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青天の霹靂10(脅迫状)

夕方、終わった。
「ふ~、これで廉兄も納得してくれるでしょう?」
「そうですね」
二人の後ろには、15袋にも、及ぶごみ袋が、積み上がっていた。これを明日出すのは、家政婦さんだ。たぶん、手伝って貰ってやることになるんだろう。
二人は、なぜか、湯飲みを持ってクツロいでいた。
冬眞はフッと疑問に思う。
「あれ?」
冬眞は不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの?」
廉花は、冬眞の疑問が分かっているように、少し口角を上げながら聞く。
「僕と廉さんの予想だと、穫っておくものは2つのはずでした」
「だから、3つあるのはおかしい? と」
「はい」
3つとは言え、1つは手紙だけだけど。
「かもね。でも、京極にこんな真っ正面から喧嘩ふっかけてくる人、最近いなかったから、面白くて。これね」
それは、掃除中にプレゼントの手紙だけを取り、手紙だけを抜いたものだった。
「どういうことですか?」
冬眞が、そう聞くのと廉夏は笑って、冬眞に手紙を渡す。
渡された手紙は、二人からだと分かる。
便せんが違かったからだ。
1枚目は、結婚を祝うもので、なぜか二重になっている文字があった。それには、こう書かれていた。
【廉夏ささん冬眞さん結婚おめでとうございます。相変わらず、暑い日が続ききますが、皆さん夏バテなどはしていませんか。夏バテなんかせず、この夏を乗りきって下さい。結婚して初めての夏たたのしんで下さいね。さる7月28日、我が家のホテルのオープンきねんパーティを催します。是非、みなさまでおこし下さい。近くに教会もあるこことですし、2回目の結婚式をここで挙げらられれては、いかがでしう? きっと、ろろまんちっくだと、思いますよ】
「二重になっている文字を読むと<さきたるこられろ>ですね。これは」
「そうアナグラム」
廉夏の言葉に、それまで気にも止めていなかった招待状の手紙に、冬眞は目をやり、表情が曇る。
廉夏にアナグラムと言われ、文字を並べ替える。
そこには、【きたらころされる】と、ご丁寧に書いてあった。
「あっ」
「親切よね」
冬眞もそれに気づく。
そして、もう一つの方が何とも異様だった。
それは、漢字が羅列されていて、何かわけの分からないものだった。
「でも、二重になっているからって良くわかりましたね」
廉夏は笑いながら言う。
「そりゃそうよ。もう一つの方を見なさいよ」
そう言われ、冬眞は見る。
「えっと。【れんか山、冬眞三結婚御目出塔後材益。暑胃日我続来升我、胃可、御過後四出市世宇可?申八月二十八日?、我画家野補手留野御ー分着念派ー手胃を四升。是非美名嵳真出御越四下差鋳。近区二機世卯会藻亜留こ戸出酢市二回目野毛津紺式亞解手派如何出酢化? 来津戸、ろ万置柘駄戸思胃真す】」
「たぶん、これは廉夏さん、冬眞さん結婚おめでとうございます。暑い日が続きますが、いかが、お過ごしでしょうか? 申8月28日、わが家のホテルのオープン記念パーティーをします。ぜひ皆様でお越し下さい。近くに教会もあることですし二回目の結婚式挙げてはいかがですか? きっと、ロマンチックだと思いますじゃないかな?」
廉夏の言葉に、気にも止めていなかった招待状に、冬眞は目をやり、表情が曇る。
「こっちの方が分かりやすいですね。平仮名を書いてある順に読むと、廉夏を殺すですね。さっきは殺されるだったのに、今度は、殺すですから抽象的から直線的になってますね」
「そう」
廉夏は頷く。
「で、廉夏ちゃんはこれ誰からか分かっているのですか?」
「もち。こんな分かりやすいのないわ」
「誰です?」
「だって、パーティーの招待状付きよ。名乗っているような、ものでしょう」
そう言われ、冬眞は言う。
「まぁそうですね。でも、 プロじゃない分、僕は逆に怖いです。何をするか分かりませんよ」
「そうか?  でも、逆に私に火が付いたわ。これはのがせないよ。おじいさまに行っていいか聞いてこようと」
廉夏は、豪造の部屋に鼻歌を歌いながらスキッブしながらやってくる。
「お爺様」
「何じゃ?」
「行って良い?」
その招待状を見せる。
「あ~、何じゃ? ああ、それか? きちんと、自分の身を守れるなら、行って、良いぞ」
豪造は脅迫状だと言って、いないのに、一目見て、気づいたようだ。どうやら、来たものは、豪造が検分しているようだ。
「うん、守る」
「念のため危ないから、廉も連れて行きなさい。家にも一宮からは確か招待状は来ておる」
豪造は、犯人が一宮の者だと、分かってるようた。
「うん、わかった」
廉夏たちは、廉の帰りを待つ。廉が帰ってくると、廉夏がもう我慢できないとばかりに、
「行って、良い?  良い?」
訳の分からない廉は、惚けたように言う。
「何がだ?」
冬眞が、それに説明する。
「我々の予想は、外れていました。3つでしたよ、その1個があれです」
リビングへと案内する。
そして、招待状に目をやり怪訝な顔をする。
「一宮か?」
廉は封筒を見ただけで、誰が送ってきたものか分かる。そして、それが脅迫状だとすぐ気付く。憎々しげに言う。廉は首を左右に振りながら、ネクタイを緩め、背広を脱ぐ。
「何で廉兄、分かるの?」
「同じ招待状が何枚も会社に、来てる」
「何だ。知ってたんだ。つまらん」
それを廉夏がまるで、女房になったように受け取る。
「悪いな」
笑顔で礼を言い、廉はリビングを出た。
でも、向かったのは自分の部屋じゃなく、豪造の部屋だった。

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