非常に弱いハンドはエクイティがオーバーリアライズされることが多いが、それでもEVは低いということである。しかし、EQRと自分のハンドのざっくりと推定されるエクイティを組み合わせることで、自分のハンドの実際の価値と、そのハンドに投資を続けるべきかどうかについてのより良い感覚を得ることができる。
エクイティリアライゼーションは常に状況に左右される。ポジション、ボードテクスチャー、スタックの大きさ、各プレイヤーのレンジの構成などの要素に依存する。"A9oは悪い手だ "と決めつける事が出来ないのと同じように、"A9oはエクイティリアライゼーションが低い "というような結論をそれ単体で導き出すことはできない。ソルバーが正確なEQRを教えてくれるのは、両プレイヤーが将来のストリートで均衡戦略をとった場合だが、実際のポーカーゲームではそんなことはめったに起こらない。実際のゲーム上では、ハンドの将来のエクイティリアライゼーションを推定することしかできない。いくつかのTipsがある:

①アウトオブポジションでプレイする場合、どのハンドもEQRは低くなる。

②後のストリートでバリューベットやブラフで利益を得ることが予想されるハンドはEQRが高い。これには、すでにベットに向いているハンドと、バリューベットできるほど強いハンドに改善される可能性のあるハンド。あるいはブラフで利益を上げる重要なブロッカーを保持しているハンドのが含まれる。

③逆に、中程度の強さのドローハンドは、中程度の強さの手札と同じように、エクイティリアライゼーションが低くなる。

④EQRは、あなたと対戦相手が後のストリートをいかにうまくプレイするかにかかっている。もしあなたがバリューベットやブラフの機会を逃すと、ソルバーが予測するほどのエクイティは得られない。対戦相手がそのような機会を逃したり、あなたのバリューベットに対してペイオフしすぎたり、あなたのブラフに対してフォールドしすぎたりした場合、あなたはソルバーが予測する以上のエクイティを実現できるかもしれない。

⑤あなたのレンジのほとんどが弱いハンドで構成されている場合、稀に含まれる強いハンドがより多くのエクイティを実現する。同様に、あなたのレンジのほとんどが強い手札で構成されている場合、数少ない弱いハンドはより多くのエクイティを実現する。

⑥強いレンジがより多くのエクイティを実現するのは、より多くのフォールドエクイティを生み出すからである。弱いレンジは、ポットから押し出されることが多いため、エクイティリアライゼーションが低くなる。

アウトオブポジションのときのEQR

以下の画像は、MTTのES50BB、HJvsBBのSRPのフロップJ♥ T♦ 9♥における、BBのレンジ内の各ハンドのエクイティリアライゼーションを示している。これらのハンドのほとんどが、エクイティがアンダーリアライズされている点に注目しよう。そしてEQRが100%を超えているハンドを見て、それぞれの手札がなぜエクイティをオーバーリアライズしているのか、考えてみよう。答えは画像の下にある。

ほとんどの場合、BBのレンジの中で最も強いハンドは、ストレート、セット、ツーペアである。これはボトムツーペアや下のストレートも含まれる。BBのレンジは広く、ほとんどが弱いため、数少ない強いハンドは、たとえそれが文字通りのナッツでなかったとしても、すべてオーバーパフォームする。弱いレンジは相手のアグレッションに晒されると想定されるため、その中の数少ない強いハンドがより多くチップを手にいれる。
ほとんどの♥のフラッシュドローはエクイティをオーバーリアライズするが、最も弱い手はそうではない。3♥ 2♥のエクイティリアライゼーションはわずか87%である。これは、弱いドローはリバーに到達する前にエクイティをベットにより放棄させされる可能性が高く、また、フラッシュをヒットした場合でもより強いフラッシュにぶつかるリスクがあるためである。はっきりさせておくと、3♥ 2♥がフラッシュを作った場合のエクイティリアライゼーションは高い。しかし、その報酬はより良いドローの場合よりも低いので、このハンドがエクイティをアンダーリアライズする他のすべてのシナリオを完全に補うとはいえない。
このボードでは、ストレートドローだけではエクイティをオーバーリアライズすることはできない。4枚ストレートボードになったとき、特にフラッシュも成立する場合,ただのストレートでチップをたくさん獲得する事は難しい。QJが100%以上のEQRを持つのはQ♥を持っているときだけであり、その場合でもかろうじて100%を超える程度である。しかし、QJには66%ものエクイティがあるので、エクイティを下回ると言っても悪い手だとは言えない。

より低いストレートへのドローはもっと悪い。ペアとオープンエンドのドローは通常強力なハンドであるが、98のエクイティは25%以下である。このボードではボトムペアはそれ自体あまり強くなく、4カードストレートの下限にドローすることも特に価値があるわけではない。このハンドはインプライドオッズを活用するのに必要なナッツになる可能性を欠いている。バックドアのフラッシュドローがある場合は大きな助けとなり、EQRを50%近くまで引き上げる。これはフラッシュドローから価値を得る可能性があるだけでなく、9♦ 8♦がセミブラフになったり、別の98のコンボがエクイティを放棄させられるようなシナリオでも♦がターンに落ちる事によって別の価値も生まれるからである。

インポジションのときのEQR

ポジションの利点を持つHJは、BBよりもはるかに効果的にエクイティを実現する。
以下は同じシナリオにおけるHJのレンジにおける各ハンドのパフォーマンスである:

HJのEQRが全体的に高いことに注目しよう。どんな2枚のカードでも、インポジションのプレイヤー(より強いレンジを持ち、フォールドエクイティが大きいという利点もある)のハンドは、アウトオブポジションの相手のハンドよりも良いパフォーマンスを示す。例えば、HJのA♦ 2♦はほぼ100%のエクイティを実現するが、BBのそれは2%以下である。これは、HJのレンジが強いため、非常に弱いハンドでもブラフで利益を上げることができるのに対し、BBはフロップベットに対して同じ手をフォールドしてしまうことがほとんどだからである。

EQRの利用法

エクイティリアライゼーションについての理解をハンドのエクイティの推定と組み合わせることで、ベットを続けて、あなた自身でポットを大きくするかについて、より良い判断を下すことができる。例えば、このJ♥ T♦ 9♥のフロップで33%ポットサイズのCbetに直面した時のBBのフォールドレンジは以下の通りである:

33%のポットベットでは4:1のオッズがつくが、これらのハンドの多くは20%以上のエクイティを放棄する事になる。
なぜだろうか?
エクイティが44%あるにもかかわらず、97oがフォールドするケースもある!バッドペア、バッドストレートへのドロー、そしてエースハイでさえ、もしこのベットがオールインで、エクイティの実現が保証されていればコールする可能性がある。彼らはフロップでそのエクイティを放棄しなければならない。なぜなら、彼らは今後のストリートでまずいプレイをし、ショーダウンの前にエクイティを放棄させられる事が多いからである。

結論

エクイティリアライゼーションは、EQとEVの架け橋となるものである。実際のプレイで意思決定を行う場合、これらの値を正確に知ることはできない。自分のエクイティを見積もり、この記事のガイドラインに基づいて、そのエクイティの実現が過小になるか過大になるかを判断すれば、単にエクイティだけで考えるよりも正確な決断が出来るようになる。また,様々なランアウトに対して自分のハンドがどのようなアクションを取るかを考えることで,前もって計画を立てることもできるようになる.

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