#指す将順位戦7th A級2組toA級1組⑫ vs 祭さん戦(自戦記)

 戦型予想は下記urlより。
https://note.com/lowpong1230/n/n6738f8c36b74
追記することがあるとしたらものすごく粘っては来ないかもしれないという淡い期待を覚えてはいたということだろう。

 先手は祭さん、後手はヤギである。事前の予想では羽生式袖飛車であるけれどもいかほどか。先後を逆にして以下に示す。

 通い慣れた道である。ただこういう時こそ何かしら油断が生まれるものである。

もしかして…棒銀?

棒銀を見るとこれはあれなのである。あれ、焦る。よりによってこの胃が痛くなる対局で棒銀の姿など見たくはなかった。ウォーズであるならば、▲4六歩→▲4七銀として、▲3六歩▲3七桂馬という経験がある。いずれにせよ、この時点で▲3五銀をくらってはならない。△3四歩と突くところであるけれども……。

 ここまでで相手の指し手が早いことが気になってしょうがない。もしかしたら事前の研究でこうなったらこう、と対策が完備しているのではなかろうかと精神的な面で追い込まれている。なるほど歩の交換をすれば、今度は堂々と▲2五銀と出ればいいだけの話である。ヤギは焦った。

 相手は満足したのか陣形整備をし始めており、この金はこちらとしてはもしかしたらいわゆる”形”で指しているのではないかと思い始めるきっかけとなった。形では▲7八金である。こちらとして恐れているのは▲2五銀である。そういう意味での恐れは少し緩和された。ただ相手としては爆弾は作ったので、”固めてドン”の”固めて”に入ったのかもしれない。気を引き締めた。

 ただ気を引き締めたところでこうなってはしょうがないのである。ただ、対局中に思いついた部分として、▲2四歩はとらずになんとかできないか、という部分である。▲2四歩は取ると棒銀成功となるけれども、取らない場合、▲2三歩成に金でとり、飛車先が重くなっているだろうという部分に賭けた。
△3五歩として飛車の小瓶も狙ってやんよ、という好戦的な構え。ただ先手としても申し分ないだろう。▲2四歩。

 率直な感想を述べるとつぶれている。あの銀を捨てて飛車がなりこまれるときに、▲2一飛車成りで桂馬をとられるのは嫌だ。
まやかしの△3三桂馬である。
もちろん▲2三歩成△同金▲2四歩に、当初の予定通り金をよけた。△1三金。

これはやはり…

こうなると▲3四銀と行かざるを得ない。△同飛車に▲2三歩成である。

やはり…これは…

 小考の後に、△2六歩である。まさか歩が一枚足りてないなんてこと、さっき気が付いたなんて言えない。堂々と打っておく。ここで単純に▲2二とでこちらはよろしくなかっただろう。ただこの歩が足りないことが相手の勘違いを生んだのかもしれない。後手の8筋ががら空きに見えたのも良かったのかもしれない。総合的に将棋は難しいものである。▲同飛車に「おっ」とつぶやいた。相手1分30秒弱の長考であった。これしかないので、△2五銀。

こちらの読みとしては、このタイミングで▲3三とかなと思ったのだけれども、△2六銀に▲3四とは、後手から飛車おろしの先着があるので、思ったより厳しいという感想を受けた。先手の読み筋は▲8六飛車からの飛車成りであったのだけれども、これは九死に一生を得た心地である。客観的にはどうかはわからないけれども、こちらの心としては助かった気持ちになっている。
バタバタ進んで第10図。

 相手の感情を予想するならばこんなはずではなかった、であろう。こういう流れはこちらにとっては悪くない。▲7六歩にこちらも我を通す△3四銀。飛車先が開通した。▲5五角が怖いところだったのだけれども、そういえば▲7三角成はこちらがアクションを起こさなければあまり怖くない、というか攻め合いに活路を見出すと後悔がない。△6五桂馬が感情を表現できない手。相手を煽っている手かもしれない。

とられるくらいならえいやである。

これ自体は何でもない手なのであるけれども、龍が自陣に効いているので、相手の桂馬に働きかけつつ空気穴をあける▲6六歩はよさそうな手。ただこちらはもう一枚桂馬を跳ねていく。もうこちらは失うものがないのである。

こういう時、格下のヤギにとっては押せ押せである。▲2二角成△同金に▲6五歩としたけれども、この桂馬は取れない桂馬だといまならわかる。

手ごたえを感じた

守っている場合ではないので、▲8四桂馬と攻めてくるも、こちらとしては▲7二桂成が▲7三角成同様すぐさま何が起こるわけではないと決めてしまっているため、△5八桂馬成と攻め込む。これは取れるかわからないけれども、先手は取らなかった。そして△5五角である。

 以下進んで、先手からの攻め手がなく、投了もやむをえない形となった。

 あの飛車の転回が魅力的に映ったのは、△7二銀や金が入っていなかったためであり、こちらとしてはそれを入れる始まる前に戦いが始まってしまっていたので、運が良かったとしか言えない。まっすぐ来られていたらこちらが投了していたかもしれないので、将棋の恐ろしさを感じた一局であった。
これで入れ替え戦勝利となり、来期はA1級の昇級が決まった。(了)

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