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大人

「俺がお金に余裕出てきたら普通に飲みに行こうね」と恋人候補もといセフレに言われた、朝11:00の改札前。多少涼しくなったとはいえ残暑真っ只中、強い陽射しが私を刺す。
「気にしないで、十分楽しいから」と眠気と二日酔いで朦朧としながら適当にそれっぽいことを言っておいた。楽しいわけないけどね、テキトーにYouTube見て飲んでセックスしてるだけなのに。と内心思ってるけど、本音が人を幸せにすることは少ない、嘘でも相手が傷付かないことを言うのが癖になっている。大人なので。

好きになれるかもと思って会っていた。付き合う前のセックスは普通にする、となにかのサイトで読んだから、そんなものかと思って受け入れた。それからは毎回会うのは彼の家。付き合うそぶりもなければ、私が彼を好きになる気配もない。20代のテンポの良さはどこへやら。なかなか人を好きになれなくなった、大人になったからか。

帰りの電車、私が好きなアイドルのファンの"またこの子達が可愛いことしてる"旨の拡散ツイートを見て、私みたいなこと、アイドルの子達は絶対にしないんだろうなと思った。好きなアイドルに胸を張って会えない自分になっているのは由々しき自体だ。またいつかあるであろうコンサートで躊躇なく「大好き!!!!!」と叫べる自分でありたい。
と思う反面、こちらにも性欲というものがありますので、ええ。と言う気持ちも少なからずある。大人ですし。

一週間前新大久保の韓国料理屋で友達とたらふく食べた後、腹ごなしに歩いてる途中で見つけた韓国チックなオシャレなカフェに入った。本当はアア(アイスアメリカーノ)を頼みたかったけど店内は冷房がよく効いていた。体を冷やしちゃダメだねと、おばさんムーブをかまして2人ともホットのカフェラテにした。友達にこの状況を言うつもりはなかったけど、ふと話の流れで彼と私のことを話した。カフェラテを両手で包みながら、事の顛末をポツポツと、後ろめたい事を後出ししながら。この間結婚式を挙げた友達にまだセフレだのなんだの言ってる自分に居た堪れなくなった。真正面に座った友達に「自分が好きになりたいって思える人に、まずは自分がならないとダメじゃない?」と面と向かって言われたど正論は私のHPを0にした。「おっしゃる通りです、、」と何回言ったことか。そりゃそうだ。私はこの人を切るべきなんだ、と分かってはいる。でも連絡がしつこくてつい会う約束をしてしまう。連絡を無視すれば、って思うじゃん?元々友達だからそうする事で友達という関係性すら失うのは嫌だからそれができない。そんな都合良く友達に戻るとかもうできるわけないのも分かってる。
でも私は私の欲しいと思うものは全て欲しい。大人だけど。

昨日から再開したマッチングアプリでちょっと会話が盛り上がってる人がいる。マッチングアプリを再開した理由は彼を切る口実が欲しいから。セフレなんかよりも好きになれる恋人が欲しいから。彼の家から帰りの電車で連絡返さなきゃと思い、重い瞼を開けアプリを開いた。またすんなり返信する内容が思い浮かぶメッセージが来ていた。マッチングアプリでなかなか返信に苦労する相手もいるけど、この人との会話にはそれがない。それだけでも結構高ポイントだ。一週間前の友達の言葉を思い出した。そうだよね。と思いながら返信を送った。
セフレからも連絡は来ていたけど、とりあえず窓枠の中を流れていくたくさんの家ををぼーっと眺めていた。朝だから洗濯物を干しにベランダにいる人がちょいちょいいる平和な風景。私も帰ったら洗濯物干したいな。シャワーも浴びてサッパリしたい。真夜中にまた負ってしまった罪悪感を流したい。こんな気持ちで眺めるこの景色はこれで最後になりますようにと祈った。祈りとか意識とかそういうものが無意味なのは知っている。会社のOJTで新人に口酸っぱく言っている。「意識を変えるのは意味がない。行動を変えて。具体的に何をするの?」その言葉そっくりそのまま私に返したい。いい歳してこんな状況になっているということは新人には知られたくないなと笑ってしまった。
彼らの前では常にモデルになりうる社会人、正しい大人でありたい。

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