斑鳩メイ

壁打ち

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最近の記事

友人信仰

どうしてそんなに優しくするの。 アイは僕をそっと上目遣いで見つめる。 きゅ、と眉を寄せて唇を一文字に引き結び、何かを堪えるような表情をしていた。 「だって、だって。俺はユウのこと嫌いって言ったのに。嫌なことたくさんしたのに」 戦慄く唇が紡ぐ声は、震えていて、掠れていて、それでもなお愛おしい。僕は君に嫌われていたとしても、その気持ちに応えたいと思ったんだ。 『たとえそれがどんな形であったとしても、君の想いを大切にしたい。 君からもらえるならどんな感情でも嬉しかった。だからね

    • りょうおもい

      扉を開けると、そこに夏月先輩はいなかった。 いつも僕より早く来て、「おそいよ、水葵くん」なんてニヤニヤしながら言ってくるのに。僕は不思議に思いながら背負っていたリュックサックを降ろした。 先輩がいないと狭い部室でも広く感じる。決して太っているとかそういう事ではなく、先輩の存在感がそれだけ大きいという事だ。先輩の定位置である椅子が空いているのが不思議な感覚だった。 成績優秀な先輩の事だから補習でいないという訳ではないと思う。連絡もなく遅れるような人ではないし、先生に何か頼まれ事

      • 体温

        「真夜中だけど、お散歩しちゃおっか」 彼女は悪戯っぽく笑った。 僕は少し不安だけど頷く。 彼女の突飛な言動は今に始まったことではないけど、流石に1人で外を歩かせるのは心配だ。 はやくはやく、と急かす彼女に上着を着せてから外に出る。ひんやりした空気が首筋を撫でた。 彼女について行く形で閑静な住宅街を歩く。 街頭に照らされた狭い道路に車通りは無いので、中央を堂々と闊歩する。普段は出来ないことをする背徳感でワクワクしていた。それは彼女も同じだったようで、まんまるの頬を紅潮させて

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          不思議色