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リオレウスとリオレイアの形態進化   ー雌雄の形態差はいかにして生じたかー

 記念すべき?10本目の記事になりますので、やはりモンハンの看板モンスターについての考察を行いたいと思います。

 火竜リオレウス。爬虫綱 竜盤目 竜脚亜目 甲殻竜下目 飛竜上科 リオス科に属する飛竜であり、モンスターハンター第1作から最新作まで皆勤賞を果たしたシリーズを代表するモンスターである。本種のメス個体は、リオレイア(雌火竜)と呼ばれ、同種の存在ながら雌雄で明確に区別されている。

図1. 火竜リオレウス(上)と雌火竜リオレイア(下)
 リオレウスの体表は、赤色の鱗で覆われているのに対し、リオレイアの体表は緑色の鱗で覆われている。オスの体色は、縄張り内の空を徘徊する上での警告色、メスの体色は、森林を移動する上での保護色として機能する。リオレイアの第1指の付け根、背中、尻尾の先端には、棘が備わる。この棘はリオレウスの体表には認められない。

 リオレウスとリオレイアは、同種ながらその形態や生態が大きく異なるため、それぞれに固有の名前が与えられている。モンハンシリーズに登場する脊椎動物において、雌雄で明確に呼称が異なる種は、本種のみである。例外的に、産卵期を迎えたディアブロスのメス個体は「黒角竜」と呼称され、「角竜」の亜種として扱われるが、これはあくまで一時的な別称および分類である。

 ここでいくつか疑問が生じる。

  • リオレウスとリオレイアの形態的差異は、発生および成長のどの段階で生じるものだろうか。

  • また、進化を通して、リオレウスとリオレイアのどちらが先に出現したのだろうか。

  • 両種の形態はいかなる進化的経緯を経て、大きく異なったのだろうか。

 これらの問いは、モンハンをプレーした者なら誰しもは一度考えたことがあるにちがいない(私の偏見です・・・)。本稿では、幾多のモンハンプレーヤーの頭を悩ませたであろうこれらの疑問に迫ってみようと思う。

 まず1つ目の問いについてであるが、下の図を見てほしい。

図2. リオスの幼体
 本種の幼体の体表は赤黒い鱗でおおわれており、リオレイアに見られるような棘は認められない。幼体の形態は、オス個体であるリオレウスに類似している。写真内の3個体すべてがオス個体である可能性もある。本写真は、「pixiv百科事典」内の動画より抜粋。

 本種の幼体はすべてリオレウスを想起させる形態をしている。上図内の個体がオスとメスを含むと仮定するのであれば、本種は雌雄問わずリオレウスの姿で生まれ、成長が進むにつれて、メス幼体のみが成長とともにリオレイア特有の形態を備えるものと推察される。

 続いて、2つ目の問いについてである。1つ目の推察を踏まえたうえで、進化発生学的な視点で解釈すれば、おそらく、進化を通して先に出現したのはリオレウスであろう。1つ目の仮説に従うと、本種では、雌雄にかかわらずリオレウスになるための発生プログラムはすでに備わる一方、リオレイアになるための発生プログラムはまだ備わっていないことになる。これより、本種の進化では、雌雄ともにリオレウス型だった個体群の中から、リオレイア型の個体が出現したものと思われる。

 最後に、3つ目の問いについてである。なぜ、本種のメス個体はリオレイア型へと進化したのだろうか。これは本種の「視力の高さ」と本種特有の生態である「子育て」に深いかかわりがあると考えられる。
 リオレウスはその視力の高さを生かして、空中を飛行しながら徘徊および子守を行う性質があることが知られている。リオレウスに対し、リオレイアの緑色の鱗は保護色としてはほとんどもしくは全く機能しない。
 本種の進化の中で、空中ではなくより巣に近い陸上で偵察や子守を行う個体が出現したものと考えられる。これらの個体のなかから、森林に同化できる緑色の鱗と、空中からの外敵の攻撃に対する防御機構としての棘を獲得した個体がリオレイアとして進化したのかもしれない。
 陸上で行動するオス個体がリオレイア型に進化しなかった理由については、本種の繁殖行動と関係すると思われる。本種では、繁殖のためにオスがメスを探す性質がある。陸上にとどまって偵察を行うオスは、空中から偵察を行うオスと比べ、メスに巡り合える確率が相対的に低いことから、進化の中で淘汰されていった可能性がある。

 積極的に女性にアプローチできない男性が淘汰されゆくのは、どの生物も同じなのかもしれない・・・。


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