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狭間の住人01
時は2016年。
新宿のイベントに参加する下娘に付き添う為、上娘と3人で出かけた。
私と上娘は時間を潰すため、紀伊國屋の中をふらふら。
上娘が見たいという構図、デッサン関係の本の辺りで声を掛けられた。
「おい」
脳内に図太く響く声
(…ん?誰ぞ?)
声のする方に視線を上げると…。
ぽわぽわと浮かぶ龍…
「俺の声聞こえる?」
(うん…)
そう答えながら、私の口元が弛んでいることに気がついた。
龍に出会えるなんてそうそうない…にしても、小さくて可愛すぎる。
そんなやりとりを見ていた上娘は、スッと違う本のコーナーへ向かう。
普段から、私が1人で話したり驚いたりしている姿を見ている娘達にとって、私のこの行動が突拍子無いものではない事に感謝したのは言うまでもない。
そんな私の脳内の言葉は気にならないのか。
小さな龍は話し続けた。
「ねぇ。なにかお願いしたいこと…ある?」
(どういうこと?)
「ん?気が付いてもらえたから。」
(そうなの?
そんな理由でいいの?)
「うん」
(そうか…そうしたらね…
自分ができることを明確にしてそれを仕事にしたい…かな)
「それでいいのか?」
(うん。)
「わかった。後悔するなよ。」
と言ったと同時に、小さな龍は私の頭のてっぺんから入ってきて、螺旋を描くように体の中をグルグル回ってお臍の下からシュッと出てきて
「3ヶ月後な」
と言い残しどこかに飛んで行った。
なんなん??と思いつつも
(え?3ヶ月後って言ってた?何が起こるの?)って内心わくわくした。
ふと視線を目の前の本棚の脇に向けると、上娘がチラリと本棚の影から覗き込んでいた。
「…お話終わった?」
「あ。うん終わったよ♪
有り難う。」
その後、下娘と合流し3ヶ月後が楽しみで仕方ない私だったけど、日常に流されて小さな龍のことを忘れていった。
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