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『百花繚乱』編 第1章「いつかの芽吹きを待ち侘びて」シナリオ分析(前編時点)

面白い理由を言語化したかった


話の流れ

面白いポイント

キャラ描写が丁寧

モブ含めてキャラの描写が丁寧
キャラ同士の掛け合いが多いからそう感じるのかもしれない(百花繚乱同士、モブ同士)
後は既存キャラのセリフが少ない(主要キャラに文字数を回している)ことや適宜回想を挟むことで色んな角度からキャラを見せているのもありそう
それらが話の本筋を進めつつ同時に行われている

ヒロインのユカリ、百鬼夜行のキャラの濃さ

お嬢様口調、世間知らず、純真で元気、向こう見ずなど第一印象が強い
話が進むにつれて上記の性格に育った理由が見えてくるのが更に深い魅力を与えている

他の部員はそれぞれ男勝り、毒舌ダウナー、ミステリアス(ややマイペース?)
キキョウとナグサが多少被っている感もあるがナグサは現在謎で引っ張ってる部分が大きく、また苦しんでる描写や上司としての描写が多いので内面が出てきてないせいだと思われる。「有能そうに見えて実はかなりマイペース、だけどアヤメ部長がいなくなって1人で無理してた」で萌えポイントを作りに来るに一票

テーマ

今回のテーマは現状だと「居場所」というものが一番大きい。今提示されている百花繚乱の4人全員が居場所を無くしていることに苦しんでいる。ユカリは百花繚乱が初めて自分から選択した居場所だと語り、レンゲとキキョウはユカリは自分たちと違って居場所がある=自分たちは居場所がないと言っており、ナグサも「アレ」を返したことで(他に理由があるにせよ)百花繚乱に戻りづらいと感じている。
この居場所の無さを(回想を用いて)仲が良かった頃と対比させることでより強調している。

決闘要素

一般的に面白いとされる要素。また「勝てば万事解決」という分かりやすい設定はユカリの一度決めたら曲がらない性格を発揮させる舞台として適当。また読み手も物語が掴みやすい。

キャラを小出しにしている

レンゲ、キキョウを一気に出すのではなく小出しにすることでそれぞれの印象を強めたり新キャラ登場の面白さを長く味わわせている。また前述の通り回想を用いる必要があったため2人の立ち絵を隠すという工夫がされていたが、それが2人への期待感を増加させる効果にも繋がったと思う。

大きな謎の配置

ゲーム上の演出も用いて大きな謎を設けたことで何か大きな出来事に巻き込まれているのではないかという期待感を生み出している。
また先生がその声に若干気づいてなさそうな感じも更に謎を生み出していて良い(レンゲの言葉が途中聞き取れなかったことも関係しているのではないか?みたいな推測が生まれる)

引きが上手い(敵キャラ登場タイミング

見た目や口調も興味を惹くものになっていた

キキョウの好感度調整

ユカリを叩かせた後ですぐ真意を開示させたのは読み手にストレスを与えないという点では良かった。ただ物語の型次第ではあえて嫌な奴を演じさせ続けて後々見せ場を設けた方がいい場合もあるので今後の展開に注目。

気になった点

先生の視点≠読者の視点

今に始まったことではないが先生と我々読者の視点がずれている点が気になった。特にキキョウに言い負かされて走り去ったユカリを先生とシズコが追いかけた後、視点が残されたキキョウに移った点がかなり印象的だった(百花繚乱調停室へキキョウと共にカメラが移動している=明らかに意図してキキョウを追いかけている)。

ブルアカの先生は(ウマ娘とは異なり)プレイヤーと先生を同一視させることにそこまで積極的でない印象を受ける。たとえば「大人のカード」という当時プレイヤーが知らなかったものを最初から知っている様子だったり、別世界線の先生が「プレナパテス」としてキャラクター化している点など明らかに視点が重なっていないシーンがある。

キムヨンハ統括Pかisakusanのどちらだったかは覚えていないが、ブルアカに携わる前に2人が開発していた「魔法図書館キュラレ」というゲームでは主人公を作ってしまったがために主人公たちの登場回数が増えすぎて人気が偏ってしまったという反省点があり、そのためブルアカでは主人公を作らないようにしたとインタビューで話していた。先生という存在は数多くのキャラを活躍させるために生み出されたのであり、プレイヤーと同一視させる目的はそこまでないのかもしれない(実際プレイヤーの中には"先生"を魅力的なキャラクターだと捉えている人も多いだろう)。

分かり切った謎も必要?

ユカリが身分を隠そうとするシーンが何度もあったが、その中には既にプレイヤー側がユカリの正体をほぼ分かった状態でそれが行われる場面も多かった。こういった見え見えの謎も簡単なパズルを解いている感じで面白いので、シナリオ上で謎が何個も設置されている場合はこういった分かり切った謎を作ることも読み手の(謎が多すぎることによって生じる)ストレスを軽減するためには大事かもしれないと思った。

追記

またシナリオのつくりの美しさが今までのメインストーリーと比べても一段と良い気がした。全体を通して話が停滞する瞬間がほぼなくテンポ感がいい。唯一色んな部活見に行ったときは多少停滞感があったものの、それもレンゲの紹介をしつつ燈籠祭りを目前とした一般生徒たちの空気感を表現していたため無駄が少ない。
これが今までだと1章はキャラ紹介と伏線の設定のための比較的明るめな話に充てている場合が多かった。今回は初めから美味しい部分を見せてくれているので現状めちゃめちゃ面白い。後はここから話がどう移り変わっていくか楽しみ。

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