テーマ→忘れたくても忘れられない
静かな風が吹き抜ける。
吹き抜ける風に煽られる髪を抑えながら小高い丘の上に立つ大きな木に向かって静かに歩いた。
今年もこの日がやって来た。
大地に根付く大きな根を踏まないようにしながら根元に立つ。見上げた先に広がる大きな枝葉にはいつ来ても護られているような気持ちにしてくれる。
首元に巻いたマフラーは流れた時の長さの分だけ色褪せた。同じように流れた時を思わせる皺くちゃの指先であの時と変わらないまま愛おしくマフラーを撫でる。
高台から見下ろした街にはあの日の戦禍の影は見えな