小説「着物でないとっ!」⑧-1
8 野々村 圭
「いらっしゃいませ。どのようなご用件ですか?」
ゆきは声をかけた。
「いや、門司和裁の先生たちが何やら、商店街に仕立てのお店をだすっていう話を聞いたのでね。いったいどういうことかなと思って見にきたんですよ。まさか、和裁士のひとが直接仕立ての注文を受けるようなお店ではないですよね」
「ええ、ここは仕立ての作業を見せて和裁のことを知ってもらうための店にしようと思ってます」
ゆきは、男の質問の意図が解らないまま返事を返した。
「責任者はどなたですか? 私は、小倉の