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雨の日はドラマティックに


初めて会った20歳のこうくん。


〝遅くなってごめんなさい。怒ってる?“

ううん、怒ってないよ。

〝ほんとに?“


高身長のアイドルみたいな顔とイケボで私を見下ろしているのに、ちょっと肩はすくんでいる。

遅刻してLINEで私に怒られて、急いできたからどこかに傘忘れてきちゃったって。


話しながらランチをした時間は2時間。


すぐに帰すのも、まだ雨が降っているしどうかと思って、迷ったけれど聞いてみた。


「うち来る?」

〝行く“


駅からタクシーに乗ってさっき初めて会ったばかりの男の子を部屋に入れた。

部屋で2人きりになったからと言って、何をするわけでもなくテレビを見ながら普通に話していただけだ。

何時間話していただろう、、

こうくんにはその気がないと思って、帰りたくなったら送るから言ってねと何度も伝えた。

その度に彼は置いてあったクッションを抱えたまま

〝うん、大丈夫“

と答えた。


時間は夜も遅い時間。

立ち上がったこうくんの仕草が、なんとなく忙しなく感じたから私も部屋を出る準備を始めた。

窓の近くに立った彼のすぐそばに行って、鍵がかかっているかを確かめてからカーテンを閉める。

こうくんはその場所から動かなかったから

〝ほんといいにおい。その香水“

そう言って顔を覗き込んでみたんだ。

やっぱりその瞬間抱きしめられて、こうくんの心臓がドキドキしてる音が伝わってきた。

若い子って体温が高いのよね。

まだハタチだもん。子供体温って言うのかしら、、温かくて安心する。

身体を少し離して背の高い彼の顔を見上げたら、マスクを外すしてキスしてくれた。


ずっと触りたかったのを我慢していたせいか延々とお互いの唇を貪っていても、全然止められない。

こうくんは

〝まだ帰りたくない。一緒にいたい“

そう言った。


ラグの上に寝転んだ私の手首を頭の上で掴んでキスしながら、かわいいって言うとか、一体どこでそんな事覚えてくるの。

暗くした部屋で見下ろされながら、私も彼の目元にかかる揺れる前髪を見ていた。



名残惜しむように身体を離して外に出たら昼間からの雨はすっかり止んでいて、

この日は本当にこんな事になると思っていなかったから、思い出すと夢を見ていたみたい。


雨の日は秘密を隠してくれるから、

ドラマティックな事が起こりがちな気がするよ。



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