【NPB】WARで振り返る2011年ドラフト会議(12球団別)
2011年ドラフト
千葉ロッテマリーンズ
【総獲得WAR】43.5
【最高WAR選手】鈴木大地(31)
【寸評】「大学ビッグ3」の一角藤岡貴裕を3球団競合の末獲得。大学№1右腕が、菅野なら、大学№1左腕は藤岡というのが当時の評価だった。最速153キロの速球と抜群の制球力でプロでの活躍は約束されていたはずだったが、、、。プロ入り後は、1年目こそ先発ローテに定着し、一定の成績はおさめたものの、その後は、プロ入り前に評価されていた制球力を欠き、成績は低迷。当初の期待を大きく裏切る結果に終わった。
3位指名の鈴木大地は、藤岡と同窓で東洋大学出身。バットコントロールが良く、強肩強打の内野手として注目されていた。プロ入り後は、内野全ポジションをそつなくこなせる汎用性と、怪我をしない頑健な体を武器に突出した成績は残さないものの毎年着実にWARを積み上げていった。レギュラー定着後の2013年以降は、7シーズンで全試合出場しており、その鉄人ぶりが伺える。
4位指名の益田直也は、最速147キロの速球派サイドスロー。高校時代は内野手で補欠、大学から本格的に投手転向した経緯もありドラフト時点の評価は高くなかったが、1年目から73登板(NPB記録)。その後は球界を代表するクローザーとなり、2023年までの12シーズンで700登板越えの酷使にも関わらずなぜか壊れないタフネスぶりを発揮している。
横浜ベイスターズ
【総獲得WAR】15.2
【最高WAR選手】桑原将志(19.5)
【寸評】外れ外れ1位で、最速153キロ高卒右腕北方悠誠を獲得。北方は、同じく高卒の長身サウスポー松本竜也と並び評され、球速は高卒選手でトップだった。プロ入り後は制球難改善のため行ったフォーム変更が仇となりストライクを投げられなくなった。結果的に1軍出場は叶わず引退となった。
2位指名の髙城俊人は、強肩強打の捕手として期待されていたが、打撃に難がありWARはマイナス。
4位指名の桑原将志は、小柄ながら抜群の運動能力を誇る遊撃手。プロ入り後に送球イップスを発症し外野手へ転向。中堅主のレギュラーに定着し、俊足を生かした広い守備範囲で幾度もチームを救った。
東北楽天ゴールデンイーグルス
【総獲得WAR】37.9
【最高WAR選手】島内宏明(26.8)
【寸評】1位指名の武藤好貴は、最速147キロの即戦力右腕。ドラフト指名時点から、評価はさほど高くなかったが、大成せず。
4位指名の岡島豪郎は、高い身体能力で注目を集めた捕手。プロ入り後は外野手に転向しレギュラーに定着した。
6位指名の島内宏明は、ドラフト時点の評価は決して高くなく、よくいる俊足好打の外野手といった評価だった。プロ入り後も、中々成績は伸びなかったが、2015年オフの、肉体改造をきっかけに打撃が開花。出塁能力と長打力を併せ持つ強打の外野手に成長した。
広島東洋カープ
【総獲得WAR】53.1
【最高WAR選手】菊池涼介(37.4)
【寸評】1位指名で、「大学ビッグ3」の一人野村祐輔を一本釣り。球速はビッグ3のなかで一番遅く、評価としては一番下だったが、1年目から先発ローテに定着し新人王を獲得。2016年にはエースとして16勝をあげ最多勝に輝くなど、広島のリーグ3連覇に貢献した。
2位指名の菊池涼介は、172センチと小柄ながら、運動神経抜群の遊撃手。当時から「守備だけで飯が食える」と評価された守備力は、プロ入り後も健在で、10年連続でゴールデングラブ賞を受賞。打撃も好不調の波が激しいが、6年連続で二けた本塁打を記録するなど長打力も備え、攻守の要として広島のリーグ3連覇に大きく貢献した。
オリックス・バファローズ
【総獲得WAR】21
【最高WAR選手】安達了一(17.5)
【寸評】外れ1位で、走攻守三拍子揃った社会人遊撃手安達了一を獲得。プロ入り後は広い守備範囲を誇る遊撃手として活躍。難病である「潰瘍性大腸炎」を患って以降、出場機会が減少するものの今も現役を続けている。
3位指名の佐藤達也は、最速151キロの速球派右腕。プロ入り後は速球を武器に支配的なリリーバーに成長。2013~2014年は2年連続で最優秀中継ぎ投手に選ばれる。酷使により活躍期間は短かったが鮮烈な印象を残した。
4位指名の海田智行は、最速143キロの技巧派左腕。プロ入り後も多彩な変化球を駆使するリリーバーとして活躍。
阪神タイガース
【総獲得WAR】1.4
【最高WAR選手】伊藤隼太(0.7)
【寸評】1位指名の伊藤隼太は、大学日本代表の4番。俊足強肩でバットコントロールが良く、一定の長打力もあると評価。「金本知憲」の後継候補として期待されるも、大成せず。
2位指名歳内宏明は、甲子園での力投が注目を浴びた投手。プロ入り後は右肩痛もあり1軍定着はならず。阪神退団後は、独立リーグ香川オリーブガイナーズを経てヤクルトへ入団しNPB復帰を果たした。
埼玉西武ライオンズ
【総獲得WAR】5
【最高WAR選手】十亀剣(8.4)
【寸評】最速150キロの剛腕サイドハンド十亀剣を1位指名。1年目から1軍に定着し2年目以降は先発ローテに定着。キャリア後半は精彩を欠くも、先発投手として一定の成績を残した。
2位指名の小石博孝は、技巧派の変則左腕。球の手どころが見にくいフォームが特徴とされたが、プロ入り後に良い成績は残せなかった。
読売ジャイアンツ
【総獲得WAR】10.9
【最高WAR選手】一岡竜司(4.7)
【寸評】菅野の外れ1位で高卒№1左腕松本竜也を獲得。身長193センチの大柄な体から最速146キロの速球を投げ込む、いわゆる「和製ランディ・ジョンソン」。プロ入り後は怪我の影響で球速が大幅に低下、2軍暮らしが続いていたところで、野球賭博に関わり解雇となった。1軍出場は無し。
2位指名で近畿№1左腕今村信貴を獲得。キャリア序盤は、打ち込まれるシーズンが続くも先発として起用され続け、7年目の2018年に6勝を上げるなどまずまずの成績を残す。
3位指名の一岡竜司は、沖データコンピュータ教育学院という、マイナーな専門学校出身ということもあり、プロ入り前の評価は高くなかったが、まさかの上位指名。1、2年目と2軍で圧倒的な成績を残していたが、大竹寛の人的補償で広島へ移籍。その後、支配的なリリーバーへ成長。チームの三連覇に大きく貢献した。
北海道日本ハムファイターズ
【総獲得WAR】66.2
【最高WAR選手】近藤健介(40.7)
【寸評】巨人以外なら入団拒否を表明していた菅野智之を強硬指名。菅野は叔父の原辰徳に対する憧れから原が監督を務める巨人入りを熱望。原辰徳の父であり、菅野の祖父である原貢は、日本ハムが挨拶無しに強硬指名したことに対し「人権蹂躙」と言い放ったという。
結局、菅野は入団拒否し大学に残り翌年のドラフトで巨人へ入団した。
2位指名で走攻守三拍子そろった大型遊撃手松本剛を獲得。プロ入り後は内野守備に難があり外野手に転向。1軍半の選手として迎えた9年目の2022年に大ブレイク。首位打者を獲得した。
3位指名の石川慎吾は高校通算55発のパンチ力が魅力の外野手。プロ入り後は、二軍では好成績を残すが1軍には定着できない「二軍の帝王」として君臨。ロッテ移籍後の2023年は、対左要員としてプチブレイクした。
4位指名の近藤健介は、選球眼とバットコントロールに優れた強肩強打の捕手。171センチと小柄なため、注目度は高くなかった。プロ入り後しばらくは捕手として起用されたが、打撃に専念するため外野手に転向後、球界を代表するスラッガーに成長。ソフトバンク移籍後は長打力も伸ばし、球界№1野手といっても過言ではない成績を残している
6位指名で素材型の高卒右腕上沢直之を獲得。3年目の2014年に先発ローテに定着後は、イニングの稼げるエース級投手としてチームに貢献。2024年にポスティング制度を利用しMLB挑戦を果たした。
7位指名の大嶋匠は、早大ソフトボール部出身という変わり種としてプロ入り時に注目されたが、1軍での出場はほぼ無かった。
東京ヤクルトスワローズ
【総獲得WAR】1.8
【最高WAR選手】木谷良平(1.2)
【寸評】1位指名の川上竜平は、強肩強打の外野手兼投手。3年夏の甲子園で3本塁打を放ち一気に注目を集めたがプロ入り後は1軍出場無しに終わった。
2位指名の木谷良平は、最速148キロの速球派右腕。2年目の2013年後半に先発ローテに定着するも、その後は鳴かず飛ばずに終わった。
福岡ソフトバンクホークス
【総獲得WAR】22.1
【最高WAR選手】武田翔太(14.3)
【寸評】最速151キロの本格派右腕武田翔太を1位指名。武田は、高校生投手の中で素材はトップと評価されていた。ルーキーイヤーの2012年にいきなり8勝をあげ、その後も先発ローテに定着しチームを牽引するもキャリア中盤は成績が安定せずリリーフに回った。2021年に先発再転向するも、右肘の故障を抱え、2024年にトミー・ジョン手術を受けることとなった。
5位指名の嘉弥真新也は、ドラフト時点では、ほぼ無名。172cm62kgと小柄ながら、リーグ有数の「左キラー」として1億円プレイヤーに。
育成2位の亀澤恭平は、独立リーグで好成績を残していた遊撃手。育成契約の規約により3年目終了時に自由契約になると中日が支配下登録選手として獲得。二塁手のレギュラーに定着した。
中日ドラゴンズ
【総獲得WAR】12.7
【最高WAR選手】高橋周平(9.7)
【寸評】3球団競合の末高橋周平を獲得。高校通算71発の長距離砲で、高卒野手としては№1の評価だった。プロ入り後は打撃が伸び悩むも、2019年、2020年と3割前後の打率を残す中距離ヒッターとして好成績を残しレギュラーに定着した。
3位指名の田島慎二は、最速149キロのパワーピッチャー。元捕手と、経歴が被っていることもあり第2の「浅尾拓也」との評価もあった。その評価に違わず1年目から支配的なリリーフとして活躍。2015~2017年にかけては毎年60試合前後登板。長年の酷使により近年成績は下降気味。
お読みいただきありがとうございました。
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