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Here

Bas Devos監督作品『Here』を観ました。
本当に素敵な映画でした。始まりの音から終わりの文字まで、監督の静かであたたかい世界でひたひたに満たされているようでした。

空白の満ち足りた時間に森の中を歩くと、自然と電車の音が聞こえなくなったり、苔を見つめていると、世界が収縮され時間が消えたように感じたり。そんな感覚が音で表現されていて、音がとても大切に扱われているのを感じます。
食べ物を分け合って時間を分かち合ったり、名前を知りたいと思うと見えなかった世界が近付くのと同時に、だれかと近付いても名前を知らないままでいられる豊かさ。自分と世界の距離感がたくさんあることが、映画に奥行きをもたらしていてその懐の深さに安らぎを感じました。

森からの帰り道「寒くなってきた」と上着をはおる彼はまた自分の世界に戻りかけていたけど、靴紐を結び直した彼女の手を取ることで新しい世界との繋がりを取り戻し、雨が降って世界に蓋をした。あのシーンがとても好きです。

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