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恵みの雨 # 青ブラ文学部


豪雨に憧れ
13歳のころ、雨にうたれたかった
なにもかもに耐えきれなくなっていた
やりきれない気持ちで毎日を過ごすことに

曇天模様に親しくないクラスメイトと
なんども約束を取り付けた
いまにもはちきれそうな鉛色の空の日には
なおさら期待が高まった
じっと機会を待っていた

その日はわたしを迎えてくれた
時刻は午後5時半を回ったばかり

薄暗い空から市内中のシャワー(強)を集めたような豪雨
傘を断り、自転車に飛び乗って駐輪場をでた瞬間から
痛いくらいの雨が頭上からつま先までを叩きつけてくれた
口がゆるみそうになるのを必死でおさえながら
漕ぐ、漕ぐ、漕ぐ
濡れた髪は強い雨に打たれて濡れたまま跳ねあがった
服はからだにしがみつきながら一部はまたたいた

道中、傘をさした顔見知りのおばさんとすれ違って
「あらまあ」という顔をされてしまい
わざとらしく片手をひさしのようにして
やっちゃいましたと、困った顔を見せた

豪雨のなかに自由を感じた
いつもある見えない檻がなくなった気分だった
こころから笑っていたけど
きっと思いきり泣いてみたかった

豪雨が代わりに泣いてくれた
わたしと一緒に泣いてくれた

20分ほど自転車を漕ぎつづけ、びしょぬれを通りこしたわたしが
玄関のドアを開けると、あわてた母がバスタオルを足元にひいて
もう一枚でわたしをぐるぐる巻きにした

バスタオルに顔をうずめながら、わたしはにこにこしていた
だれも知らない13歳のわたしの秘めごとは暗々裏に



いつもありがとうございます。
山根あきらさんの企画に参加させていただきます。
よろしくお願いします。


#青ブラ文学部
#暗々裏
#私の作品紹介


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