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青天の霹靂42(日向の家族殺される4)

「君たち、ちょっとイイかな?」
何か小綺麗な男の子が声をかけて来た。
「ええ」
あっさり冬眞は後ろをついて行く。ついて行くと、柄の悪そうな少年達に囲まれた。
「好き放題やってくれて、どうも」 
「良かった」
冬眞がニッコリ笑って言えば、舐められていると思い牙を剥く。
「ふざけんな、てめぇ」
「いえいえ、ふざけていませんよ。彼方達こそ、殺しをやって、その金で遊べると思っていませんよね。それこそ、ふざけているとしか思えません」
「な、何いってやがる」
予想外のことを言われ、彼らは固まる。
それもそうだろう。
まさか、こんな所で、自分達の犯罪が暴かれるとは、思っていなかったのだから。
「分かりませんか? ご自分達のした事なのに?」
「何の事だ?」
焦ったように、男達は言う。
「それは、如何言うことだ?」
「あっ、橘さん。何でもありませんよ」
奥から細面の男が出て来る。
どうやら、この男こそが彼らを仕切っている男のようだ。
だが、彼も知らなかったらしい。
「お前達、何をした?」
「何もしてませんよ。嫌だな」
顔の前で手を振り、慌てて否定する。
橘に言われた男は、男達を殴り飛ばす。
「貴様ら、またやりやがったのか?」
どうやら、盗みに入るのは始めてじゃないらしい。
橘の言葉を信用するなら、これまでに何度もやっていたのだろう。
「彼らは今回、取り返しのつかないことをしました」
冬眞は眉をひそめて言う。
「こいらは何をした?」  
橘は聞く。
「ただ俺たちは、敵を取っただけですよ、橘さんの」
「そうね。敵をね」
「こいつらは何をやった?」
「日向家を殺したのよね」
廉夏の言葉に橘は固まる。
「誰がそんなこと頼んだ。日向の旦那とは、もう話がついてるんだ」
それに、冬眞は答える。
「うわ~、先走りし過ぎましたね。彼らは日向さん家族を殺害しました」
橘は驚いたように、冬眞を見る。
「まさか?」
「本当よ。それも押入れに隠れていた子供の目の前でね」
廉夏は、責めるように言った。
それを聞いた橘は、自分の部下を殴る。
「お前ら、手を出したら、もうどんな言い訳も通用しないと知れ」
「ふざけんな、いつもいつもあんたは口だけで何もやらねぇじゃねぇか? あんたは卑怯何だよ」
「言いたい事はそれだけか? 他の奴も俺に言いたい事のある奴はそこに並べ聞いてやる」
そう言った彼の言葉に、人が動く。
「面白いわね。動いたのは若手の子だけよ」夏海は、クスリと笑う。
「ええ。今回で分かるでしょう? なぜ、いつも動かないのか?」
「そうね」
廉夏達の想像通り橘によってのされ、屍の山が出来上がった。
冬眞はそれに、口笛を吹く。
そして、橘は、冬眞達に頭を下げる。
「俺の責任だ」
それに、廉夏は頷く。
「そうね。彼方の責任ね」
それを聞き、それまで大人しかった橘の横に立つ、廉夏達を迎えに来た男がいきり立つ。
「このアマ、ふざけんな」
「上に立つなら、下に責任を持つのは当然なのよ。それが取れないなら、上に立つのを辞めるのね。上に立つってそう言うことよ」
廉夏は負けじと怒鳴る。
「違いねぇ」
橘は笑いながら、頷く。
「でも、お前厳しいな」
「当然でしょう。私には自分の全てをかける相手がもういるもの」
そう言って、冬眞を見る。
「あんたも大変だな。この女からは、逃げられねぇ
「逃げるつもりもありません。それが、この人を妻にした時に私が決めてたことです。本気で戦おうと」
「戦う? 何か物騒だな」
そこに引っかかったようだ。
「ええ、私はこんな運命を用意した神に勝ちますよ」
「神に?」
「ええ、とても、複雑な運命を用意してくれた」
「ふ~ん、何か分からねぇが大変そうだな。って、妻?」
ようやくそこに気付き、冬眞は遅いだろうと思うのだった。
苦笑いしながら、冬眞は言う。
「彼らをこちらにもらえませんか?」
「いいぜ、ただし、ここに警察を呼べ自首なんかさせてやらねぇ」
キッパリ言い切った。
それに、冬眞は驚く。
逆に出頭にしてくれと頼まれるかと思っていたからだ。
「厳しいのですね?」
「厳しいか。こいつらは人間としてしてはやってはならぬ事をした。その時点で救いなど貰えない」
「なるほどね。まぁ、もう事件になっていますから、警察に行ったとしても、自首扱いされて、刑が軽くなることはありませんけど」
そして、橘は横にいた男に、警察を呼ぶよう指示する。
それを聞き、罪に手を染めた少年達は、焦る。
「ま、待って下さいよ。俺たちはただ、遊んでいただけで」
「遊んでいただけだから、許せって。それは無理な相談だな。この世には、全て遊びで終わらせられると思うな。ただ、遊ぶ金欲しさのために、人の命を奪うなんて、絶対やってはいけないことだ」
それを聞き、少年達はうなだれる。
廉夏達の方を向くと橘は、頭を下げ、
「すまなかった。俺がトップを張る資格はないな。あんたの言葉は耳に響いたよ」
「彼方のこれからの役目は、きちんと導いてあげることよ。外れたくて彼らも外れた訳じゃない。そう言う彼らを戻してあげる事こそが、彼方の役目よ」
そう言うと、橘はハッとしたように、廉夏を見る。
そう言って廉夏はゲーセンを後にした。
両手に沢山のぬいぐるみを持って。

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