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定期ゲームソフトレビューその2 TRUE REMEMBRANCE ~記憶のかけら~

某所で更新予定だった定期ゲームソフトレビュー企画をこっちに移行して再開します。
(そのため、「定期ゲームソフトレビューその1 想い出にかわる君 〜メモリーズオフ〜」がnoteに無いのは仕様です。)

今回は3DS黎明期に低価格で配信されたノベルゲーム「TRUE REMEMBRANCE ~記憶のかけら~」について書いていくぞ!

TRUE REMEMBRANCE ~記憶のかけら~
発売元: アークシステムワークス
機種: 3DS(ダウンロード専売)
ジャンル: ビジュアルノベル
価格: 519円
配信日: 2012年2月22日


概要

元々は里美しば氏が2003年5月に公開したフリーゲーム。2006年にはリメイク版も制作された。

悲しい記憶に心を縛られてしまう「セツナ病」の人々を、その記憶を消す事で癒す「記憶封士」。主人公であるクロメは記憶封士としてセツナ病をわずらった人々と触れ合い、治療する日々を送っていた。
ある日、客としてやってきた不思議な少女「ラ」と邂逅したことで、クロメの運命は大きく動き出す…。と言うのがあらすじ。

そんな本作の実況動画を見たアークシステムワークスのディレクターが3DSへの移植をしたいと里美氏に直談判。イラストやBGMを変更したリメイク作として発売されるに至った。

また、オリジナル版にない追加要素として、本編の後日談に当たる追加シナリオ「カプリッチオ」も収録されている。


評価点(良いところ)

少し無愛想なクロメと、無邪気な少女「ラ」の触れ合いは見てて暖かい気持ちになる。
相手と触れ合うことが記憶封士の基本的な仕事なので、描かれる場面も日常シーンが多い。カフェに行ったり、一緒にゲームを遊んだり…。ラの見せる無垢な笑顔と、ふとした瞬間のどこか冷めた表情。彼女と向き合う内に、記憶封士であるクロメも彼女によって癒やされていることに気づく。
短編ながらも、緩やかな感情の変化が上手く描かれたストーリーは見どころのひとつ。大きく物語が動く後半もこの日常パートがあるからこそ説得力があったと思う。


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ヒロインの少女「ラ」。色んなことに興味を持つ、無邪気だけど、どこか不思議な女の子。
男勝りな口調も特徴的。


主人公たちが住む街には他のセツナ病を抱える人々と記憶封士も住んでいる。そんな彼ら彼女らとの出会いと別れも本作の魅力。
セツナ病が治癒した人は街から去らなければならない。例えどんなに信頼関係を築いていても医師と患者の関係みたく、いつか別れがやってくる。
それを不思議に思うラと、達観しているクロメ。
本編中のネタバレになるので詳しくは記載しないが、本作の世界観も非常に魅力的で、クリア後は味わい深い余韻が残った。


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画面構成は上画面にイラスト、下画面に文章表示となっている。サウンドノベル形式のゲームにあるあるな、文字が邪魔で後ろのイラストや背景が見にくい、という事態にはならないのは何気に嬉しい。


なにより、本作独自の魅力はオリジナル版から描き直されたイラストと後日談にあるだろう。

イラストは「光の魔術師」とも呼ばれるイラストレーター「VOFAN」氏が全編担当している。
追加シナリオも原作者の里美氏による書き下ろしである。

淡いタッチのイラストは作品の雰囲気にぴったりだし、オリジナル版からのファンにとっても追加シナリオは待望だったのではないだろうか。
後日談ではあるが、ネタ要素が強いので過度な期待は禁物。それでも筆者は後日談が読めて非常に嬉しかった。


問題点(悪いところ)

元々はフリーゲームだからこその問題点であるのだが、少し割高に感じてしまう。
追加シナリオこそあれど、本編の文章は丸々オリジナル版と一緒である。ノベルゲームの移植なのだからそれで問題はないが、追加シナリオとイラストに500円弱払えるかは人によるだろう。

せっかくのVOFAN氏による新規イラストもハードスペックのせいで荒い画質になってしまっているのも勿体なく感じる。これは3DS黎明期であることも関係しているとは思うが…。

オリジナル版からそうだが、選択肢もない一本道のゲームなのでクリアするのにそこまで時間はかからない。ただ、元からそれなりにボリュームはあり、500円のゲームとしても結構な満足度は得られると思う。


総評

元々が無料だからこそ割高に感じる部分もあるが、イラストやBGMの一新に追加シナリオまで入って519円は安過ぎるイメージがある。
どこか淡い世界観と、心に傷を抱えた少女を癒そうとする無愛想な青年が描く物語は未だに心に残っているし、だからこそ今になってもレビューを書きたくなる魅力があるんだと感じる。

今からでも3DSを引っ張り出して遊んで欲しい。文量も多すぎないのでノベルゲーム初心者にも勧めやすいし、かと言って少なすぎるわけでもないのでクリア後の満足感もある。

みんなも心を癒されに行こう!記憶消されるけど!

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本当にイラストのクオリティは高いので、500円の画集を買う気持ちで買ってもいいかも…。



参考文献

https://www.nintendo.co.jp/titles/50010000009124
任天堂公式サイトの紹介。紹介文を一部引用しました。

https://www.arcsystemworks.jp/arcstyle/true/index.html
発売元であるアークシステムワークスの公式サイト。ゲーム概要の項目を一部引用しました。

https://s.inside-games.jp/article/2012/02/22/54710.html
インサイドに掲載されたプレスリリース。使用画像は全てこの記事からお借りしました。


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