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【読書感想文】サービスの達人たち

紹介されている10人のサービスマンの話を読み、サービスには様々な種類があるということを知りました。
中には「そこまでやるか」と驚いたものも。
今回は特に心に残ったサービスをご紹介します。

私の心に残ったサービスマンは、カツオの目利きに自信のある魚屋の主人です。
地元・土佐に根付きながら、国内外からたくさんの観光客も訪れます。

「田舎の魚屋が生きる道は、ここでしか出せないものを提供することなんです。」

と主人はいい、首都圏には卸せない足のはやい魚を提供します。
納得の考えです。
その地域の特色を活かすことは、その地域を生かすことの一歩目のように思います。
しかし驚いたのは、発送業務に「音声入力」という方法をとっていることです。
普通、地方でお土産を発送してもらうには手書きで伝票を記入する必要があります。
こちらの魚屋ではカツオのタタキを全国に発送してくれるのですが、よりスムーズな音声入力システムを使いお客さんの住所をデータ化しておくことで、「もう一度注文したい」と思ったときの手順が簡単になります。
作業効率のアップはもちろん、集客につながるシステムでもあると思いました。

正直、地域に根差した魚屋さんがこのような取り組みをしているのは意外でした。
このシステムが取り入れられているのは、主人のサービス精神によるものだろうと考えられます。
お店にとって新しいシステムを導入することは面倒なことでもありますが、お客さんにとっては圧倒的に便利なサービスのはずです。

さらに、主人によって工夫された点があります。
私はこれが最も印象に残ったサービスでした。
魚屋でお馴染みの売り文句といえば、「いい魚が入ってますよ」「獲れたてですよ」ではないでしょうか。
しかし主人は、「いい魚を売る」よりも「お客さんの好みを知る」ことが必要なことに気づきました。
主人が目利きを極めたカツオは、産地や時期によって特に味が変わる魚だそうです。
それからは、お客さんに「脂がのっている方がいいか」「さっぱりしているがうまみのある方がいいか」選んでもらうようになりました。

ビジネスの場面で、よく「ヒアリング力が大切だ」と言われます。
これもまさに、ヒアリング力が活きた事例だと思いました。
私も普段、「おいしい魚」「活きのいい魚」という文句に違和感を感じることはありませんでしたが、それを聞いてその魚を買いたいと思ったことは一度もありません。
まず自分に話しかけられている感覚にならないからです。
またその魚がおいしくて活きがいいのは、その販売員の主観によるものでしかないからです。
そのセリフを聞いて魚を食べたい気分になったお客さんがいたとして、その人にその魚を買ってもらえないのはとてももったいないことだと思います。
不特定多数に自らの主観をばらまくのではなく、ひとりの人に対して「その人を知ろう」とする姿勢が大切であると学びました。

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