見出し画像

自分で選択する人生への挑戦⑫~20年越しの夢をひとつ叶える~

プロローグ

白洲正子の「美の種まく人」を読んだのは私がまだ20代の頃だったと思う。
その中に出てくる川瀬敏郎さんが生ける花に、当時の私は強い衝撃を受けた。

川瀬敏郎さんの花は、私が今まで目にしてきたフラワーアレンジメントや華道とは明らかに一線を画しており、花も花器も空間もすべてが、その場所、その形でなければならないという明確な意思を持って存在していた。
「自分と花」。
その2つしか存在しない空間の中に一瞬にして連れて行かれるような圧倒的な求心力と、1対1で対峙しているかのような緊張感に、私は一発で魅せられてしまった。

「こんな花を生けることができる人に会ってみたい。そして実際にその作品を見てみたい!」」20代の頃そう思い始めてから20年近く経ったある日、仕事を辞め、時間を持て余していた私は、偶然にも川瀬敏郎さんの講座が東京で開かれるという情報を耳にした。
けっして安くはない受講料だったが、迷わず申し込みをし、キャンセル待ちを勝ち取り、私は1人東京へと飛んだ。

講座は全4回で、1回3時間半の長丁場だったが、1回受講しただけでその価格に値するくらい濃くて深い内容だということは門外漢の私にも明確に理解できた。。
川瀬さんの花に対するストイックな生き様と、花と向き合ってきた膨大な時間と圧倒的知識と経験、観察と鍛錬の積み重ね。
花の知識なんてまったくない私が受けるにはもったいくらいレベルが高く中身の濃い講義だったが、20年越しの夢が叶い、私はとてつもなく幸せだった。

1回目の講義は慌ただしい日帰り旅となったが、次回は1泊して、川瀬さんに縁のある白洲正子が愛した家「武相荘」も訪ねてみようと心に決め、夢が叶った高揚感に包まれつつ家路についたのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?