見出し画像

青天の霹靂14(廉を崇拝してる者)

「ね、上行ってみない」
みんなが、ホールにある2階から庭を見ている。
廉夏はそれに興味引かれたようだ。
「行ってみますか?」
冬眞が言うと、廉夏は元気よく返事する。
「うん」
行って庭を見ると、
「綺麗」
「これには、一見の価値ありだな」
廉も言う。
「すごい価値ありだよ。これは、奪えないし、どうやったのかな?」
「う~ん、奪えないけど、こんなきちんと管理も出来ないと思うぞ」
「そうなんだよね。きちんと管理する人がいたってことかな?」
「ええ」
眼鏡かけた優しそうで優秀そうな人が言う。
「あっ、すいませんお話に割り込んでしまって」
「いえ」
「失礼ですが、京極様ではありませんか?」

「そうですが」
突然名を呼ばれたのに、廉は動じることなく受ける。
廉にとって、それは日常茶飯事のことだったからだ。
「ああ、やはり、感激です。こんなところで会えるなんて、経済コラムで拝読しました。そこで、《切ることは、いつでも出来る。使えない人間をいかに使える奴に変えていくかが、問題なんだって》書かれているのを拝読しました。その通りだと思いました」
彼がキラキラ眼差しで言った。
「嘘くっさ~」
廉夏が吹き出す。
「だって、廉兄は、いかに使えない奴を、早く見つけて切るかだもんね。被害が出る前に。それが言うね」
「廉夏さん」
冬眞が止めようと口を出す。
廉は苦笑いして言う。
「すまない。あれは、コラム用に書いたやつなんだ」
廉夏がさらに口を出す。それに廉は苦笑いしながら聞く。
「だって、どうやって、変えっていくかってことは? 結局は、人任せってことでしょう。そんな奴、結局使えないわ。自分でどう変えていくかが重要なんだと思うな」
「確かに。そうですね」
「俺は従業員みんなの生活を握ってる。そうなると、いかに被害を最小限にくいとめるかが、俺の仕事になる」
「なるほど」
感心したように頷く男。
「一人一人と向き合っている時間はないんだ。向きあえればいいんだがな。私にはそんなに、時間もないし、完璧な人間でもない。すまない」
「いえ。余計ファンになりました。失礼しました。富山卓(トミヤマスグル)と申します」
「富山さんは優秀なんだね」
「えっ、私なんか、全然」
「でも社員で、参加しているの富山さんだけじゃないの?」
「他にも、いらしてますよ。ところで、私がここの社員だと言いましたっけ?」
富山は、ビックリしたように首を捻る。
「だって、わかるよ。廉兄の載っている経済コラムを読んでるって事は、つまり、富山さんも企業戦士ってことでしょう? ここの会長が取引先にしているところは、たぶん、似たような人種ばかりだろうし。富山さんは、その点当てはまらなそうだしね」
「ありがとうございます」
富山は、嬉しそうに言った。
廉夏が改めて、自己紹介をする。
「あっ、申し送れました。京極廉夏と、こっちが冬眞です」
「貴方が・・・」
複雑な顔をする富山。
廉夏は、どうしたのかと首を傾げる。
「もしよろしければ、挨拶まわりが、終わった後に教会に案内します」
「ヤったね」
「お前達だけ案内してもらえ。冬眞は夏海に付き合ってやれ。私はちょっと、挨拶があるからな」
「えっ。僕も挨拶しなくて良いんですか?」
「良いよ。今回は、俺達が主催したパーティーじゃない。気にせず、お前らは楽しんで来い」
「うん」
「それでは、また後程」
「じゃあね」
手を振る夏海。
「さて、どうする?」
廉が夏海に聞く。
「料理を食べるしかないでしょう?」
「そうだな」
廉と冬眞が先に降りる。
冬眞は廉に質問してみた。
「庇わないのが、出来る企業戦士何ですかね?」
冬眞は富山が会長を庇わないことに、違和感を覚えたからだ。
できる人ならなおさら、こう言うとき、庇うもんじゃないか。
冬眞が首を傾げると、廉が笑って言う。
「どうだと、思う?」
「僕は庇うものだと思います」
「どう?」
廉は、面白そうに聞く。
「私には、分からないから、聞いているんです」
「お前にも、いずれ、分かる時が来るさ。だから、これはそれまでの宿題だな」
本当に面白そうに言う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?