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山田君 不動産で世を渡る(プロになる)※宮城県松島のホテルで大失敗VOL6

俺は松島のホテルの事業化が見えない状態で、買おうとしている。このままじゃプロジェクト融資は受けられない。買いたくないのに買わなければならない。妙なプレッシャーがかかっている。

しばらくすると財務の課長から銀行からのプロジェクト融資は無理であるが、オリックスが融資に前向きであると伝えられた。

もう引くことはできない。今度は本当に買えるのか不安になってくる。一応売主は信託銀行に委任はしているが、ほとんどの場合は媒介委任の書面は交わしていない。おれは信託銀行に電話した。

担当者は、とりあえず買付証明を出してください。それで交渉します。と言った。

とりあえず買うことがマストになった俺は買付証明を作成した。その金額は5億円である。土地建物の取得費以外の経費は仲介手数料1500万円、登記費用300万円、解体費1億円、測量費用200万円の合計6億2千万円であった。
坪単価約25万円。これが高いのか安いのか。当時の東京の感覚からすれば安いと思った。というかこれだけが心の安定を保つ支えであった。

俺は5億の買付証明を信託銀行の担当者に渡した。その担当者に託すしかないのである。担当者は売主との交渉に入った。数日たって連絡があった。
5億2千なら行けそうです。

俺は5億2千に買いあがった買付を再び信託銀行担当者に渡した。2千万は大きいが坪にすると1万円程度である。不動産の面白いところはそういった大雑把な結構どんぶり勘定なところである。
なんとしても捕ってこなければならない。過剰な感情が俺を突き動かしていた。

5億2千万の買付を提出したところで信託銀行からの返事がピタッと無くなった。俺は毎日担当者に電話したが、担当者曰く、相手に何度も電話しているが電話に出ないという。信託の彼らにしては無理ならしょうがない、次の案件で行こうとできるが、こっちはそうはいかない。社長が獲ってこいって言っている。
俺は悶々とした日々を送った。




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