![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141472799/rectangle_large_type_2_0706fa721180c476bdf195376b392106.png?width=1200)
【翻訳】トーナメントで順位を上げるプレイをするタイミング〜メガスタックやマイクロスタックがICM戦略をどう歪めるか〜【MTT、ICM、セオリー】GTOWブログ.89
前回2つの記事で、フィールドサイズとペイアウト構造がICMに与える影響について書いた。
今回は終盤のスポットでの戦略を大きく変える、自分のコントロールの及ばないもう一つの要素について書いていこう。その要素とはトーナメントに参加している他のプレイヤーのスタックサイズである。ここで言うスタックサイズとは、目の前のポットに参加している相手の有効スタックサイズではなく、そのハンドに参加していないプレイヤーのスタックサイズが与える影響である。それはまた、そのプレイヤーが別のテーブルにいる時でも同様の影響があることもある。
特に、ICMが大きく、小規模なフィールドなトーナメントでは、マイクロスタックやメガスタックの存在は、あなたの戦略に劇的な影響を与える可能性がある。
スタックがカバーされている状態には、単にカバーされている場合と、完全にカバーされている場合がある。
GTO Wizardでこれを強調する例を見てみよう。
この例では、平均スタックが40bbで、バブルに近い状況である。
![](https://assets.st-note.com/img/1718512319326-wGIryAZr9f.png?width=1200)
スタックの大きさが互いに近い例を選んだ。これはCOのRFIレンジである。BBがわずか数bb差で我々をカバーしていることに注意。
![](https://assets.st-note.com/img/1718512578013-NXAL9nLYVm.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1718512599758-XczOB4K0NL.png?width=1200)
では、よく似た場所を見てみよう。これもバブルの近くで平均40bbだが、スタックはもう少し広く分散している:
![](https://assets.st-note.com/img/1718512640225-O8XNhrUSnS.png?width=1200)
この例ではCOはほとんど同じスタックを持っており、再びBBにカバーされている。しかし、BBのスタックは52bbではなく、今回は100bbである。COは最初の例と同じように次にアクションする2人のプレイヤーをカバーしている。これがCOのオープンレンジである:
![](https://assets.st-note.com/img/1718512817547-v5UGje3cQL.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1718512836910-cWs6ZivO28.png?width=1200)
よりタイトになった。表面上は何もかも同じだ。COはBTNとSBをカバーするが、BBにカバーされている。つまり、オールインでBBに負けるとCOはトーナメントから脱落する。
一歩戻って考えてみよう。どちらの例でも、LJは30bbほど持っている。LJがオープンすると(どちらの例でも同じようなレンジだ)、COは最初の例の状況では以下のように対応する:
![](https://assets.st-note.com/img/1718516079005-AnT0lw6vUn.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1718516089557-xx5WcRW04B.png?width=1200)
しかし、BBがメガスタックを持っている場合、COはこのように対応する:
![](https://assets.st-note.com/img/1718516145306-wY8jgv7WJh.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1718516168000-rRzSDgnleS.png?width=1200)
BBのスタックが大きい場合、COはより慎重にプレイする。プレーするハンドは少なくなり、フラットコールの回数も減る。その理由を知るために、COがコールしたときのBBの反応を見てみよう。まず、BBが52bbを持っている場合:
![](https://assets.st-note.com/img/1718521787410-sFudle4k0T.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1718521808585-U3plGc8N95.png?width=1200)
そして以下がBBが100bbを持っているときである:
![](https://assets.st-note.com/img/1718523239867-xyBnPJk2pJ.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1718523265654-IHfq02zcjX.png?width=1200)
BBは巨大なスタックを持っている時はより多くのハンドをプレイし、またかなり多くのスクイズも行う。そのため、COはプレイするときにはフラットコールをあまりせずにBBがポットに参加することを出来るだけ避けようとする。どちらの例でも、30bbのLJ、50bbのCO、そしてその両方をカバーするBBがバブルの状況にいる。表面上は同じ状況のように見えるが、なぜこれほど戦略が違うのだろうか?
おそらく予想出来るように、チップリードが大きければ大きいほど、プレイヤーがかけられるICMプレッシャーが大きくなるのである。
BBのスタックが52bbの例では、オールインで負けた場合、BBはCOと同じほどのダメージを受けるので、慎重にプレイしなければならない。しかし、メガスタックを持っている場合、オールインで負けてもまだテーブルの大半をカバーできるため、チップをより「軽率に」使うことが出来る(ICMの原則の一つは、チップが多いほど、一枚あたりの価値が低くなるということを覚えておこう)。
また、あるプレイヤーが巨大なスタックを持っている場合のもう一つのICMの影響は、他のプレイヤーがトーナメントで優勝する可能性が低くなることである。従って、順位を上げる事とバブルを回避することがより重要になる。これは敗北主義的に聞こえるかもしれないが、ビッグスタックに挑むことはしばしばICM上の自殺行為となる。むしろ、大スタックが他のプレイヤーを次々とバストしてくれるのを見守り、自分の順位を上げていく方が賢明と言える。
最後に、あなたは気づかなかったかもしれないが、どちらの例も平均スタックは40bbであったが、2番目の例ではショートスタックも多かった。
メガスタックの存在は、私たちをよりタイトにプレーさせるだけでなく、ショートスタックの存在も(彼らが自分より先にバストする可能性が高いため)、逆説的に私たちをよりタイトにプレーさせる。
メガスタックの影響
テーブルのメガスタックの影響を強調するために、トイゲームの例を見てみよう。これは$50/$30/$20ペイアウトの9人SNGのバブルの状況である。スタックは以下の通りである:
![](https://assets.st-note.com/img/1718524648642-6zGH6g9CB8.png?width=1200)
オールインかフォールドしか許されないこのトイゲームでは、COがオープンオールインする場合のGTOレンジと、他のプレイヤーのコールレンジが示されている:
![](https://assets.st-note.com/img/1718527305232-rdA1DWgQ7H.png?width=1200)
COは全員をカバーしているため、このバブルの状況で非常に広いレンジでオールインをする。BTNとBBは入賞がほぼ確実なので、コールレンジは非常に狭くなる。両者ともJJ+でしかコールできず、AKはここではフォールドである(簡単な注意点:JJのようなミディアムからハイのポケットペアは、強いAxハンドよりも広いレンジに対して勝率が高い)。SBがかなりワイドにオールインする事ができるのは、自分が動かなければほぼ確実にバストするからであり、最もワイドなレンジを持つチップリーダーに挑むことがダブルアップの最善の選択だからである。
これはバブルファクターに表れている。BBはCOに対して最も高いバブルファクターを持っている。失うものが非常に大きいからである。しかし、SBのバブルファクターは1.13と非常に低い。
![](https://assets.st-note.com/img/1718528291207-xaoalHo9sd.png?width=1200)
全ての要素は同じにしておくが、今回はCOに40bbではなく400bbを与えることにしよう。他は何も変わっていない。同じプレイヤーが同様にカバーしているが、一人のプレイヤーが大きくリードしている。これが新しいレンジである:
![](https://assets.st-note.com/img/1718532696999-9UUMNJ8hm4.png?width=1200)
まず注目すべきは、COがオールインのレンジをほぼ倍増させたことだ。以前からレンジは広かったが、今ではどの2枚でも利益を得られるようになった。このプレイヤーにはバブルのリスクはなく、たとえフリップで何枚か連続して負けたとしても、自由にオールインする事が出来る。
BTNとBBのコールレンジはさらにタイトになり、BBがコールするには少なくともKKが必要である。後ほど説明するが、チップリーダーのリードが大きい場合、バブルでバストする事はBBとBTNにとってより悪い結果になる。
しかし、SBはもう少し広いレンジでオールインが出来る。彼らは依然として動きを見せる必要がある位置にあるが、COのオールインレンジが非常に広いため、SBにはより多くの利益を得るチャンスがある。COがオールインできるハンドがほぼ2倍になっているのに対し、SBのコールレンジは16%しか増えていない点に注目して欲しい。
これが新しいバブルファクターである:
![](https://assets.st-note.com/img/1718529868818-js995dwWSb.png?width=1200)
注目すべき2つの点は、まずCOのバブルファクターが全員に対して実質的に1であること、つまりICMのプレッシャーがまったくないことだ。しかし、BBはCOに対してのバブルファクターがほぼ2倍になっている。
フィニッシュ時の分布
チップリーダーが大きくリードしていると、バブル時にバストする事は小さなリードをしている場合に比べて、なぜはるかに大きな災難になるのだろうか?なぜ彼らに対してそれほどタイトにプレーしなければならないのか?その答えは、(ICMによる)フィニッシュ分布を見ればわかる。
ICMの計算とは、基本的に、残りのすべてのプレーヤーがすべての順位でフィニッシュする確率の内訳である。
以下が、COが40bbを持っていたときの最初の例のフィニッシュ分布である:
![](https://assets.st-note.com/img/1718530621409-xF6qsOJWr7.png?width=1200)
ご覧の通り、各プレイヤーがトーナメントに優勝する確率は、プレイ中のチップの総数に対する割合である。COはプレイ中のチップの40%を持っているので、優勝する確率は40%だ。SBはプレイ中のチップの10%を持っているので、優勝する確率は10%である。
その後はもっと複雑になる。SBはこのトーナメントで55.1%の確率でバブルになる。これがBBのプレイヤーがバストを避けたがる原因である。BBは87%の確率で賞金を獲得する。これはすべて、すべてのプレイヤーが同等なスキルを持つと仮定した場合の話である。
COが400BBを持っている場合のフィニッシュ分布と比較してみよう:
![](https://assets.st-note.com/img/1718532148572-Ffuieo6EaD.png?width=1200)
COは87%の確率でトーナメントを制し、ファイナルテーブルのディールで1位以上の条件を確保することも出来るだろう。実際、バブルになる可能性は0%である。BBを見てみよう。最初の例では、彼らは30%の確率でトーナメントで優勝し、13%の確率でバブルになった。今は6.5%の確率でしか優勝出来ず、15%の確率でバブルになる。
これが戦略が大きく変化する理由である。メガスタックの存在は、他のプレイヤーがトーナメントで優勝する確率を劇的に下げる。そのため、他のプレーヤーにとって最も利益の出る戦略は、2位を目指してプレーすることだ。それはしばしば、非常にタイトなプレーをすることであり、他のプレーヤーが先に手を打たなければならないので、バストすることを望みながら、ブラインドアウトさえすることである。
ICMは、トーナメントで最も多く優勝するための決定ではなく、最も利益を生む決断を導くものだということを思い出してほしい。
チップのハンディキャップがある場合、私たちができる最も有益なことは2位でプレーすることである。
マイクロスタックの影響
メガスタックが私たちの決断に何をもたらすかを見てきた。その逆はどうだろうか?
この例では、COのスタックは40bbだが、SBには2bbしかない。これが新しいレンジである:
![](https://assets.st-note.com/img/1718532591066-rFtVNkQjcS.png?width=1200)
今回のCOはかなりタイトにプレイしている。これは、コールされてBTNやBBに負けたらICM上最悪だからということもあるが、SBが広くコールせざるを得ないからというのが大きい。彼らは2枚のほぼどんなカードでもコールすることができる。
しかし、BTNやBBはさらにタイトなプレイを強いられている。今、彼らがコールできる唯一のハンドはAAであり、KKですらフォールドしなければならない!
以下にバブルファクターを示そう:
![](https://assets.st-note.com/img/1718533162528-5JlUhyWWMe.png?width=1200)
チップリーダーが巨大なスタックを持っている場合、ミドルスタックはよりタイトにプレーしなければならない。ショートスタックがマイクロスタックの場合、中位のプレイヤーはやはりタイトにプレーしなければならない。マイクロスタックやメガスタックがミドルスタックの戦略に同じ影響を与えるのはなぜだろうか?
もう一度、フィニッシュ分布を見てみよう:
![](https://assets.st-note.com/img/1718534195836-UoJSHaDbVU.png?width=1200)
この例では、BBはトーナメント全体を勝ち抜く可能性が十分にあるため、優勝を狙ってプレーするのが良い戦略だと考えられる。各プレイヤーがバブルする確率を見てみよう。SBは87.6%の確率でバブルし、BBは3.5%の確率でバブルする。BBは優勝する確率も高いが、それ以上に重要なのは、96.5%の確率で賞金を獲得する事が出来るということだ。それを捨ててしまうのは大失敗だ。劣ったハンド(この状況ではKKを含む)でCOに立ち向かうと、文字通りSBにエクイティを渡すことになる。
400bbの例では、トーナメントで勝つ可能性は非常に低く、BBとしてできる最も有益なことは2位狙いでプレーすることである。この例では、バブルになる可能性は非常に低いので、BBは何としても避けるべきである。ここでの正しい戦略は、タイトにプレーし、ミニキャッシュを確保した後に勝利を目指すことである。
興味深いことに、SBがオールインをコールした場合、BBのコールレンジは広くなる。彼らはこのレンジでコールできる:
3.8% TT+ AQs+ AKo
SBがオールインした今、BBはバブルにならない可能性が高いからだ。もしCOに勝てば、少なくともダブルアップができる。SBには勝ったがCOには勝てなかった場合、SBはバブルし、BBは3位の賞金を持ってバストする。COがベストハンドでSBがセカンドベストハンドの場合、SBはバブルとなり、BBは3位の賞金を得る。
BBがトーナメントでバブルになる場合はCOがBBに勝ち、SBが全員に勝った場合だけである。
面白半分に、COに400BBのメガスタックがあり、SBに2BBのマイクロスタックがある場合のシナリオはこうなる:
![](https://assets.st-note.com/img/1718546149487-YPfQcEjhrH.png?width=1200)
これがバブルファクターだ:
![](https://assets.st-note.com/img/1718546289661-iGKljyh0yk.png?width=1200)
BBのバブルファクターは7.71であり、オールインをコールするには88%のエクイティが必要である。AAでさえこの場ではそれほど強くないので、BBの正しい戦略はすべてをフォールドすることである(SBがオールインをコールした場合、JJ+でコール出来る)。
もう1度、フィニッシュ分布を示す:
![](https://assets.st-note.com/img/1718546433766-ftQr0Ct0Kp.png?width=1200)
メガスタックやマイクロスタックがトーナメントにいる時に、タイトにプレイするのが正しい戦略である理由がここに集約されている。BBの優勝確率は6.6%、バブルになる確率は3.9%に過ぎない。どちらも異常値である。BBが2位か3位になる確率は89.4%で、しかも半分以上の確率で2位になるので今のところ非常に魅力的な状況だと言える
ICMの指針によると、異常なスタックに対して私たちができる最も有益なことは、バブルを避け、賞金を獲得した後に順位を上げ、ヘッズアップで幸運に恵まれることを祈ることである。
まとめ
ICMの計算では、各プレイヤーが各順位でフィニッシュする確率を調べ、それに従って戦略を導く。テーブルにマイクロスタックやメガスタックがある場合、ある程度のプレイヤーがどの順位でフィニッシュするかはある程度確実になる。
メガスタックはほぼ確実に優勝し、マイクロスタックはほぼ確実に次にバストする。ICMは常に、優勝を求める決断ではなく、最も利益を生む決断をするよう導いてくれる。だから、ミドルスタックサイズのプレイヤーにとっての正しい戦略は、必然的な結果が起こるのを待つことである。マイクロスタックがバストしてから立ち上がったり、チップリーダーが止められない時に2位を狙ったりするのだ。
このような極端なスタックは、現在のハンドに関与していなくても、あるいはあなたの現在のテーブルにいなくてもトーナメント全体に影響を与える。例えば、サテライトトーナメントの隣のテーブルでアンティしか持っていないプレイヤーがあなたのアクションを左右することもよくある。
華やかな戦略的調整ではないが、異常なスタックがあなたのテーブルにいるときは、タイトにプレイするのが最も有益な行動である。裏を返せば、あなたが異常な量のスタックを持っている時は、地球最後の日のようにアグレッシブにプレイできるということだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事を読んで良いと感じて頂けましたら、noteのスキ、やSNSでの拡散、Xのフォロー、サポート等をして頂けますと、本当に執筆の励みになります!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?