とある会話から生まれた物語ー01(前編)

『アンパンおばさんとバイキンおじさん』前編

ボクの住んで居る町には、地元で有名な人が2人いる。

いつものように小学校から帰る途中、公園のベンチにその1人が座っている。
普段は公園には入らずに帰るんだけど、今日は体育で疲れたから近道をしたくて公園の中を横切る事にした。

アンパン「あらあら、今帰り?」

やっぱり話しかけられた。

ボク「はい、そうです」
アンパン「学校どうだった?」
ボク「いつも通りです」
アンパン「そう、大変ね」
ボク「・・・」
アンパン「はい、これあげる」

そう言ってベンチに座っていたおばさんはボクに某最近5個入りから4個入りに減らされたアンパンを一個手渡しでくれた。
このご時世に、手渡しで。

ボク「ありがとうございます」

ボクはアンパンを受け取った。
本当なら貰ってはいけない類のもの。
たまに公園で会うだけのほぼ知らない人からの手渡しのアンパン。
しかもボクは下校中。食べ歩きは校則で禁止されている。
でも、ボクはアンパンを受け取った。
以前受け取らなかった時、おばさんに家まで付いて来られそうになったから。
これはボク以外にもほとんどの子供が経験している。
それ以来ボクは受け取ることにしているし、だいたいの子供はそうしている。
そしてボクはアンパンを食べた。
食べたのはただお腹が空いていたから。それだけ。

ボク「ごちほうさはでしは(ごちそうさまでした)」

飲み物がないから、上手くアンパンが飲みこめずボフボフしてしまった。
さて、ボクは飲み物を求めていそいそと帰宅することにした。

なのに、今日はタイミングが悪くもう一人の有名人が現れてしまった。

バイキン「私にもアンパン下さい」

ボロボロの身なりのおじさんがおばさんに話しかけてきた。
おばさんは手提げからアンパンではなくスプレーを取り出し、おじさんの差し出した手に吹きかけた。

シュシュシュシュシュシュシュ!

そして湿っているおじさんの手の上にそっとアンパンを乗せた。


つづく。

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