国境国者語(その1)

〈プロローグ〉誠暦十五年 十三月二十九日 「ねえ死生・・・貴方の耳たぶ食べても良いかしら?」 「うん、日身呼なら良いよ」          〈第1章〉誠暦二十二年 十三月二十九日 国境国連邦 天間王国 首都 天間京 あの日から7年がたち睦(ぼく)は十八歳になった そして睦は自分の歩む道を悩んだ末に選んだ そんなことを考えていると、睦の方にだれかが駆け寄ってくる足音が聞こえてきた 睦は考えるのを止めて足音が聞こえてきた方に視線を向けた 見てみると睦の方に女の子が近づいて来ていた


それもかなりの美小女だ その美小女は睦のそばまで辿り着くと息をひと息ついてから睦に声をかけてきた 「おまたせ致しました、死生(しき)お兄さま」小女は睦の妹で今年で十五歳になる「急に呼び出してしまってごめんね、生舞(いぶ)」「謝ることはありません 死生お兄さま、他でもない死生お兄さまの頼みなら生舞は何だって致します」「生舞そのコトバは本当だね?」「はい、死生お兄さま、何なりとこの生舞にお申しつけ下さい」本当に睦にはもったいなさすぎる妹だよ「睦のいとしい生舞、睦は決めたよ 自分の歩む道を」「死生お兄さま・・・やはり行ってしまわれるのですね」「驚かないんだね生舞?」「もちろん驚いてますけれど・・・いつかはこんな日が来ると思っていました」「生舞・・・ごめんね、重たい役目を押しつける事になってしまうけど、竜帝(たつみかど)の名は君が継いで欲しい、そして父さんや母さん達をその激務から少しでも解放してやって欲しい・・・頼まれてくれるかな?」睦の話を聞いた生舞は少しの間、考えていた様だけれど、やがて意を決っした様に口を開いた「わかりました死生お兄さま・・・お家の事もこの国の事も全てこの生舞におまかせ下さい」睦は驚きあわててロにする「生舞、なにも君がなにもかも全て背負いこむことはないんだよ、だから・・・」睦が次の言葉を口にしようとすると、それを遮る様に生舞が口を開く「良いのです 死生お兄さま、私はいつかこんな日が来ると思い、覚悟を決めていたのです 死生お兄さまはいずれ竜帝の名もこの国も捨てて、あの方のことを探しに行かれてしまわれると思っていましたから・・・ですので私の事はお気になさらず死生お兄さまはどうかご自分の道を歩んで下さい」睦はどう返事をして良いかわからず口を閉ざした そうしていると生舞が睦の右耳に視線を向けてから口を開いた「死生お兄さま、生舞はあの方にものすごく嫉妬しています・・・その耳の事もありますけれど何よりも死生お兄さまの心を射止めたことが悔しくて、悔しくて仕方ないのです」睦は生舞のその話を聞いてため息まじりに口を開く「はぁ・・・生舞には敵わないな、わかったよ家の事やこの国のことは君にまかせるよ、でも出来ればあんまり無理しないでくれ」生舞は睦のその答えに満足した様だったけど、ふと何かに気づいた様に自分の腕につけている少し大きめだけど可愛いらしい時計を見た そして生舞はあわててロを開く「死生お兄さま すみません、生舞はこのあと用事が入っておりますので失礼させていただきますね」生舞はそう言うと睦のそばから早足で立ち去っていってしまった 睦はしばらく生舞の事が心配で考えていたけど、生舞と同じように自分の腕時計を見て時刻を確認した 時刻は午前十時三十分・・・もうすぐ父さんと約束した時間になる 睦は考えるのをやめにした、考えても仕方ないと思ったからだ そして父さんのもとに向かうことにしたのだった 
天間王国 海空軍士官大学校 理事長室
コンコン・・・と睦は理事長室の扉を叩いた「失礼します」そう声をかけながら睦は理事長室の扉を開けた 中に入ると中央に並んだソファに二人の男性がテーブルを挟んで向かい合わせに腰掛けていた 睦から見て手前側のソファに座っている男性が振り向いて、睦の顔を見てから口を開く「待っていたよ死生・・・・・・生舞には会ったのかい?」「ああ 父さん、生舞は睦がどんな道を選ぶかわかってたみたいだよ」「ふふ・・・死生それは当然のことだよ、お前をよく知る者ならお前がどんな選択をするかなんてわかることなんだよ・・・・・・死生 あの子を探しに行くつもりなんだろう?」「ああ その通りだよ」睦がそう言うと父さんは真剣な表情になり口を開く「死生、おまえが歩む道はとても困難な道だよ・・・覚悟は出来ているんだろうね?」「ああ 悩んだけど・・・睦は彼女のそばに居ないとダメなんだ、だから覚悟なんてとっくにしてたけど改めて覚悟を睦は決めたよ、父さん」「そうか・・・なら行くんだな、あの国に?」「ああ、彼女を探すのならあの国に行くしか他に方法は思いつかないからね」「わかったよ・・・光将(みつまさ)、ほら俺の言ったとおりになっただろ」そう父さんは口にして自分の向かい側に座っている男性に少しからかう様な視線を向けた「こうなっては仕方がないですね、予想していた事とはいえ本当にその通りになってしまうとツライものがありますよ」「まあ そう落ちこむなよ光将、いちばん落ちこんでるのはマナの方なんだからな」「そうですね、赤の他人である自分よりも母親である妃殿下の方がツライはずですよね・・・」そうロにして光将とそう父さんに呼ばれた男性は顔に手をつけて押し黙ってしまった この男性の名は「檜矢 光将(ひのきや みつまさ)」と言って、この天間王国の海空軍士官大学校の理事長をしている 父さんはしばらく光将のそんな様子を眺めていたけれど、やがてまた睦の方を振りかえり口を開く「まあ そう言う理由だから死生、マナにはお前の方からよく話しておいてくれ、まあ説得するのは骨がとけるだろうけれどお前のためなら理解ってくれるはずだよ」そう父さんは口にすると睦の右耳の方に視線を向けた 睦は父さんのその言葉と視線を受けて少し重たい気持ちなった 睦のその様子を見て光将が父さんに声をかけた「優理・・・貴方も人が悪いですよ、それでもこの国を預かる長である国王ですか・・・」そう言って光将は父さんを注意した そしてむずかしい顔を父さんに向けた 光将が言うとおり睦の父さんは、この天間王国の初代国王で名前は「竜帝 優理(たつみかど ゆうり)」と言う「光将・・・そう言うなって、俺も鬼じゃないんだから・・・でもこればっかりは仕方ないだろ、何せマナは死生の事をそれぐらい大事で大切に深く愛してるのだからな・・・」それを聞いた光将は渋い顔になり、それっきり口を閉ざしてしまった「父さんも光将も睦のために気を使ってくれてありがとう、母さんには睦の想いを伝えて何とか説得して理解ってもらうよ」そう睦は父さんと光将に感謝を伝えて理事長室を後にした
 〈あとがき〉いかがでしたでしょうか?者語はここでひとまずおわりです この者語は近未来かもしれないですしまた別の星、別の世界、別の次元、別の時空かもしれない、でも確実に存在しないと言う形で存在する存在たちをこの者語の作者である自分(平逆 和睦)がとらえて形にした作品です ですので魂を込めて書きました それが多少なりとも伝わったら幸いです ここまで読んで下さり本当にありがとうございました。

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