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それなりに いいひと

これは、女性5人組バンド、
PRINCESS PRINCESSの曲のタイトルだ。

小学校2年生から始まった、いじめ。

誰も助けてくれない中、4年生くらいに
なった時、この曲と出会った。

当然よ 私は 無関心
それなりに 泣き虫のつもりだけど
当然よ クールで 個人主義
ばかばかしいね わたしは
わたしなんだもん
それなりにいいひと/PRINCESS  PRINCESS

ストン、と、腑に落ちた。

いじめられて、泣くのはいつも、
帰り道だった。

でも、この曲を聞いたら、
本当に、馬鹿馬鹿しくなった。

私は、私なんだもん。

みんなの中に入れなくても、
みんなに染まれなくても、
私は、私。

それから、私は、
休み時間も、何をされるかと、
ビクビクしなくなった。

いつも通り、家から持参した本を読む。

何を言われても、無視。

それまでは、
『それなりに』
言い返していた。

しかし、それもやめた。

馬鹿馬鹿しくて。

人をいじめることで、自分を保つ。
馬鹿馬鹿しくて、可哀想な人達ね。

そう思っていた。

すると、いじめる方は、面白くない。

それまで、私から、何かしらの反応があり、
それを楽しんでいたのだから。

何とかして、私に反応させようと、
ある時は、読んでいた本を取り上げられた。

私は、スッと立ち上がって、

『その本、欲しいなら、あげる。うちには腐るほど本があるから』

と、無表情で、冷たく言った。

我が家には、父の書斎があって、
何百冊以上の本があるような家庭だった。

誕生日プレゼントは、毎年、本。

実際、その一冊を取られても、
私は困らないのだ。

今までと違う反応をした私に、
いじめっ子達は黙り込んだ。

それまでは、
「ちょっと、やめてよ…」
と、言うのが、精一杯。

ところが、私の反応が、
いつもとまるで違う。
自分達を、恐れていない。

私は『それなりに いいひと』を聞いて、
本当に、心の底から、
いじめって馬鹿馬鹿しい、と思った。

この曲と出会ったから、その後も続く、
長い、いじめられっ子生活に耐えられた。

歌詞を書いた、キーボードの、
今野登茂子さんも、
バンドメンバーとの共同生活が、
辛かったそうだ。

元々は、オーディションで、
バラバラに集まった5人。

すぐにハワイ合宿に連れて行かれ、
当時の事務所スタッフから、
厳しい指導を受けることになる。

音楽は、音が苦。

そう教えられたそうだ。

『赤坂小町』として、デビューした後も、
無理やりメンバーの髪を切るなど、
事務所のやり方に不信感を募らせていった、
5人。

ようやく、その事務所を辞め、
理解ある事務所に所属した。

そして、PRINCESS PRINCESSとして、
再デビューし、ブレイクした。

今野さんは、意識的に、
前事務所の頃の記憶を頭から消した、という。

あまりに辛すぎて。

消せるものなら、私も消したいが、
そうもいかないのだ。

いじめられていた、11年間の記憶。

消せないから、私は、PRINCESS PRINCESSの
『それなりに いいひと』を聞く。

『それなりに いいひと』
作詞:今野登茂子
作曲:奥居香

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