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彼女の頬を撫ぜるように赤っぽい髪の先が滑り降りていくのを、僕はぼんやりと眺めていた。その向こうに、古びた窓枠に収まったやや曇りがかった硝子を通して、するりと横切って行く白い花びらが見えた。穏やかな愛すべき時間を、僕は彼女と構成していた。

何を考えているの?
黙り込んでいると彼女は言った。
照れちゃうよ、そんなに見つめられたら。
ごめん。
僕は気づかないうちに、いつの間にか彼女の顔をじっと見つめていたらしい。視線を逸らした先に、青いヒヤシンスの水栽培ポットがあった。薄い青の透明な器のくびれに置かれた球根から無数の白い根が伸びていて、その先にある水面に刺さり、勢いよく水分を吸い上げようとしている。吸い上げようと、両手両腕を伸ばすように、息を吸い、身体を思い切り伸ばして、伸ばして、伸びていく。冷たいものが身体を通り抜けていくのを、まるで自分のことのように感じる、、

あ。

僕は立ち上がった。お金を置いて歩き出す。

何?何?

ごめん、急用ができた。

ふわりと周りが溶け始めるのを僕は感じる。何か違う風景が僕の周りを侵食し始めて、ゴーゴーという水の流れるような音に包まれていった。

一緒に水を吸って頂戴!

うわんと響いた音が頭に充満してチカチカし始めた。無数の髭のように細い根が、身体の中で増幅していくのを感じる。空気がどんどん湿り気を帯びてくる。水を吸いたくて、たまらない気持ちを押さえつけて、無我夢中で僕は走った。

パァン!

水風船が弾けるような音がしたのと、僕がつんのめったのはほぼ同じで、ゴツゴツしたアスファルトに手をついたものの、一回転した僕は、尻餅をついたような体で、我に帰った。

そこは川沿いに設けられた遊歩道だった。さっきの店からどれだけ走ったのか、わからない。天気がいいのに誰もいなかった。
いや、何かいた。

大変だな

そいつは、引き攣ったように見開いていた赤い目を閉じたかと思うと消えた。僕は自分の身体を見た。人間の形は変わっていない。顔も。いや、

あー、、

小指から白い糸が、スルスルと伸びてきた。糸を引き千切ったら血が噴き出して、僕は慌てて指をハンカチで包んだ。ハンカチがどんどん深紅に染まるのを僕は座り込んで見ていた。

僕の無意識は何者にも寄り添い共にいルことを願うだだ漏れの馬鹿野郎で、勝手に色んなものに共感して、僕を違う世界へ連れていってしまう。今回はヒヤシンスと一緒になろうと思ったようだ。

やれやれ

彼女にどう言い訳をしようか、悩みながら空を見あげると、白い花びらが一枚、するりと流れていった。

大変ネ

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