【翻訳】PKOでのテーブルマネジメント【PKO】GTOWブログ.74
プログレッシブノックアウトトーナメント(PKO)で最も重要な戦略的考慮点は、「対戦相手を確実にカバーすること」だろう。相手をカバーしなければバウンティを獲得することはできないので、時には大きなリスクを背負ってでもその順位に到達しなければならないし、チップリードを保つために有益なスポットを見送る必要もある。
テーブルマネジメントとは何か
ICM、バブルファクター、リスクプレミアム、バウンティパワーは非常に便利なモデルだが、どれも限界がある。どれもブラインドサイズ、プレイヤーのポジション、ブラインドアップしていく、という事実を無視している。
例えばICMレンジは、非常にショートスタックのUTGプレイヤーが次にビッグブラインドをポスティングするという事実を無視する。
トーナメントポーカーでソルバーがあまり言及しないスキルの一つにテーブルマネジメントがある。
テーブルマネジメントとは、テーブルでの自分の相対的なポジションの収益性を理解し、それを維持する方法を知り、それを変えるためにいつリスクを取べきかを知ることである。
ポーカーにおける古典的な古い思考実験が、このことを浮き彫りにしている。あなたはWSOPメインイベントのバブル時点のチップリーダーで、賞金を稼ごうと生存に必死にしがみついているアマチュアプレイヤーを押しのけて楽しんでいる。スモールブラインドのマイクロスタックのプレイヤーが、あなたのビッグブラインドに2ビッグブラインドでオールインした。あなたはポケットエースを見ている。どうする?
ポーカー史上最も簡単なコールであることは明らかだが、コールして勝った後はどうなるだろうか?
バブルは終わり、誰もが緊張を解き、あなたのチップリードはそれほどインパクトのあるものではなくなる。
ここでポケットエースをフォールドし、バブルを長引かせる強いケースがある。マイクロスタックのスモールブラインドはビッグブラインドを一周の間ポストしないだろうし、バブルが崩壊する前にあなたが多くのポットを獲得できる可能性は非常に高い。
SNGの黎明期には、これはバブル時に優秀なプレイヤー達が使っていた正当な戦略であった。彼らはマイクロスタックを泳がせ、バブルを長引かせた、、バブルが最もEVを稼ぐ場所であったため、彼らにとって有益であったからである。
カバーしているのことの重要性
ここでPKOトーナメントの話に戻ろう。PKOはとても複雑であり、特にこのテーブルマネジメントのスキルを考慮すると、完全に解決されることはないだろう。PKOではプレイヤーをカバーすることが非常に重要で、チップリードを得るために大きなリスクを冒すことが正しいこともあれば、チップリードを維持するために良いスポットをパスすることが正しいこともある。
これはPKOの最初のハンドほど当てはまることはない、このスポットで全てのプレイヤーのバブルファクターは0.82である。バブルファクターについての記事を読めばわかるように、これはポットに全くデッドマネーが無かったとしても、2人のプレイヤーが45%のエクイティでオールインするのが正しいということになる。これは通常のMTTではあり得ないことであり、同じ条件下のChipEVスポットよりもさらに広い。その結果、以下のような「マイナスのリスクプレミアム」が発生する。
その理由は、通常のMTTに比べて、ハンドに勝つことで得られる利点が非常に多いからだ。あなたは基本的に4種類のエクイティを獲得する:
賞金プールの通常の「ペイアウト」部分からのICMエクイティ。
バウンティを獲得することで直ちに得られるエクイティ。
テーブルの他のプレイヤー全員をカバーすることで、より多くのバウンティを獲得できる可能性という将来のエクイティ。
トーナメントで優勝したときに、自分のバウンティを獲得できる可能性があるという将来のエクイティ。
相手をカバーしている事がどれほど利益的なのか
GTO Wizardのデータベースから似たようなスポットを2つ見てみよう。この2つの例では、PKOで、フィールドの70%が残っており、平均スタックは60bbで、我々は44bbのスタックでBTNである。
最初の例のセットアップが以下の画像である:
見ての通り、BTNはフォールドで回ってきた時、両ブラインドにカバーされている。これがBTNのオープニングレンジと、レンジ内のすべてのハンドのEVである:
では、このよく似た別のスポットを見てみよう。これがテーブルセッティングだ:
前述のスポットとほとんど同じだが、この例ではBTNがスモールブラインドをカバーしている。これは彼らのオープンレンジと、そのレンジ内の各ハンドのEVである:
まず注目すべき点は、BTNがより多くのハンドをプレイできることで、先の例では45.5%であったのに対し、ここでは51.6%である。もう1つ注目すべき点は、全体的に、BTNが対戦相手をカバーしている場合、どのハンドもより収益性が高いということである。場合によっては、その差は非常に大きい。
これは単純な一例に過ぎないが、すでに多くのことを示している。バウンティを獲得するチャンスは、プレイするすべてのハンドにより多くの利益をもたらす。PKOでは相手をカバーすることが非常に重要であり、バウンティを獲得可能なポジションに身を置くことは、時にはリスクを冒す価値がある。
BTNがカバーしている場合、AAは2.58bbを稼ぐが、カバーしなかった場合は2.45bbしか稼げない。この0.13bbの差は、長期的には13bb/100の差になる。A3sのような弱いハンドはカバーされた例では0.12bbしか稼げないが、BTNがカバーしているときは0.17bbになる。この0.5bbの差は、2つのスポットにおけるAAの差より小さいが、この特定のハンドの収益性を41.67%高めることになる。
テーブルマネジメントの技術と科学
この例では、フィールドの50%が残り、平均スタックは50bbである。
見ての通り、SBは82bbでポールポジションにあり、BTNも74bbで近くにいる。また、18-34bbのショートのプレイヤーもいる。これはバブルファクターに反映されている:
先に述べたように、PKOはバブルファクターが1を下回ることが多い唯一のフォーマットである。ここで最も低いバブルファクターは、SBがショートスタックのUTG1のオールインに直面しているときで、0.72である。バブルファクターが最も高いのは、74bbのBTNが82bbのSBに対してオールインの決断を迫られた時である。バブルファクターは1.13であり、53%のエクイティが必要であることを意味する。通常のMTTに比べればまだレンジは広いが、BTNがSBを相手にするにはより強いレンジが必要である。
カバーされているプレイヤーに対してはポットを避け、自分がカバーしているプレイヤーに対してはポットに積極的に参加するというのが、誰にとっても最適であるというのが、ここでの総意であろう。自分よりチップの少ないプレイヤーにはバウンティを獲得する事が出来るが、自分よりチップの多いプレイヤーには出来ない。ICM、バブルファクター、バウンティパワーを戦略指針として使うことの限界がここにある。これらのモデルは将来のゲームを考慮していない。
将来、私たちは今私たちをカバーしているプレイヤーのバウンティを獲得したいのだが、そのためには数手先を考える必要がある。
HJはUTG1、UTG、BBをカバーする42bbを持つ4番手のポジションにいる。通常のMTTでは、中位のプレイヤーはタイトにプレイし、大きな対立を避けなければならない。しかしこのスポットでは、HJは大きなリスクを冒してダブルアップすることをお勧めする。大きなリスクというのは、非常に小さなエッジを取るか、あるいはEVが少しマイナスになるギャンブルをするという、分散の高いプレイのことである。
彼らはテーブルでかなり不利な席についている。カバーしているプレイヤーがブラインドにいる時、HJが彼らを狙うには、3つのビッグスタックを跨がなければならない。もしHJがビッグブラインドで、カバーしているプレイヤーの一人がポットに入れば、現在LJにいる58bbのプレイヤーが彼らをアイソレートさせる可能性は非常に高い。重要なのは、HJがダブルアップした場合、少なくとも84bbを持つ事になるので、テーブルの全員をカバーできることである。
チップポジションは良くないが、現在のBBは妥当なテーブルポジションにいる。彼らはチップで3番目に少ないが、BBのすぐ左には下位の2人のプレイヤーがいる。BBは彼らに対してポジションが無いため、理想的ではないが、スタックは十分ショートなので、BBは彼らのどちらに対しても非常に有益にベット/リスティールを行うことができる。もし彼らが大きなリスクを冒して大きなスタックを手に入れたとしても、最高のチップポジションにはならないだろう。ダブルアップすれば68bbになり、BTNかSBにカバーされることになる(ダブルアップしたのが彼らでないと仮定すれば)。だから皮肉なことに、BBは時が過ぎるのを待ち、すぐ隣にいる2人のプレーヤーをカバーしている事を楽しんだ方がいいかもしれない。
現在のSBはチップリーダーであり、バウンティを獲得するためにできるだけ多くのポットをプレイしたいだろう。しかし、BTNやCOがアグレッシブに攻めてきたら、ここは小さなエッジをパスするチャンスかもしれない。これらのプレイヤーにオールインで負けると、SBはテーブルで最もショートスタックになる。今後もリードを維持するためなら、他の2人のビッグスタックとの接戦を避ける方が賢明かもしれない。
このハンド以外では、SBは他の2人のビッグスタックよりも有利な立場にある。小~中程度のポットで彼らを粉砕することが出来るという事が、彼らに対して大きなポットでのリスクを避けるもう一つの理由である。
BTNも同じような立場にある。彼はSB以外の全員をカバーしている。一般的に言って、今現在は6人のバウンティを直ちに獲得出来るポジションにいるため、他の2人のビッグスタックと大きなポットで絡むのを避けるのは良いプランかもしれない。しかし、BTNの席は最悪で、チップリーダーのすぐ右にいる。ショートスタックのプレイヤーがオールインしたときにSBがアグレッシブにアイソレートしてしまうと、このテーブルでバウンティを獲得するのは難しくなる。従って、BTNがこのテーブルでリスクを冒してSBからチップを奪おうとするのは良い考えかもしれない。
前述したアドバイスはすべて主観的なものだ。プレーヤーが実際にどのようにプレーしているかによる。もしチップリーダーがPKO用に戦略をアジャストせず、クラシックトーナメントのようなABC戦略をとっているようなら、彼らを追い抜いて自分がチップリーダーになろうとする必要はない。もしビッグスタックが非常にアグレッシブであれば、彼らに対抗して大きなポットをプレイするのが正しいかもしれない。
他にも考慮すべき力学がある。例えば、ショートスタックの一人が非常に大きなバウンティを持っている場合だ。この例では、UTG1が$300のバウンティを持っているとしよう。そのテーブルで最大のバウンティを既にカバーしている場合、ビッグスタックを目指す動機は少なくなる。
他のビッグスタックをカバーしているときに小さなエッジをパスするもう一つの理由は、そのスタックが小さなバウンティしか持っていない場合である。上の例で、例えばBTNが$25のバウンティしか持っていなかった場合、SBが彼らとのビッグポットを避けるもう一つの理由となる。すべてのバウンティを獲得したいが、テーブルにもっと大きなバウンティがある場合、大きなバウンティを狙うこととビッグスタックを維持することはトレードオフの関係になる。しかし、しばしばそうであるように、大きなバウンティが最も大きなスタックが持っているのであれば、大きなリスクを取り、彼らをカバーしようとする動機になるかもしれない。
最後に、トーナメントが後半になればなるほど、PKO ICMが重要になる。チップリードを得るために大きなリスクを取ることは、バウンティの価値が相対的に高いPKOの序盤では、あなたのエクイティという点で、より考慮すべきことであるが、ペイアウトが迫ってくると、生き残ることがより重要な要素になってくる。
まとめ
PKOトーナメントは、未来のゲーム展開やテーブルマネージメントを考慮する以前に、とても複雑である。より多くのプレイヤーをカバーするために大きなリスクを取ることが正しい場合もあれば、バウンティを獲得できたかもしれないのにニッティなフォールドをすることが理にかなっている場合もある。
今日の主な収穫は、PKOにおいて、特に序盤において最も重要な考慮点は、いかにしてより多くのプレーヤーをカバーし、より多くのバウンティを獲得できるポジションにつけるかということだろうということだ。
キーポイント
ICMレンジは将来のゲーム、つまりこのハンドが終わった後のことは考慮しない。
相手をカバーすればより多くのハンドをプレイでき、相手のバウンティを獲得できる可能性があるため、すべてのハンドがより利益的になる。
テーブルの席が悪いということは、PKOで大きなスタックを得るためにリスクを取る良い理由になる。
ダブルアップすることで多くのプレーヤーをカバーできるのであれば、多少のリスクを取る価値はある。
他のビッグスタックに負けることで他のプレーヤーをカバーできなくなるのであれば、そのプレーヤーとの接戦をパスする価値がある。
全員をカバーする必要はない。すでに最大のバウンティを持つプレイヤーをカバーしているのであれば、そのポジションを維持することを優先した方がいいかもしれない。しかし、最大の賞金首にカバーされいる場合は、そのポジションを変えたくなるだろう。
テーブルマネジメントはPKOの序盤でより重要になる。ICMがアクションを左右するのはもっと後半だ。
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