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最終節vs徳島「見せつけられた’違い’」

みなさんこんにちは。

先日の徳島戦をもって、レノファ山口FCの今シーズンの公式戦全日程が終了しました。また後日、シーズンの総括みたいなものを書いてみようと思いますが、今シーズンは勝ち点47、22チーム中15位でのフィニッシュ。降格も危ぶまれる時期もあった中で、監督・選手・スタッフたちが最後まで戦ってくれた結果なので、個人的にはとても誇りに思います。

しかしながら、高い目標を掲げ、レベルの高いサッカーを志向した今シーズンは、結果が示すように決して簡単なものではありませんでした。そして最終節は、シーズンを4位で終え、プレーオフ進出を決めた徳島ヴォルティスに改めてそれを思い知らされた気がします。

というのも、この試合においてヴォルティスが披露したフットボールは、性質という部分において、今シーズンのレノファが目指したサッカーと比較的近いものだった。しかしその完成度・クオリティーという面で見ると、かなり差があり、明確な「違い」があったように私は感じた。ということでこの記事では、この試合のヴォルティスのフットボールを私なりに考察し、そこからレノファとの違いを見つけ出して、来シーズン以降の戦いを見る際の参考にしていきたいと思う。

1.両チーム基本システムは同じだが、ミラーゲームにはならない徳島の「可変フォーメーション」

この可変フォーメーションについては、特にレノファが志向しているとかではなさそうだが、徳島のサッカーを語るうえで決して抜きにできないもなので最初に紹介することにする。

この日の両チームの基本システムは以下の通り。

基本(マーク)

両チームともに3‐4‐2‐1を採用。山口はここのところ継続していた4‐2‐3‐1のシステムからの変更となった。要因としては、前節徳島と同じく3‐4‐2‐1のシステムを採用する山形に、2シャドーの流れる動きやウイングバックとの連携でサイドを破られ、DFがサイドへ釣り出されて、手薄になった中央を使われての大量失点したことに対するの修正の意味が主として考えられる。

上の図はこの試合の基本フォーメーションの噛み合わせを示したものだ。先の述べた通り、両チームとも同じシステムを採用しているため、随所でマッチアップが発生しているように見える。通常、J2リーグで3バックを採用しているほとんどのチームは前節のモンテディオ山形や今節のレノファのように守備時にウイングバックがDFラインに吸収され、5バック化する。つまり、ほとんどのチームにおいて「3バック=5バック」という式が完成する。この試合の徳島ボール保持(山口ボール非保持)時なんかはまさにそんな感じだ。下の図をご覧いただきたい。

徳島保持

見てわかる通り、徳島のウイングバックが高い位置を取り、反対に山口のそれはDFラインに吸収されている。基本の形と同様に、サイドではウイングバック同士の1対1が発生している。山口には先の「3バック=5バック」という式が当てはまるということが分かった。

今度は反対に山口のボール保持(徳島非保持)時の噛み合わせを見てみよう。以下の通りである。

山口保持

ご覧の通り、徳島は単純に両ウイングバックが後退して5バック化するのではなく、右WBの田向が下がりつつ、3バックが左へスライドする形で4バックを形成。これにより、センターバックの枚数は1枚減るものの、印をつけたサイドの部分については、徳島の数的優位で守ることができるというメリットがある。このサイドでの攻防については、この試合の前半は特に差が見られた。徳島は左サイドを中心にウイングバック同士の数的同数を活かして山口陣内へと攻め込み、釣り出したCB坪井を振り切って、WB杉本やサイドへ流れた河田がゴールへ迫る場面が多くみられた。

一方の山口は、サイドではなかなかチャンスを作れず、10分の宮代がオフサイドになったシーンのように、ボールを奪った後、徳島が陣形を整える前の素早いカウンターにチャンスを見出せそうな感じもあったが、ボールを奪われた後の徳島のコースを限定する見事なプレッシャーにより素早い展開を封じられる。その間に徳島は陣形を整え、山口の攻撃を封じ込めた。徳島も山口も、ボールを失った後に激しいプレッシャーを掛けるという点は似ている。しかし、山口はコースを限定しきれてなかったり、後ろが連動しきれてない部分があったりと、相手からするとどこかに逃げ道がある感じのプレスのかけ方だった。しかし徳島は、ファーストディフェンダーで意地でもボールを取ってやろうという感じはさらさらなく、後ろを見つつコースを限定。後ろと陣形を整えて、そこにボールを蹴らせて網をかけるように、チーム全体でボールを奪うというやり方だ

レノファも実は今シーズン似たような形へ取り組んでおり、シーズン前のPSMでは割とうまくいっていたが、シーズンに入るとどうもうまくいかず、勝ち点を取れずに負け続けるわけにもいかないので、原点回帰ということで去年のようにガツガツ行ってみたり、シーズン終盤は割と引いて守ってみたりと試行錯誤をしたが、本来目指していた理想形はこの試合の徳島のような形だと私は思う。いずれにせよ、一朝一夕にはいかないものであり、その完成度の違いを見せつけられた。

2.徳島のビルドアップ「ひし形とキーマン3人」

徳島との違いを最も見せつけられた部分と言えば、ビルドアップの部分だろう。山口も今シーズン、キーパーから短く繋いでのビルドアップを試みる場面が多く、この辺りは徳島と同じようなとこを目指している感があるが、質に関してはかなり差を感じた。

キーパーからのビルドアップや、高いポゼッションを武器に試合を支配していく徳島のフットボールにおいて、一番のキーマンは間違いなく監督だし、選手で言えばピッチ上の11人全員だと思います。各々の「止める・蹴る・前を向く」という技術が非常に高い。特に岩尾・鈴木・渡井・野村の中盤4人はひし形を作り、ゴールへと前進していきます。この4人は本当に徳島サッカー核となっているように感じます。

BU徳島

(他の選手の立ち位置とかはイマイチですが、イメージ的にはこんな感じ)

ただその4人も含めて、私が徳島サッカーのキーマンをあえて上げるとすれば、ヨルディバイス・岩尾憲・鈴木徳真の3人です。1人ずつ簡単に、この試合で受けた特徴を挙げてみることにする。

○ヨルディバイス

背番号3のヨルディバイスは3バックの真ん中に位置する選手。186㎝/85kgというプロフィール通り、そのサイズ感と存在感はピッチ上で際立つ。しかし、一昔前によく見た「サイズが大きくてとにかく跳ね返すセンターバック」ではなく、足元の技術が優れており、安心してボールを預けることができる。特にキーパーからのビルドアップの際はエリアの中で大きく開いて受けることが多く、徳島の攻撃の最初の一手となることが多い。また、フリーキッカーという一面も持ち合わせており、この試合では見られなかったが、サイドにスペースがある際にはそこへ高精度のフィードを送り込みそうな感じがする。

○岩尾 憲

背番号8の岩尾憲は、J2屈指のアンカーとしてご存知の方も多いのではないだろうか。特にTwitter上では「#J2トラウマイレブン」や「#J2ドラフト会議」等といった企画で名前が挙がる常連だ。(いつも楽しく拝見させていただいております。)

岩尾は本当に「theアンカー」という感じの選手で、ビルドアップの際にはDFラインまで降りてきたり、先に述べたひし形の一番底の部分に位置する選手だ。本当にいてほしいところにいるし、攻守において痒いところに手が届く孫の手のような選手。CBに対してプレッシャーがかかった際に預けどころとなり、空いているサイドに展開したりできるのは本当にうらやましい。さらに横パスやバックパスにおけるミス、危ない所でのボールロストはほとんどなく、そこからピンチを招くことがないので安心感がやばく、「とりあえず岩尾に預けとけばなんとかしてくれる」感があるし、実際になんとかしてくれるので恐ろしい選手。レノファで言うと三幸と佐藤を足して2で割ったような、そんな素晴らしい選手だ。

○鈴木徳真

岩尾と共にダブルボランチを形成する大卒ルーキー。徳島はええ選手とったなぁと。ひし形ビルドアップ時には左に位置することが多く、足元の技術も申し分ない。それ以上に攻撃から守備に転じた際、3バックから4バックへと可変する間に左サイド後方のスペースを埋める動きや、攻撃時のWBの背後のスペースを埋めるといった危機察知能力が高く、中盤でも山口のパスをインターセプトする場面が見られた。若い佐藤健太郎である。とにかく、ルーキーながら徳島のサッカーになくてはならない存在となっているようだ。

3.試合の締め方

試合展開の話に戻ると、山口も決して無策だったわけではない。後半になって山下・池上の2シャドーがサイドに流れる動きを見せ、サイドでウイングバックが孤立することを防いだ。これにより徐々にサイドからチャンスを作れるようになる。しかし、後半早々の徳島の河田の抜け出しや、田向のオーバーラップを前に相次いで失点。3点を追いかける展開になると、山口は佐藤健太郎を投入し、システムを4‐2‐3‐1へ変更。これにより攻撃時、サイドでの数的不利を解消しようと試み、高井和馬を投入することでサイドで質的優位を作り出そうと試みる。さらに山口は64分に早くも最後の交代カードを切り、吉濱をサイドバックの位置へ。攻勢に出る。

山口交代後

これに対して徳島は、無理にプレスに行きスペースを空けることなく、ある程度引いて4‐4‐2のブロックを形成。結局この堅い守りを崩せず、山口がシーズン中に苦しんだ「試合の終わらせ方」という部分でも徳島に差を見せつけられ、完封負けを喫した。

このように、試合を組み立てる部分、試合を動かす部分、試合を締める部分ともに今のレノファとヴォルティスとでは大きな差があるように思えた。しかし、目指す場所はそう違わないはず。レノファも今シーズン、未完成ながらもその片鱗をたくさん見せてくれました。個人的にはここでスタイルを変えることなく、そこを突き詰めて目指し続けてほしいと思います。維新で美しいフットボールを見れる日が来ることを信じています。そしてそれは、そんなに遠くない将来な気がします。来シーズン、どれくらいその差を埋めれるか楽しみですね。




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