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断シャン

小学校低学年(昭和40年代後半)の記憶で、風呂にはほぼ毎日入っていた気がする。洗髪は、週に2~3回じゃなかったか。それで頭がかゆくなったという記憶もないから、頻度として十分だったかもしれない。

シャンプーの頻度に関してのWeb記事を見ていたら、だいたい以下の歴史であるのが分かった。

© Coral Capital, Inc.


なんでもそうだが、一度その頻度ひんどが増えると、それ以下の水準にはなかなか戻せなくなる。洗髪の歴史は、その不可逆性をよく示しているのだ。

80年代に入ると”朝シャン(朝起きてするシャンプー)”の仕掛けが当たり、斉藤由貴の「モーニングフレッシュ」、薬師丸ひろ子の「ソフトインワン(ちゃん・リン・シャン)」などのCMで、もともと清潔さに敏感な年ごろの女子高生たちの間で爆発的な流行となり、毎朝のシャンプーが定着していった。

今の常識からすると、洗髪は夜にすることが鉄則らしい。
1日の活動で発生する皮脂ひしが酸化して、毛穴を詰まらせてしまうためだそうだ。
必要な皮脂を朝の洗髪で落としてしまうと、日中、頭皮への紫外線によるダメージが増えるともいわれる。

一見ごもっともだが、朝のシャンプーを夜に変えるよう勧めているだけで、毎日のシャンプーが前提になっている点は一緒のままだ。

では、たとえば昭和30年代に活躍した女優さんが社会通念に反して毎日洗髪していたかと言えば、そんなこともないだろう。
香川京子(1931年〈昭和6年〉12月5日 - )、八千草薫(1931年〈昭和6年〉1月6日 - 2019年〈令和元年〉10月24日)、岩下志麻(1941年1月3日 - )、岸惠子(1932年〈昭和7年〉8月11日 - )といった美女の黒髪は、週1~2回の洗髪のみで、大型スクリーンに耐え得るコンディションを維持していたはずである。

ここからも、一度走り始めると止まらない現代日本人の、過度な衛生観念がうかがえる。
週1~2回で用が足りていた洗髪を、あれこれ後付けの理屈で毎日シャンプーするよう促すのは、資本主義の世の中で致し方ない側面があるとしてもだ。
もちろん、個々人が常にきれいにしていたい気持ちを否定するものではない。1日頭を洗わずにいると、かゆくなるという意見もあるだろう。

問題があるとすれば、毎日シャンプーすることによるデメリットである。
その一つは、頭皮の皮脂ひしを落としすぎてしまうことだ。
頭皮が乾燥しやすい肌質の人や冬場の乾燥時期などは、シャンプーで皮脂を落としすぎてフケやかゆみの原因になる。
毎日シャンプーをしていて頭皮にかゆみを感じたり、フケが多くなったりした場合は、シャンプーの回数を減らしたほうがよいという。
これなど、かゆいからなおさら回数を増やしたり、より高額な商品を買ってそれでも効果がないなどの、悪循環に陥っている人はいないだろうか。
外部の情報にあおられるのでなく、一度立ち止まって行いを改めてみる。意外とそれだけで、問題が解決する場合も少なくない。

もう一つ、シャンプー時の摩擦はヘアダメージにつながる点だ。
髪はキューティクルといううろこ状の組織に覆われ内部のうるおいを保っている。それがシャンプーをするとき、髪同士に摩擦が起きることでキューティクルが剥がれ、大切な潤いが流れ出てしまうのだ。
ハイダメージ毛の人はなるべくシャンプーの回数を抑えて、摩擦を起こさないようにするのが最適である。
高価なハイダメージ用シャンプーを毎日使い続けるより、シャンプーを使用しない方が髪のためなのである。

ちなみに僕は、シャンプーを使っていない。毎日、石鹸で頭の表面だけを(付着した汚れを落とすイメージで)なぞり、お湯を流すだけである。
もともと髪の量は多かったものの、先日行った散髪屋でも「量、多いですね」と若いニイちゃんに驚かれた。あと数か月で62歳にしては、少数の部類だろう。

いわゆる”湯シャン”を始めた理由は、毎日シャンプーしているのに頭の痒みがひどかったからだ。
だからとシャンプーごときに大枚をはたく気になれず、いっそ止めちゃえと開き直ってしばらくすると、痒みが意識に上らなくなっていた。
自分がたまたまいい結果だったからと安易にお薦めはしないが、お悩みの方は試されるのも一計である。金がかかるどころか、支出が減るので損はないはずだ。

薄毛でお悩みの方には、”水シャン”というのもあるらしい。真冬に震えながら、水で髪を洗うのか。それでもこの動画を見る限り、高価で効かない増毛剤を買うより、はるかにメリットがありそうだ。
神さまならぬ髪さまのため、滝行の代わりと思えばできなくもないか。

イラスト hanami🛸|ω・)و


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