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\副業は人材流出リスクを高めるか①/

近年、企業・個人ともに副業に対する関心が高まっています。
一方、雇用主の方からすると、人材流出を懸念する声もあるようです。

そこで本稿では、
・副業が広がったきっかけ
・副業はどのくらい広がってきているか
・雇用主は何を懸念しているのか
・副業は人材流出につながるのか
の4つに分けて解説したいと思います。

初めに「副業が広がったきっかけ」について、少し長くなりますが、近年の国の動きを見ていきます。

平成28年8月、「一億総活躍」の旗印のもと、新たに働き方改革担当大臣が設けられ、「働き方改革実現会議」が開催されることとなりました。
全10回開催された同会議のうち、第2回目に副業を含む「柔軟な働き方」がテーマに取り上げられます。

同会議において、㈱日本総合研究所の高橋理事長より、次のとおり意見がありました。

・一人一人がみずから望む働き方を実現できるよう、正社員化、労働時間規制、テレワーク、フレックスタイム、兼業・副業などを推進すべきです。
・副業を希望する者は、近年増加しております。低所得層と男性の中高所得層で兼業・副業の意向を有する者が多く見られます。このうち後者については、企業の中には兼業・副業を容認する動きもありますが、まだごくわずかです。
・キャリアの複線化、能力・スキルを有する人材の活躍の場を拡大すること、大企業人材の中小企業での就業促進などの観点から、積極的に兼業・副業を促進すべきだと思います。
・その際、兼業・副業の場合における総労働時間の把握や雇用保険の適用関係など、必要な環境整備について検討して、ガイドラインを示すべきではないかと思います。

また、東京大学社会科学研究所の水町教授からは、次の意見がありました。

・兼業・副業につきましては、第1に、これまでの裁判例や学説の議論を参考に、「使用者は競業行為や本務への支障などやむを得ない事由がない限り労働者の兼業・副業を制限できない」というルールを法的に明確にすること。
・第2に、複数の仕事で生計を立てている人が社会保険に加入できないという状態をなくすために、社会保険の適用要件において労働時間を合算することを検討すべきだと思います。

どちらも、副業を推進する方向でコメントがされています。
一方、東京大学大学院法学政治学研究科の岩村教授は、次のように意見されています。

・労働者の副業・兼業に関しては、大多数の就業規則にある副業・兼業禁止規定の合理性を一概に否定することはできないように思いますし、本業と合わせたトータルの労働時間の規制も、その実現には困難が予想されます。
・副業・兼業を行う労働者の、その副業・兼業に関しての社会保険や労働保険の適用の可否は、制度の根幹にかかわる問題でもありますので、まずは基礎的な検討をしっかりと行った上で、それをベースに慎重に議論を進めることが適切だと考えています。

このような慎重な意見も受けつつ、平成29年3月28日働き方改革実現会議にて策定されたのが「働き方改革実行計画」です。
次回は、この内容を見ていきます。

〈副業は人材流出リスクを高めるか②に続く〉

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