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山田君 不動産で世を渡る(プロになる)奴への鎮魂歌編


手積の麻雀卓

こうして雀荘と化した奴の部屋。麻雀の魔力に憑りつかれた我々は、最初は週に一回だったのが、週3回になる。
奴は強かった。麻雀は運の要素が高いゲームであるが、確率を追い求めた期待値の追及と精神力。奴は並外れた集中力があった。
県内でも有名な進学校であるが、麻雀の実力と反比例してテストの成績が落ちてゆく。地頭がもともといい連中だが、勉強しないとやっぱだめ。
中間テストや期末テストの前の1週間は、午後に休講になる。我々にとっては麻雀のゴールデンウイーク。

ある日麻雀をいつもの面子でやっていたら、突然奴の部屋のドアが音をたてて開いた。「お前ら、いい加減にしろ!」ガチで怒ったのは奴の姉ちゃん。3歳上の奴の姉ちゃんはかなり怖い。
 面子のなかに、いつもいる俺は、姉ちゃんのブラックリスト1位の栄光に輝いた。
雀荘を増やさなければやばい。かくして俺の部屋が新しい雀荘となった。

学校の帰り道に1軒の質屋があった。ウインドウの片隅に麻雀牌の姿がありいつも気になっていた。うーん。欲しい。欲しい。
価格は3千円。俺はおそるおそる店に入った。誰も出てこない。すみませ~ん。すると奥から爺さんが出てきた。高校生丸出しの俺の顔を怪訝そうにみて、「いらっしゃい。」
あの~麻雀牌が欲しいんですが。
あああれか。3千円だよ。
爺さんはウインドウから麻雀牌を取り出し、埃を払って渡してくれた。
ハイ3千円。俺は爺さんに3千円を渡すとカバンの中にしまい入れ、そっと店を出た。
そういえばうちの母ちゃん「麻雀は頭のいいひとの遊び」っていってたなあ。うちの親は進学校にいる俺がまだできる子だと大きい勘違いをしていた。
今度友達がうちにきて麻雀の勉強をすることになったよ。麻雀の道具は友達が持ってくる。
ああそうかい。こたつの裏側が麻雀卓みたいになっているよ。
母ちゃんナイスアドバイス。
こうして奴の部屋と俺の部屋が交互に雀荘となり、双方の家族のブラックリスト入りとなってしまった。

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