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ズルい女

(前回の続き)
肩書一つで露骨に態度を変える人もいれば、巧みに管理者を操ろうとする人間もいた。
例えば、オジサンが責任者で部下の女性が10数名いる現場での出来事。

そこでは、仕事は出来るが性格きつめの女性リーダーが実質的に現場を仕切っている。ポジション的に上の責任者は、トップの自分をさしおく彼女の態度が日ごろから気に食わない。
何しろ指示して、「はい」と素直に返ってきたためしがない。
「順番が違うでしょ」「こうすべきでしょ」とくるもんだから、責任者もついついムキになる。
「アンタはさぁ」「そっちの方が効率わるいだろ」「うるせぇ!」などと、ミーティングでは双方が常にエキサイトしていた。
パワハラもセクハラも一般化していなかった、20年以上前の話である。

かわいげのないリーダーに対し、いつも控えめで、誰の陰口もたたかなそうな同年代の女性がサブリーダーになる。
するとオジサン、リーダーは差し置いてサブの彼女を贔屓ひいきにしだした。人情としてわからんでもないが、仕事に私情をはさまれては困る。かといって、表向きはサブの彼女が仕切っているわけじゃないから、注意もしにくい状態が続いた。

ある日、上司に呼ばれ「あの現場どうなってる?」と報告を求められる。業務の流れや人的質の問題等、把握している内容を説明した。
すると我が上司、ニヤニヤしながら「それだけじゃないだろう」としたり顔である。
「リーダーやっている○○、いろいろ問題あるんじゃないのか」と、僕も知らない(本当かウソかもわからない)彼女の素行を、次々と上げ始めた。
それがイジメに関することだったから、聞いていてどうにも腑に落ちない。
確かに口調はきつめだが、そのぶん竹を割ったような性格で、言いたいことをその場で言う彼女にイジメなどという陰湿なイメージはない。
「なんでそんなに詳しいんですか?」と問えば、「オレは俺で独自の情報ルートがあるんだよ」と、得意満面ではぐらかされた。

言われた以上そのままにもしておけず、事の真偽を現場責任者とリーダー同席のうえ、問いただす。
すると責任者のオジサン、「あんまり事を荒立てないよう、今まで黙っていたんですがねぇ」と、上司に同調する姿勢である。いかにもリーダーをかばっているようで、内心の嬉しさが顔ににじみ出ている。これでコイツ、追い出せるくらいに思っていたかもしれない。

一方、指摘された本人は根も葉もない話と憤慨する。「どこの誰がそんなデタラメいってるんですか!」
オジサン責任者の話を聞いていくうち、イジメの具体的事実を確認できていないのが分かってくる。全ての末尾は「と、私は聞いています」ってな具合。キミはKYサンゴの朝日新聞か。
ま、だから黙っていたんだろうとも言えるが。

だいたい僕だってちょくちょく顔を出しているんだから、こういう問題が起こっていれば、必ず誰かしら相談が来て然るべき案件だ。
僕の上司と現場責任者の話が一致していることからも、情報源は一緒であると考えるのが妥当だろう。もちろん「誰に聞いた話?」を問うても、「それは言えません」とダンマリを決め込む。
本来、犯人捜しなど良くないことだが、ありもしないイジメの捏造でリーダーをおとしめようとしたのだから、言語道断である。
名前は言わなくてもいいけど、裏もとらず好き嫌いや先入観だけで「コイツならあり得る」と決めつけた時点で、責任者失格だよと指摘した。さすがにオジサン責任者も、反省しとったっけ。

後日判明したのは、情報発信元がサブリーダーの女性であったこと。この人が巧みなのは(あくどいのは)、自らが直接に上の人間に訴えるのではなく、自分の配下の者をつくり、まずは間接的にリーダーの悪評を吹き込んでいたことだ。
側近が、サブの「○○さん、こんな目に遭ってるんですよぉ」と吹き込み、当人が呼ばれ「本当か?」訊かれると、はっきりは答えずうつむき、しおらしく泣いて見せたりしたらしい。こわいねぇ~。

こんな三文芝居に踊らされる男って生き物も、はっきり言ってアホである。居づらくなった当人が退社した後、上司にアナタは知らなかったでしょうがのていで、嫌味を添えて経緯を報告した。アンタも反省しろよと、肚の中でマジ思いながら。

上司の返事はつまんなそうに、「ふ~ん」だけだった。

(明日も続くが、ワシ一体どこにいこうとしているのだろう)

イラスト hanami🛸|ω・)و

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