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招かざる訪問者との物語15

【新入社員研修 MRコンプライアンス研修 その3】

コンプライアンス研修の目的
新入社員MRのコンプライアンス意識の向上、知識の高度化、判断軸養成を目的とする研修。

今日のコンプライアンス研修agenda
①コンプライアンスとは?
②製薬業界におけるコンプライアンスの変遷
③一友製薬におけるMRが遵守するべきコンプライアンスについて
④グループワーク 事例検討
⑤総括

高山は、マイクを左手に握り、右手でパソコンを操作しながら、講義を始めた。
「皆さん、おはようございます。人事部人材育成グループの高山です。今日一日、皆さんと一緒にコンプライアンス研修を行います。
最初に簡単な私の自己紹介をします。」
会場の大きなスクリーンに高山は、自身の自己紹介を記載したパワーポイントを写しながら、会場の新入社員達に語りかけた。
「私は、今年55歳。この春、15年間の単身赴任生活を終えて、家族の居る東京に戻りました。現在、東京本社で人事部人材育成グループで、主にコンプライアンス業務を担当しています。
私の職歴はこちらに記載の通りです。MRとして勤務をスタートし、その後、営業所所長を務めました。述べ全国8ヵ所を渡り歩きずっと営業現場で仕事してきた者です。
家族は妻と2人の娘達、それから3歳になる愛犬と暮らしています。長女は27歳で会社員、次女は22歳で大学4年生で就活真っ只中です。」
スクリーンに私の家族写真を映しながら、高山は話しを続けた。
「皆さんと同世代の娘達の父親ですので、今の私は、君たちのご両親と似た想いを抱いていると考えています。
つまり一言で言うと、我が子が新たな環境に慣れ、社会人として毎日を楽しんで欲しいと願う想いです。」
会場に居る新入社員達は、少し緊張が解れた様子で、興味を示し高山の話しに聞き入っている。

高山は、そんな彼らの反応に一呼吸おいて、
「皆さんは、コンプライアンス研修と聞いて、どんなイメージを持ちましたか?高木美穂さん、どうですか?」
研修者名簿を見ながら尋ねた。
高木美穂は、突然当てられてビックリした様子で立ち上がり、少し顔を赤らめながら答えた。
「はい、私は、コンプライアンスと聞いて、会社がコンプライアンス違反をすると、大変なことになるという、少し怖いイメージがあります。」と答えた。
高木美穂の言葉に、会場の新入社員達も皆、頷いている。
「高木さん、答えてくれてありがとう。そうですね。コンプライアンスと聞いて、怖いイメージを持つ人は多いかもしれないね。皆さん、怖いイメージを感じている人は、手を挙げて下さい。」高山は、新入社員達に尋ねた。
会場の全員が一斉に手を挙げた。

つい最近まで大学生だった若者にとって、社会人として、コンプライアンスとは、あまり馴染みが無いのも当然かもしれない。
ニュースで見聞きするそれらの話題は、大抵の場合、企業の不祥事などが記憶にある人もいるだろう。社会から批判を浴びて会社のトップが謝罪記者会見などで糾弾される光景を思い浮かべると、とても怖い場面であることも頷ける。

ウィキペディアによると、企業コンプライアンス(英語: regulatory compliance)またはレギュラトリー・コンプライアンスとは、組織が、関連する法律、政策、および規制を認識しており、それらを順守するための措置を講じていることを確実なものとするための取り組みにおいて達成すべきことの目標を設定することを意味する。 [1]
現代においては、関連する法令等が増え、運用における透明性確保のため、組織にとって統合され一貫性あるコンプライアンス管理の必要性が高まってきている。 [2]この統合管理のアプローチは、リソースを不必要に重複させることなく、必要なすべてのガバナンス要件を確実に満たすために必要となることとされている。
(ウィキペディアより)

私も、このウィキペディア解説だけを読んで、コンプライアンス遵守をイメージすることは、凄く難しいことのように感じてしまう。

今日のコンプライアンス研修では、コンプライアンスとはどういうものを意味するのか?製薬業界や一友製薬のコンプライアンスについて、解説する。また、事例検討をグループワークで行い、当事者意識を持って正しい判断軸を確認し合うことで、現場第一線に配属された際に、適切な行動が出来ることを目指すことが研修ゴールだ。

高山は、新入社員達の表情を一人一人確認しながら講義を進めた。

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