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【翻訳】ショートスタックの戦い方【MTT、ICM】GTOWブログ.90


ショートスタックを上手くプレイすることは、トーナメントに欠かせないスキルである。トーナメントでチップリーダーの一人として勝ち進むことは極めて稀である。実際、ICMの利点からしばしば推奨されるように、トーナメントにレイトレジストした場合、ショートスタックでスタートすることになる。あなたがどんなに良いプレイをしても、トーナメントでどんなに良い成績を残していても、大部分をショートスタックとしてICMプレッシャーに晒されながらトーナメントを戦うことになるだろう。


ポーカートーナメントでは、あなたのチップの最後の1枚が最も貴重であるため、イライラしたり自暴自棄になったりする余裕はない。デッキが悪かったり、バッドビート、あるいはあなた自身のミスなど、さまざまな悪い事が原因でショートスタックになるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。それはもう過去のことである。今は現在の決断を最善にする必要がある。残り少ないチップを最も収益性の高い方法で投資し、適切なリスクを取ってITMの可能性を最大限に高め、そしてスタックを積み上げるのだ。




ショートスタックの利点


最初の朗報は、あなたのチップは対戦相手より価値があるということだ。これはあなたのスタック全体が対戦相手のものよりも価値があるという意味ではなく、あなたの一枚一枚のチップが対戦相手の一枚一枚のチップよりも価値が高いということである。

これはトーナメントのペイアウト構造によるものである。どんなに少ないチップを持っていても賞金を獲得することは出来るが、すべてのチップを持っていてもすべての賞金を獲得することは出来ない。

チップを1枚でも持っている限り、あなたは競争に参加できるのだ。スタックに加えるチップの一枚一枚は、最初に持っていたチップよりも価値が低くなる。残っているフィールドの半分が賞金を獲得出来そうな場合(最初のプレイヤーの25%ほどがまだトーナメントに残っている場合)、ショートスタックであっても、最低限の賞金を獲得できる可能性は十分にある。多くの場合、これはエントリーフィーの二倍程度の価値があり、あなたの戦略の多くはこの短期的な目標を中心に展開するべきである。この点については後ほど詳しく説明する。

二つ目の朗報は、ショートスタックの場合、チップをうまく投資する機会を見つけやすいということだ。ブラインドとアンティは、残り少ないチップを危険に晒す際、比較的小さなリスクで大きな報酬を保証してくれる。一番良いニュースは、ショートスタックはポーカーで最も強力なプレイを可能にし、あなた自身はエクイティの完全な実現を保証し、あなたの後ろに控えているビッグスタックのプレイヤーを利用して、通常であればあなたのオールインにコールするのに十分な強さのハンドをフォールドさせることができる点である。


このような機会があるのだから、ショートスタックで絶望する必要はない。もっと良い機会が来ることを期待して、わずかな利益しか得られないチャンスを見送ることさえ考えるべきだ。あなたがフォールドすればするほど、あなたのスタックは少なくなり、後々に有益な機会を見つけるのがさらに簡単になる。

この記事の残りは、このような機会を見極め、活用する方法に焦点を当てる。


オープン戦略


10bbのスタックに対する標準的なアドバイスは、特にレイトポジションから、オールインorフォールドの戦略でプレイすることである。対称的なスタックのChipEVモデルを使うと、これはほぼ正しいように見える。全プレイヤーのスタックが10bbの場合のBTNのオープン戦略である:

また、以下がフィールドの25%が残っている ICMシナリオでの BTNのオープン戦略である。このシナリオではBTNは10bb、SBは21bb、BBは53bbを持っている:

ICMのプレッシャーがあるにもかかわらず、BTNのVPIPは両モデルともほぼ同じである。むしろICMモデルの60.6%に対してChipEVモデルの60.1%と、ICMモデルの方がわずかに高い。しかし、オールインは少ない。ChipEVモデルは33.9%のハンドをオールインし、5.5%をミニレイズしているのに対し、ICMモデルは30.2%をオールインし、9.7%をミニレイズしている。

大きな違いではないが、これはいくつかの重要な戦略原則を反映している:

  1. ICMは生き残りを重視する。チップの最後の1枚は特に価値が高いので、チップEVモデルがほとんどオールインするJ7s、Q6s、Q9oのようなハンドでは、ミニレイズしてリレイズに対してフォールドする余地がある。

  2. ミニレイズしてフォールドする余地があることで、99やAQsのような強いハンドでミニレイズして、ドミネイトしているハンドからのオールインを誘発することで、少しでも多くの価値を引き出すことができる。

  3. BBのスタックが多いほどSBにプレッシャーをかけることができる。もしSBが10bbしか持っていなければ、あなたのミニレイズにもっと簡単にオールインをかけることができる。しかし、21bbあれば、BBがモンスターハンドを持っていたとき、SBはより多くのものを失うリスクがある。もし彼らがコールするか、小さく3ベットすれば、オールインに対してフォールドするハンドでより多くのエクイティを実現できるようになるし、依然としてBBからのオールインのリスクがあり、エクイティを失う可能性もある

13bbのBTNで同様の実験を行ったところ、これらの結果が裏付けられた。対称スタックのChipEVモデルはハンドの13.1%をミニレイズし、25%をオールインした:

いくつかのサイズのスタックがいる残り25%フィールドのICMモデルは18.4%のミニレイズと20.6%のオールインを行う:

この推移の性質は同じである:ChipEVのオールインレンジで最も弱いハンドは、ICMのプレッシャー下でミニレイズしてオールインにフォールドとした方がEVが高くなる。さらにいくつかの強いハンドがオールインを誘うためにミニレイズに使われる。

BTNがやや多くのチップを持っていることで、新しい現象も現れる。BTNは現在、77、88、AJo、AQo、ATs、AJsなど、ブラインドの1人に対してオールインするつもりでレイズするが、SBが3ベットしてBBがオールインをするとこれらのハンドはフォールドする。ICMのプレッシャーに晒されているとき、このようなリスクを回避しチップを温存する機会を追加出来る事は非常に有意義である。

アーリーポジションでは、ICMモデルは、後ろに複数のプレイヤーが絡んできた場合に、強いハンドから逃げる機会をさらに重視する。均等なスタックのChipEVモデルは10bbを持つUTGで11.4%のオールインと4.2%のレイズを行っている。一方、混合スタックで25%フィールドのICMモデルは8%のオールインと7.1%のミニレイズを行っている。

当然のことながら、多くのプレイヤーはチップの20%をポットにコミットした後にフォールドすることを嫌うが、これはコストではなく、チャンスだと考えることが重要だ。失ったスタックの20%を嘆くのは構わないが、まだ持っている80%にも感謝すべきだ。そのチップを持っている限り、キャッシュイン、あるいは優勝のチャンスはあるからである。


レイズに対するブラインドの戦い方


ChipEVモデルは特にショートスタックの時にブラインドから多くコールする。チップが少なければ少ないほど、フロップ後のエクイティが実現しやすくなり、アンティやプリフロップの小さなレイズによって提供されるオッズを利用することがより魅力的になる。
以下は11bbのSBがCOから2.1bbのレイズに直面した場合の混合スタックのChipEVモデルである:

このようなポットオッズコールの特徴は、勝つことよりも失うことの方が大きいが、フロップを見るためのコストはポットに入っている金額に比べてそれほど高くないので、それでも構わないということだ。
ICMは勝つ確率が少ないプレイを推奨しない。獲得したチップの価値は失ったチップの価値よりも低いため、少額のチップをコンスタントに失い、時折多額のチップを獲得することは、あまり良いトレードオフとは言えない。ICMのプレッシャーのもとでは、ポットを争うのであれば頻繁に勝つ事が重要であり、そのための最善の方法はオールインをすることである。だから、同じようなスタックでフィールドの25%が残っているICMモデルでは、SBからコールすることはほとんど無い。

ここでは代替効果もあまりない。ICMモデルは同じハンドをすべてオールインし、ChipEVモデルではポットオッズコールだったより投機的なハンドをフォールドするだけである。ICMモデルであってもBBからポットオッズを無視するという選択肢はあり得ない。しかし、25%フィールドのICMモデルはChipEVモデルよりもコールを減らし、弱いオフスーツハンドの一部をフォールドし、ChipEV戦略では「トラップ」としてコールする強いハンドの一部でオールインすることを好む。

以下は、14bbのスタックがあるBBのCOレイズに対するChipEVでの反応である:

そして、これがICMの戦略だ:

追加のフォールドは、小さなオフスーツのQxとJxのハンドである。ChipEVの戦略では、COのレンジにBBがドミネイトしているハンドを残すために、多くのAxやブロードウェイスーテッドのハンドでコールするのに対し、ICMはフロップ後に大きく勝つ可能性を犠牲にしてでも、すぐにポットを奪うためにオールインすることを好む。これは古典的なICMのロジックである。


BTNでレイズに直面した場合


BTNで15bbの混合スタックのChipEV戦略では、アーリーポジションのオープンに対してレンジのかなりの割合でコールをする: 6.6%であり、レイズに対してオールインをするハンドの8.5%とあまり変わらない:

フィールドの25%が残っている場合のICMモデルでは、オールインの頻度は同じだが、コールはほとんどしない。しかし、BBの戦略とは異なり、オールインするハンドはChipEVモデルと同じではない。コールを除外すると、オールインレンジはリニアになり、ChipEVモデルでコールされるスーテッドブロードウェイハンドが全て組み込まれる:

コールする方が安全な選択肢のように思えるのにこれは直感に反するかもしれない。フロップが不利な場合、最後のチップを投入せずに逃げることができるのに、なぜコールはミニレイズのように機能しないのだろうか。

問題は、コールしてもすぐにポットを獲得するチャンスがないことである。そのため、オールインすれば勝てたはずのポットを、相手にフォールドさせられたり、5枚のカードが配られたショーダウンで勝てたはずのポットを失うことになる。

前回の実験でがBBからコールするときと同様、ChipEVモデルにおけるコールは、安全なプレイではなく、トラップを目的としている。トラップとは、オールインによる確実な利益を放棄し、オリジナルレイザーのレンジにこちらにドミネイトされたハンドを残すことでより大きな利益を得ようとするリスキーなプレイである。

ICMのプレッシャーのもとでは、相手(そう、複数だ-BTNでのコールはBBからのオーバーコールを招きやすい)にフロップで改善されたり、Cbetであなたのエクイティを奪われたりするリスクを負うよりも、オールインしてエクイティを確保する方が、より安定して小さなポットを獲得できる。


極端なショートスタックのとき


ChipEVのモデルが中程度のICMプレッシャー、例えばフィールドの残り25%のモデルとあまり変わらないのは、スタックが極端に少ない時である。4bbでは、どちらのモデルもオールインかフォールドしかしない。ChipEVモデルはUTGのハンドの30.3%をオールインし、25%フィールドICMモデルは28.2%をオールインする。

これだけスタックが少ないと、ICMのプレッシャーはあまりない。待っている時間も無く、フォールドしていても賞金圏内には入れないので、チップを貯めるチャンスを逃さずに取りに行く必要がある。運良くダブルアップ(ブラインドとアンティを考慮すると、実際はトリプルアップに近い)した場合は、その時点ではより保守的にプレイし、賞金圏に入るまで生き残ることにプレッシャーが強くなる。


まとめ


ショートスタックはトーナメントにおいて強力なツールである。バブルが近づくにつれ、フォールドすることではミニキャッシュを保証することはできないが、なんとか生き残ればミニキャッシュを確保できる可能性は十分にある、という難しい状況に陥ることがよくある。このためには計算されたリスクを取ることが必要で、期待値がプラスであってもチップを失う可能性が高い場面を避け、ポットを争う際には積極的にプレイしてポットを勝ち取る最良のチャンスを自分に与えることが重要である。

ショートスタックを活かして相手の意表をつき、厳しい状況に追い込むことを学ぶことが、ショートスタックを上手にプレイする鍵である。ショートスタックになることは決して目標ではないが、ほとんどのトーナメントで起こることなので、限られた選択肢を最大限に活用することを学ばなければならない。



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