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『0068 オペラより愛をこめて!』シナリオ分析

今回は短め


あらすじ

MP(ミッドポイント)……物語の前半と後半を繋ぐ重要な事件
今回はサオリの登場がそれにあたる

良かった点

便利屋らしいイベント

便利屋としての活動はゲーム内だと正月イベ『第68番新春狂想曲』、グループストーリー『不健全な事業計画』、そしてメインストーリー等の端々で描かれていたが、基本的には(アルが)騙されるor巻き込まれる形で事件に関わる展開が多く、便利屋本来の「依頼を受けて任務を遂行する」という形がシナリオの中核に据えられることはなかった。それが今回(ゲーム内では)初めて便利屋らしい姿の一部始終を見ることができたと言える。

彼女たちの活動は基本的に安全上、道徳上の理由から先生の指導方針と対立する。
今回は敵がギャングなので「皆のためになる」という大義面分が立ち、
放ってはおけないという理由で先生が同行することになった。

お馴染みのドタバタ感や最後の爆発オチはもちろん、序盤の手際の良さやアルへの忠誠心の高さの描写など様々な角度から便利屋が描かれていた。立ち絵の豊富さも相まって便利屋の空気感を描くシナリオとしては完成度が高かったと言える。

ノルマ達成

またそれぞれのキャラも生き生きと動いていたように感じた。特にハルカは展開を動かす役割を多く担っていたこともありかなり印象に残っている。というか同じシナリオ内でスーツとドレスとかいうカッコよさと可愛さの代表みたいなのをぶつけられると心の弱いオタクはあまりの寒暖差に死ぬ。この調子でもっと殺してほしい。

面白そうな導入

冒頭のお洒落な入りや某アクション映画を彷彿とさせるタイトル、華やかな状況設定、映画ポスターっぽいSNSでの告知画像など、本イベストに対する期待値は(周年明け最初の新規イベントということもあり)トップクラスに高まっていただろう。

あまりにも良い

サオリの登場

言うまでもないがサオリの登場は本イベントの目玉であり、エデン条約編の最後に撒かれた伏線を回収している。同じ敵役としての登場でもエデン条約編でのシリアスな描かれ方と今回のコミカルなサオリでは印象が大きく異なっており、その違いを楽しむことができた。

透き通るような世界観で送る学園RPG
背中で魅せるガンガールRPG

気になった点

各要素を生かしきれていない

今回は「オペラ」「ギャング」など面白い要素が含まれていたにもかかわらず、それらの要素がプロット面で生かしきれておらず、いわば雰囲気づけに留まっているような印象を受けた。
例えばオペラに関しては実際の公演の様子や出演者の台詞は登場しない。調査に来たという先生も具体的な話は一切しない。オペラ要素が話の展開に影響を及ぼすこともないため「オペラ」という要素はこのシナリオにおいて代替可能なレベルでしか重要性を持たない。おそらく「オペラ」という要素を「事業説明会」「南の海でのバカンス」に置き換えてもほぼ同じ物語は作れただろう。物語においてひとつの要素がひとつの目的(今回では雰囲気づけ)にしか貢献しないというのは勿体ない。特に尺の制限が厳しいソシャゲでは尚更だろう。

ギャングにおいても同様で、「ギャング連合のボス」という大物を登場させた割には特にギャングのボスらしい描写も見当たらず、大勢の部下を引き連れている、大勢から恨まれているという程度でしかその要素を感じ取れなかった。これなら「悪徳企業の社長」という設定でもほぼ同じ物がた(ry
別に置き換え可能だから駄目という訳ではないが、世界観の深さという点での面白さを引き出すことはできていない。

また先生の仕事を便利屋が手伝うという約束に関してもその後便利屋の面々がそうした行動を起こそうとした描写や先生自身も何としても仕事をしなければならないと努力する描写がなかったためBDを作るという仕事がどの程度重要なのかが読み手に伝わりづらく、そのせいで地下に逃げたサオリを追いかける際の問答にあまり重みを感じられなかった。

いくら生徒が最優先とはいえ犠牲に対する先生の痛みを感じられる、あるいはそれを
アルが想像するのを(読者が)想像しやすくなるような描写がもっと欲しかった。
だがこの辺りは先生に対する解釈によって感覚が異なるかもしれない。

ちゃぶ台返しが多い

今回のシナリオは主人公側の意図や行為が物語の進行に影響を与える場面が非常に少なかったように感じた。

  • アルによる先生の誘導→失敗

  • 観客の照合作業→リストそのものが意味なし

  • 怪しい人間の捕縛→結局大規模なドンパチ発生

  • 爆弾の押収→最後に爆発

  • ドンの確保→爆発で失敗

極言すれば今回の騒動において便利屋はいてもいなくても結果は変わらなかったと言える(彼女らがいなかったらサオリがドンを袋詰めにすることはなかったが結局爆発は発生しただろう)。また、ただ失敗するのではなく成功した上でそれがパーになるというちゃぶ台返しの展開が多かった。
これが最後の爆発だけならともかく話の途中で何度か配置されているため便利屋が何かを成し遂げたという感覚が薄まっている。つまり行為と結果の観点から見たとき物語におけるそれぞれの出来事の価値が希薄化しており、疾走感はあるが達成感が薄いシナリオとなっている。

これ自体は今回のテーマが「こういう日もある」だから行為が徒労に終わる描写の反復はテーマに沿っているとも言えるが、これが要素を生かしきれていないという点と相まって物語全体が薄っぺらいような印象を与えてしまっている。これは私見だが、ちゃぶ台返しや爆発オチなどのデウスエクスマキナ的な解決はそれまでに緻密に物語を作りあげることで混迷を極めた状況が予想外の出来事によって一気に解決することでカタルシスを感じられるのであり今回のようなキャラを見せることを重視したシナリオには適していないようにも思われる。
つまるところ「こういう日もある」というテーマから面白さを引き出しきれていないことが根本なのかもしれない。例えば前述の通り積み上げたものぶっ壊していく方で面白さを生み出すか、もしくは大枠では徒労に終わったがほんの些細な部分で物事が好転したことを描く方法が考えられる。後者は今回アルが新たに得たものとして尊敬する人(サオリ)からの肯定的な評価があったので、エピローグでそこを強調するというのがあるだろうか。(少々手垢にまみれた展開にも思えるが)

終わりに

冒頭の映画っぽい演出とラストの「こういう日もある」という徒労感、それらとオペラ、ギャングなどの要素の雰囲気はかなりお洒落で良かったが、その期待値に対して話の作り込みが足りていなかったように感じる。これにはサオリの登場によりそちらに文字数を割かなければならなかったというのもあるだろう。これはこれで楽しめたのだが個人的にはもっとギャング連合の格を高めてバチバチに対決してほしかったというのが本音だ。

ギャング連合をもっと強大な組織として描いていたらまた別の機会で今度はギャング連合が中華マフィアがモチーフの玄龍門とひと悶着、なんてのも出来たかもしれないと考えると今回限りの敵役として処理されたのは少々勿体ないように感じた。だがサオリの登場などもありキャラを愛でるという点で今回のシナリオはかなり強かったので全体的な満足度はそこそこ高かった。

今から復刻時のキャラ実装が楽しみ。個人的にはムツキ(スーツ)だと嬉しい。望み薄だけど。
何なら着せ替え機能実装してもええんやで^^


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