見出し画像

おしりだって、洗ってほしい?

「温水洗浄便座症候群」という病名がある。
いつも清潔にしているはずなのに、おしりのかゆみが治まらない、痛みが続く状態だ。
こうした症状は、ウォシュレットによる「洗いすぎ」が原因になっている可能性がある。

髪も身体も、洗いすぎによって皮膚を守る皮脂膜や常在菌が流されてしまう。
コーティングの役割を果たす皮脂がなくなり、常在菌が流されて、皮膚のpHが弱酸性から中性・アルカリ性にかたよる。すると、皮膚は保水力や柔軟性を失う。
清潔でいたい一心から洗えば洗うほど、逆に皮膚は潤いを無くし、乾燥してガサガサになり、かゆくなったりぽろぽろけたり、炎症を起こせばひび割れをしたりする。

その原理は、おしりも全く同じだ。温水で過剰に洗いすぎると、肛門の皮脂や常在菌が洗い流されてしまうのだ。

肛門のトラブルを抱えた患者が増えているという。
医師が肛門の痛みやかゆみを訴える人たちに話を聞けば、ウォシュレットを排便前後で過度に使用している事例が多いという。中には自動で停止するまで数分もの間、洗浄し続けている人もいるそうだ。

そういう人の肛門を観察すると、洗いすぎによる乾燥で皮膚が真っ白になっていたり、逆に摩擦で色素沈着を起こし黒くなっていたりするそうだ。
ブツブツができたり、(乾燥を防ぐために)過剰に皮脂が出てきて、ベタベタ、テカテカしていて、見た目にもひどい状態になっているという。

ウォシュレットと言えば、1982年の戸川純「おしりだって、洗ってほしい」のテレビCMが記憶に残る。1980年の発売以来、日本国内では家庭やオフィスなどで広がり、温水洗浄便座は一般世帯の8割に普及した。

ある医師が、血便が続いて痔で痛むという患者を問診すると、頻繁にウォシュレットで洗浄していると判明する。
診察すれば切れ痔の初期症状で、原因として考えられるのはウォシュレットによるお尻の洗いすぎだ。
本来、お尻を便や細菌から守っている皮の油分(皮脂)まで全て洗い流してしまっている為に炎症が起こり、血便を引き起こしているのではないか。
症状も比較的軽かったので、ウォシュレット使用を止めるよう指導する。

数日もしないうち、血便は治まったそうだ。
この患者は血便や痛みが続いているあいだ「もっとお尻を清潔にした方がいい」と思ったそうで、それが悪循環になっていた。
初期の段階であれば治療が必要なほどの痔になることもなく、薬も使用せず、ウォシュレットの使用を止めただけで治る。
使い続ければ、痔や他の病気に進行するわけだ。

排便を促進するための刺激として、ウォシュレットを使用する人がいる。「いきんでも便が出てこないから、温水で刺激して便を出している」という便秘の人は珍しくないそうだ。
通称「ウォシュレット浣腸」と呼ばれる行為で、温水の刺激に頼っていると便がさらに出にくくなり、より刺激しようと水圧を強める悪循環に陥り、痔が悪化する原因にもなる。
「下着に便が付いてしまった」「便が漏れてしまった」と訴える患者の中には、このウォシュレット浣腸で直腸に残っていた「温水」が漏れ出ているだけというケースが珍しくないそうだ。

実は、上記の大半は僕が経験したことである。
まさかウォシュレットに原因があるとは思わず、極端な事例ほどでないにしろ、自宅トイレのウォシュレットを使い続け、お尻の痛みを引きずることがあった。
改善したのは、ウォシュレットのタンクが経年劣化から破損し、水漏れをするので使用を止めたためである。
以降、お尻のトラブルから完全に解放された。

今ではシャンプーも使わなければ、石鹸も最低限しか使用しない。
ウォシュレットも使用しないし、テレビも一切視ない(関係ないようだが、精神衛生上これに勝る治療はない)。

人間、余剰なものからは可能な限り、離れたほうがいいのかもしれない。

イラスト hanami🛸|ω・)و

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?