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【翻訳】スタックサイズはあなたのレンジをどう変化させるか【MTT、セオリー】GTOWブログ.96


このシリーズでは、同一のシナリオであってもレンジに影響を与える要因を見てきた。レーキが増えると、一般的にレンジは狭くなるが、よりアグレッシブにプレイされる。また、アンティが増えると、レンジは広がる。レンジに影響を与えるもう一つの要因、スタックの深さについて見てみよう。

私たちはこれをすでにICMの観点から見てきた。MTTの特定のテーブルのメガスタックやマイクロスタックは、同じテーブルのプレイヤーの戦略を変える可能性がある。しかし理論的には、同じトーナメント内の別のテーブルのプレイヤーの戦略も変える可能性がある。この記事では、一般的なChipEVシナリオにおいて、スタックの深さがGTO Wizardソリューションの戦略をどのように変えるかを探る。





同じポジションでスタックサイズが違う場合


GTO Wizardで同じポジションのプリフロップのスポットを、毎回有効なスタックサイズを変えて見ていこう。それぞれのレンジの違いから、スタックの深さが最適な戦略をどのように変化させるかを教えてくれるはずだ。

始めに、これはMTTでの有効スタック100bb UTGのオープニングレンジである。

UTGはタイトでリニアなレンジを持ち、ボードカバレッジのためのハンドがいくつか含まれ、ローボードはエースとスモールペアがカバーする。このレンジは、時折プレイされるスーテッドコネクターによって、ミドルボードとも多少の相互作用がある。そして、リニアであるためハイカードが多く、ハイボードで最も多くの相互作用が起こる。

MTTにおけるUTG 50bbのオープニングレンジと比較してみよう:

まず注目すべきは、ハンド全体の割合が16.5%から17.7%に増えていることだ。これは、スタックが深いほどレンジが広くなると思っている人を驚かせるかもしれないが、それは誤解である。レンジが広くなった理由は、レンジの形がどのように変わったかを見れば説明できる。

50bbになると、A3s、ATo、K8s、KJo、QJoのようなハンドのオープンレイズの頻度が増える。KTo、K7s、K6sのような新しいハンドもレンジに加わっている。全体的な頻度を比較的安定させるためには、65sや76sのように完全にレンジから除外されるか、44、33、22のようにプレイされる回数が減ることになる。これらのハンドに共通しているのは、ランクの低いカードが含まれていることである。

その理由は、エクイティ実現率(EQR)である: スタック深度が浅いほうが深いときよりもエクイティ実現率が高い手もあれば、その逆もある。

22のようなハンドは100bbでより価値がある。セットを作れば大きなポットを獲得できる。しかし、50bbではセットマイニングの利益は減少する。インプライドオッズが下がるだけでなく、セットマインに失敗したときには大部分をフォールドしなければならないことが多いからだ。

しかし、多くのハンドは50bbの方が価値がある。ATo、K8s、QJoのようなハンドがこの深さでプレイしやすくなる理由は、SPRが下がるからである。SPRが低ければ低いほど、イーブンにするために必要なエクイティも低くなる。ATo,K8s,QJoのようなハンドでトップペアを作ったときにスタックを全てポットに投入するのは、この程度のスタック深度では問題ないことが多いが、100bbでは通常災害的な結果になる。

30bbでも同じ傾向が見られる:

プレイするハンドの割合がさらに増え、ハイカードのハンドの価値が上がり、スモールペアの価値が下がるという同じ傾向が見られる。今は33や22をプレイすることは無い。新しいハンドが増えたわけでは無いが、境界にあるハンドのプレイ頻度は上がっている。

また、プリフロップのベットサイズが2.3bbから2.1bbに下がっていることに気づいたかもしれない。これは主に、スタックの深さが深い場合、リバーでオールインできるほどポットを大きくするのが難しいため、プリフロップとポストフロップのベットサイズが浅いスタックの場合よりも大きくなることが多いからである。その証拠に、フロップのアクションだけで十分な事も多いので、プリフロップのベットサイズはそれほど大きくする必要はない。

これは20bbでのUTGレンジである:

ここで転換点に到達し、レンジが再びタイトになり始めた。現在最も弱いポケットペアは66で、A3sやK7sのような低いキッカーのスーテッドハイカードが減り始めている。その代わり、レンジにはA9oが入った。

ここで注目すべきは、ボードカバレッジの重要性が低くなっていることだ。フロップに3や2が入っていても、ボードをカバー出来なくなっている。その理由は、SPRが非常に低くなっているため、トップペアやセカンドペアの手札があれば、それでスタックを全て投入出来てしまうからである。もう一つの小さな理由は、ゲームがポストフロップからプリフロップに移行し、戦略がプリフロップでのオールイン偏重になったことだ。したがって、ボードカバレッジのようなポストフロップのコンセプトはあまり重要ではなくなる。

ハンドに勝つことがより重要になるため、全体的にレンジがタイトになる。プリフロップで3betされたり、フロップ後にハンドをフォールドさせられたりすることは避けたい。なぜなら、スタックの大部分を犠牲にすることになるからだ。私たちのレンジはより強くなり、良いワンペアハンドになるだけでなく、コールや3betしてくるハンドの多くをブロックすることができるAxタイプのハンドに偏っている。
ベットサイズは再び小さくなり、今回はミニマムベットになっている(ソルバーがもっと小さくベットできるならそうするだろう)。なぜなら、必要ならこれらのスタックをポットに入れ切る事が簡単だからだ。

これが17bbのレンジである:

これまでで最もタイトなレンジであり、ハイカードに偏る傾向が続いている。

14bbになるとさらに興味深くなる。これが14bbのUTGオープニングレンジだ。

ここで解明すべきことはたくさんあるが、まず気づくべきことは、私たちのレンジがわずかに広がったということだ。17bbの例では15.8%であったのに対し、現在では16%のハンドをプレイしている。

  1. オープンオールインが有効な選択肢になっている。私たちのオールインレンジは、中程度のポケットペア、強いオフスーツのAx、強いスーテッドブロードウェイで構成されている。これらはすべてコールされたときにも良いパフォーマンスを発揮するハンドであるが、プリフロップでポットを取り切ったとしても良い結果である。

  2. ミニレイズレンジは7.5%で行われる。ほとんどのハンドでこのようなミニオープンする頻度があるが、最も強いハンドは最も頻繁にオープンをする。これは主に「インデュース」レンジと呼ばれるもので、つまり(コールやリレイズという形で)より多くのアクションを誘いたいハンドである。

  3. 本当に興味深いのは、リンプレンジが開発されたことだ。私たちは4.6%のハンドをリンプしているが、これは今までのレンジではありえなかったことだ。ほとんどのハンドが時折リンプする。AAやKKのような最も強いハンドをトラップとしてリンプし、リンプのレンジを保護する。

リンプすることで、より広いレンジでプレイすることができる。もしソルバーにレイズだけの戦略を採用させた場合、全体的なレンジはタイトになるだろう。A4sや55は時々リンプされ、66はいくつかのリンプと共に常にプレイされる。リンプを採用しない時代の17bbのレンジではA4sと55はレンジになく、66は時々しかプレイされなかった。

スタック深度(ChipEV)が浅い時にリンプが選択肢になるもう一つの理由は、リンプをすることで相手が3betする利益が少なくなるからである。あなたが20bbのスタックで2bbにオープンし、相手がオールインをした場合、相手は争うことなく最大4.5bbを獲得できる可能性がある。これは20bbのスタックに対して22.5%のスタック増加となる。リンプすることで、これを最大3.5bb、つまり有効スタックの17.5%に減らすことができる。有効スタックが20bb程度になると、3betオールインが非常に有益になる。またリンパーにとっても、リンプレンジがある程度ポラライズされているので、リンプしやすくなる。もしオールインされたらスナップコールするかスナップフォールドのどちらかになるからだ。

UTGが8bbになると戦略は大きく変わる:

この傾向は有効スタックが5bbまで続いていく:

オールインレンジの形状はハンドそのもののエクイティに基づくためスモールポケットペアがレンジに戻り、スーテッドKxがレンジから減る。

今、私たちのハンドが行うアクションは、オールインかフォールドだけだ。ミニオープンして、3betにフォールドして、スタックの25%を失いたくない。オールインは、コールされて勝ったときに最大限の利益を得ることが出来、プリフロップでポットを取る可能性も高まる。プリフロップで全員をフォールドさせるたびに31.25%(1.5ブラインドと1bbアンティ)をスタックに加えられるので非常に大きな利益と言える。これが私たちのレンジが広がった理由である。先ほどの例では16%であったが、今は20%のハンドをプレイしている。

5bbになるとプリフロップでハンドをフォールドさせるとスタックが50%も増えるため、ハンドのほぼ25%をプレイする。

最後は2bbの時だ

今、私たちはほぼ36.5%のハンドをプレイしている。プリフロップでポットを取ることができれば、私たちにとっては素晴らしい結果だが、それは決して起こってはならないことだ。何故ならこのレンジがこれほど広いレンジでオールイン出来るのは、テーブルの他のプレイヤーが広くコールするインセンティブがあるからである。例えばBBは100%のハンドでコールするだろう。従って、上位36.5%のハンドは100%のコールレンジに対して利益を得ることができる。


まとめ


今日見てきたように、スタックの深さが戦略に与える影響は直線的なものではないことがわかった。スタックが浅くなればレンジを広げることもあれば、レンジを狭めることもある。

以下がGTOウィザードで利用可能な100bbから2bbの間の21のスタックの深さに基づいて、UTGがプレイするハンドの割合をグラフ化したものだ。全体的な傾向として、レンジは広くなっているが、約35bbから8bbの間で、レンジが狭くなる2つの区間があることがわかる。

35bbあたりからレンジがタイトになるのは驚くことではないかもしれない。この深さはMTTでプレイするには厄介なスタック深度であることで有名だ。様々な選択肢を試すにはスタックが足りないが、オールインorフォールドで決断を簡単にするには深すぎる。

スタックが浅くなるにつれ、SPRとポットオッズがアクションを左右する。堅実なワンペアタイプのハンドは、オールインを正当化しやすく、どのような形でポットを獲得してもスタックに占める割合が相対的に大きくなる。そのため、ほとんどの場合、より多くのハンドをプレイすることができる。

スタックの深さによって、どのハンドがより利益を生むかを把握することが重要である。スモールペアでのセットマイニングは、スタックを全てポットに入れる為により強いハンドが必要になる有効スタック100bbの時により収益性が高くなる一方で、トップペアタイプのハンドは収益性が低くなる。トップペアがスタックの全てを賭けるのに十分な強さになる中程度のスタック深度では、スーテッドハイカードのハンドがより利益を生むが、スモールポケットペアはミスした場合の大部分をフォールドしなければならないため、利益が少なくなる。ボードカバレッジはスタックが浅くなるほど重要ではなくなり、特にプリフロップでの戦いが主体になると、ハンドそのもののエクイティがより重要になる。

最後に、ベットサイズに関しては、スタックサイズによって大きく左右される。スタックが深いときは大きめにオープンする。バックスタックが大きく、ハンドの終わりにチップ全てをポットに入れる場合の助けが必要だからである。ベットサイズはスタックが浅くなるほど小さくなる。なぜなら、スタックが浅いとリバーまでにオールインするのも容易い。スタックが非常に浅くなると、リンプとオールインが選択肢に加わる。リンプするのはより多くのハンドをプレイするためであり、オールインするのはプリフロップでポットを獲得することで、比較的大きな割合のスタックを増やすことができるからである。



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