とある会話から生まれた物語ー01(後編)
『アンパンおばさんとバイキンおじさん』後編
おじさんはアンパンを両手で包み込みおばさんにお辞儀した。
バイキン「ありがとうございます!」
そしてボクの方を見て勝ち誇った顔をした。
なんかむかつく。
別に羨ましくなんてないのに。
このおじさんは得している人間が嫌いなのだ。
可愛いからって一個おまけしてもらえる女性も。
クーポンで賢く買い物している主婦も。
ティッシュを受け取るサラリーマンでさえも。
中でもおばさんからアンパンを貰っている人間が特に嫌いなのだ。
おじさんは湿ったアンパンを勢いよく食べた。
そしてもう一度おばさんに手を差し出した。
アンパン「一人一個」
おばさんはおじさんの手を叩き落とした。
あぁ、始まってしまった。
バイキン「ありがとうございます!ありがとうございます!」
アンパン「いつもいつも気持ち悪いのよ!」
おじさんは自分の手を払ったおばさんの右手を両手で握りながらお礼を言った。
それに対しておばさんは左手に持ったスプレーをおじさんの手に吹きかけ続けた。
シュシュシュシュシュシュシュ!
2人の手が水浸しになっていく。
それでもおじさんが手を離さないので、おばさんはスプレーをおじさんの手に叩きつけた。
手を押さえてうずくまるおじさん。
それを冷めた目で見つめるおばさん。
その視線を感じて喜ぶおじさん。
うん、帰ろう。
ボクは二人に気付かれないようにそっと帰ることにした。
ボクの住んで居る町には、地元で有名な人が2人いる。
1人はすぐにアンパンを渡してくるアンパンおばさん。
1人はそのおばさんが好きだけど嫌われていて、嫌われていることすら喜んでいるバイキンおじさん。
二人のこのやり取りは町内では日常であり、有名なのである。
おわり。
standFMにて自分で朗読してみました。
興味ある方は↓こちらからどうぞ。
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