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「ハニカミ担当者くんと大胆不敵なあたしの小さな恋の物語り。」

〜雨は夜更け過ぎにぃ〜雪へと変わるだろぉ〜
って、クリスマスツリーに想いを馳せてます!



街はすっかりクリスマスムードね。
この時期はちょいとおセンチになるわ、あたし。

必ず想い出す出来事があるのよ。

それは・・・


「ハニカミ担当者くんと大胆不敵なあたしの小さな恋の物語り。」はじまりはじまり〜




色々なことやってきたのよ。
ほんと、色々。



あたしの人生は彩り豊か、

原色もあればモノトーンもある、
淡い色もあって、深い色もあり、

キャンバスに全部の絵の具をとっ散らかしたような日常で、
時にはインクの壺につまづいてぶち撒けたり、

何度も色を重ねて重ねて
あたしの人生は出来てゆくのですわ。  



〜夜の蝶を卒業して嫁ぐまでの間は
色んなことをやってた。

あたしはプロのホステスを長年やってたのだけど、何だかそれだけじゃつまらないなって思ってねぇ、

興味のあることは片っ端からやってったわ。


その中のひとつが"デコレーター"

デコレーターってさ、
ケーキとか作りそうなネーミングなのだけど、
まあ、お店とかの装飾をね、やる仕事です。

ショーウィンドウとか飾るのもデコレーターのお仕事よ。

百貨店のウィンドウから駅構内わずか20cmの隙間まで、そりゃあんた、色んなところ飾ってきたわな。


資格?
そんなもんある訳ないやないか。


〜こんなこと出来るか?って聞かれて
出来ますって答えて、
それが仕事になる〜

あたしの仕事のだいたいはこんな感じで始まります。

世の中を舐めてるわよね?


そんでもお仕事はバッチバチに決めますわよ。

"出来る"を掲(かか)げた時からプロになるってもんです。

なんだってそうよ?
掲げちまえばコッチのもんさ。

その瞬間から
あんたも、あたしも
その道のプロになるってもんよ。


デコレーターはその最たるもんだったわ。


タレントをやってた頃の人脈を使って
イベントにモデルやらコンパニオンやらを派遣する仕事を立ち上げたのは二十歳の頃、

その日も謎に仕事が忙しく
コンパニオンが足りなくてさ、

しゃーなし、自分で自分を派遣した先は
PARCOの特設会場の小さな展示会。

クライアントは店舗設計や施工をする会社。

少し人見知りで親切な担当者は
毎日、締めの作業を手伝いに来てくれてた。


その日もいつものように作業をしていたら、

「すさみさんところは、デコレーターも派遣できますか?」

モデルやイベントコンパニオン派遣の事務所に
トンチンカンな質問をしてくるハニカミ担当者くん、コラコラぁーって感じよね?全く。

でもほら、そこはそれ、

「あたし出来ます!」

あたし、自信満々で答えたったわ!


えっ?デコレーター経験?
んなもんゼロよ?

でも、側で見たことはある!

まぁそれも知り合いの紹介でさ、
店舗デザインの事務所に1ヶ月だけ丁稚奉公をしてたことがあってね、
デザイナーのアシスタントという名のパシリをやってたのよ。

その時、センセが店舗をデコレーションしてゆく様子を見てたの。

人生って何が役立つかわからないものよねぇ。


ってんで、「出来ます!」って答えたの。


出来るわよ、あたしなら!
いつだって根拠のない自信に満ち溢れてるのが
あたしよ!


さてさて、
そんなこんなでデコレーターとしての初仕事の日、

PARCOの何か偉い人とか、
デザイナーの人とか、
何でか知らんが皆んな見に来ててさ、


もう無我夢中の竹脇無我よ!

あたしはプレッシャーにはべらぼうに強い、
見られれば見られるほど輝きをますのよ、うふふ。

20歳のあたしは、この道40年のベテランのような風格でもって、この仕事をやり遂げたわ。


「〜風味を出す。」
あたしの得意技よ。

ビビったら負けなのよ。
何でも自信持ってやるの。

そうしたら周りもそんな風に見えてくるものなのよ。

ハッタリかどうかは
クライアントが判断するわ。

あたしはこの試合、勝ちに行ったのよ。

その結果、
"大絶賛の嵐!"
・・・とまではいかなかったけど、
偉い人にもデザイナーにも
どうやら気にいられらみたいだわ。

そこからは、PARCOの専属デコレーターなんてのを2年ほどやったんだもん、大したもんだと褒めて欲しいくらいよ。


デコレーターをやってた2年間は
とても充実していたの。


当時あたしには9つ上のWebデザイナーの彼が居たの。

彼のオフィスPARCOから近かったもんだから
デコレーションの度に覗きに来てたわな。

あん、もお、
どんだけ好きなのよ、あたしのこと。

行動とは裏腹な男でクールを装ってたわな。
そんなことしてもお見通しだぞぉ〜

「あの人は、すさみさんの彼氏ですか?」

ハニカミ担当者くんがそんなことを聞いてきたわ。

だからあたし、キッパリこう答えてやったわ。
「いえ、違います。」

・・・・・?

だってだってぇ〜
ハニカミ担当者くんてば、
ちょっといい感じなんだものぉ〜

そのくらいは嘘ついた内に入らないから
地獄には堕ちねぇのよ。


「そおなんですね!」
おいおい〜あからさまに嬉しそうにすんなし〜


とは言えとは言え、
ハニカミ担当者くんのほうには
学生の頃から付き合ってる女がいたそうな.....


「彼女はどんな人なんです?」
そんな風に聞いてみたの、あたし。

「今、喧嘩中で・・・」
そんなこと聞いてやしねぇのにさ、うふふ。

何かよくないすか?これ?
アオハルじゃないすか?この展開?


そんな感じで
二人の間には常にカリフォルニアの風が吹いていたわ。

そうよ、カリフォルニアよ。

それなに?とか聞かないで。
何となく察して欲しいわ。


10月の末ごろ、PARCO前に
大きな大きなクリスマストゥリーを設置することになったの。

クリスマスPARCOのシンボルのようなトゥリー装飾のお仕事、あたし嬉しかったわ。


デコレーターの仕事は
全ての設営が終わった後に行われるの。

なのでスタートはいつも
3時〜オープンまでの間とかなのよね。


でも、ちっとも嫌じゃなかったわ。

朝までハニカミ担当者くんと
カリフォルニアの風を感じていられるのだものね。

ガヤはいたけど、気にならない二人だけにわかる二人だけの世界。
外は寒いけどあたしたちはホットだった...

どお?キショい?

あ、いいのいいの、気になさらないで。



バカでけぇトゥリーに試合を挑んだわ。

長い人生の中で
あんなに高い脚立に乗っかったのは
後にも先にもあの時だけよ。


落ちてもきっと大丈夫。
だってハニカミ担当者くんが受け止めてくれるから...なーんてこと考えてる余裕あると思う?

寒さと恐怖で笑う膝を必死でなだめて作業したわ。

ねぇ、知ってる?
膝って本当に笑うのよ?


テッペンに星のリースを取り付けたとき、
あたし、感動してさ。

泣きゃしなかったけど、ジーンときたわね。


お疲れ様でしたーー!


自然とおこる拍手の音は
早朝の空に響きながら溶けてったわ。


「送りますよ、俺。」

ハニカミ担当者くんのお申し出、
断るわけないぢゃん!

あの時の車の中で飲んだ缶コーヒーの温かさは
忘れないわね。


車の中で色んな話しをしたわ。

お互いレゲエが好きなこと、
学生時代の友達のこと、

照れながらゆっくり静かに話す彼を
あたしもゆっくり好きになっていった。


その時もおお互いのパートナーのことなんか
ぶっ飛んでたわな。


次の日、トゥリーのことで
PARCOから連絡があり、すっ飛んで行ったわ。


現場に到着したあたしは言葉を失った。


バカデカいクリスマストゥリーが
忽然と姿を消していたのよ。

信じられる?

持ち去られたのよ?

関係者は皆んな天を仰いでいたわ。

すぐに警察やら何やら来てね、
同業者の仕業じゃないかと色々調べたのだけど
結局わからずしまいだった。

悔しかったなぁ......


みんなも同じ思いだったに違いないわ。


そんな時、ハニカミ担当者くんがあたしの側に来てこう言ったのよ。

「あのツリーがあまりにも素敵だったから、思わずパクらずにはいられなかったんでしょうね。」


あたしの頭の中でジングルベルが鳴ったのは
言うまでもないわね。


それが、元旦那と結婚を決めた瞬間だったのかも知れないわね。



この季節になると思い出すのよ、あの頃のことを。


〜優しくて、ハニカミ屋の担当者くんと、
大胆不敵なあたしの小さな恋の物語り。





























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