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ITツール(slack,halp,Jira,バクラク,docusign等)を使って契約フローをいい感じにしたよって話

イントロ

こんにちは!Ubieで法務をやっているkamechanと申します。

この度、弊社の契約レビューフローを変更して、契約レビュー・締結フローを新しくしました。また、その際ITツールを使って結構洗練されたフローにできたのではとも思っております。契約レビュー・締結フローについては、法務担当者は皆通る道ではあると思いますが、法律書に書かれているわけでもなく、あまり世の中にノウハウが少ないように思います(私も外の知見を参考にしたというより社内のみんなと話し合いながら作ったというのが実情です)。めちゃニッチな分野とは思いますが、折角の機会なので、参考になればとnoteでシェアしてみたいと思います。
各社とも環境や課題、コミュニケーションスタイルによってベストなパターンは異なると思います。各社の状況に合わせてやるのがよさそうであるのは前提としつつ、こういうやり方もあるんだなとプラクティスの一例としてご参考になれば幸いです。

こういう方に読んでほしい!

  • 企業法務担当者

  • 企業内で業務フローを検討している方

背景・前提

まず前提として、当社のIT環境は以下のような状況です。

  • コミュニケーションツール:slack

  • タスク管理ツール:Jira

  • 申請・承認ツール:バクラク申請

    • バクラク申請は、割とシンプルな申請フロー。フローの変更も容易だが、複雑なことはちょっと苦手なイメージ

また、ここで背景として共有したい問題点として、「契約レビューフローと捺印フローを一本化するかどうか問題」というものがあると思います。(法務以外の人には何のことやらという声が聞こえてきそうですが、、)
そもそも、契約締結に至るには大まかに契約レビューのプロセスと、合意した内容で契約書を署名/捺印プロセスとに大別できると思います。
まず契約レビューのプロセスですが、これは契約内容について相手方と調整するプロセスです。ここで求められるのは、取引内容を会社や事業にとって有意義・リスクの低減された状態にするべく、事業担当者(事業責任者)と法務とで密にコミュニケーションをして、ベストな契約内容に調整することかと思います。
次に、署名/捺印プロセスは、会社として適切な承認を得たうえで実際の署名/ハンコを押すプロセスです。ここで求められるのは、適切な承認プロセスを経たうえで会社として間違いのない形で契約締結することや、その証跡を残すことです。
この二つのプロセスは混同されがちではありますが役割・目的が異なるものだと思います。前者はベストな契約内容にするためにコミュニケーション量が多くてよい(ごちゃごちゃすることになるのも厭わない)。一方で、後者は何に対して承認したか結果がクリアな方がよい。よって、ファイルや証跡もシンプルなほうがよいと思います。
とはいえ、二つのプロセスは契約締結の全体プロセスの中で一連のプロセスになっております。
この二つを分けるべきなのか、一気通貫のフローにするのかという点でこの「一本化するかどうかが」問題となります。
それぞれのメリデメをまとめると以下な感じです。

メリデメ比較

課題設定

次に、契約レビュー・捺印フローについて弊社の抱えていた課題感は以下の通りです。
※あくまで、フローにおける課題なので契約レビュー内容そのものについてはここでは触れておりません。

  • 法務側の課題・関心ごと

    • 契約レビュー依頼の抜け漏れ回避、タスク管理をうまくやりたい

    • 捺印時に「レビューしたうちどの案件だっけ?」と探す手間を省きたい(レビューと捺印との紐づけを分かりやすくしたい)

  • 事業側の課題・関心ごと

    • 複雑な申請フローはやだ。ワンストップにしたいよ。

    • 契約にかかる法務とのコミュニケーションをスムーズにしたい。

  • ガバナンス上の課題

    • 契約ごとに捺印時に適切な権限がある者の承認を取る。

      • 事業責任者、法務など

    • 承認が取れたファイルが改ざんされずに証跡として残る

ではどうしたのか

弊社は以下のような構成にしました

システム構成

手順

  • 契約レビューフロー

    • 事業担当者はslackワークフローにて法務に依頼をする

    • 事業担当者と法務間のやりとりはslack上で行われる

    • 依頼がされるとタスクがJiraに連携され、slackのログもJiraに残る

  • 捺印フロー

    • 事業担当者は合意した契約をバクラク/Salesfoceにて締結申請を行う。

    • 必要な承認はワークフロー上で行われる。

    • 承認が済むとDocusignで電子署名し、データが保管される

契約レビューはslack。捺印申請はバクラク/salesforceというように二つに分けております。前述の通り、二つのフローは目的が異なります。よってHOWも分けることとしました。
例えば、一本化するためのツールを導入してそこの内容をslackに連携する方法もあるとは思います。ただ、弊社では社員の皆さんがslackでのコミュニケーションに慣れ切っているので、やはりコミュニケーションは従来通りslackで行うのが良いと考えております。また、slack連携だと絵文字が使えない等、痒い所に手が届かないことになったりすることもあります。とかく法務は文面が固くなりがちかと思いますが、絵文字ポチポチするだけでもコミュニケーションが円滑になるので、ここはslackがいいかなとしました。(弊社でも御多分にもれず独自の絵文字をたくさん使っております。私のお気に入りは以下です)

お気に入りスタンプ

また、二つに分けた理由として、レビュー時にほしい情報と締結申請時にほしい情報は意外と異なることもあります。それぞれで適時必要情報を入れて申請してもらうのがよいということもあります。

  • レビュー時にほしい情報:締結の背景、契約内容へのコメント(契約内容に関する情報。)

  • 締結時にほしい情報:相手側の締結者情報、締結日、電子署名可否(締結にかかる情報。レビューの進行によって意外と変動することがある)

フローを二つに分けることのデメリットとして、申請者が手間だったり混乱するという点もあります。この点については、レビュー完了時に「完了したらバクラク/SalesForce申請あげてね」といえば一定問題なしと捉えておりました。しかし、思った以上に申請側からすると二度の申請は手間のようで、そのようなフィードバックもいただいております。これは今後の課題としたいと思います。

さて、ここからは更に具体的にそれぞれフローについてのHOWについて説明したいと思います。

契約レビューにおける課題へのHOW

  • 案件管理

slackだとどうしても情報が流れてしまい、案件管理が難しいという課題があると思います。この点については、弊社ではhalpを導入してJiraに自動接続させ、Jiraで案件管理ができるようにしました。なお、この仕組みは、直接Jira接続すると難しいところがあるようですが、Halpを組み込むことで可能にしております。また、このHalpを使うことで月毎の件数管理も容易にできるようになるようです。工数管理のモニタリングは今後取り組みたいテーマの一つです。

slackワークフロー
Jiraの画面
  • レビューした案件と捺印との紐づけについて

フローを二つに分けることでレビューした案件と捺印の申請との紐づけをどうするのかという問題が出てきます。
弊社では捺印申請にレビュー時のslackスレッドのURLを貼り付けてもらうことでこの紐づけをするようにしました。これについては案件ごとに管理番号をつけて番号で紐づけするなどいろいろやり方はあると思います。
弊社の場合、slackのURLを貼ってもらうのが一番簡単なのと、捺印申請にslackスレッドのURLを付けてもらえば、後から当時の契約レビューの検討記録を誰でも簡単に追えるという点でこのやり方を採用しました。

また、フローを二つに分けると、契約レビューしたけどちゃんと捺印にまで至れているか(事業担当者でスタックしてないか)が追えなくなるという課題もあると思います。
実際、事業担当者は契約レビュー交渉がタフだと、合意したタイミングでやり切った気持ちになってしまい契約締結までやりきるのを忘れてしまいそうになるということがあります。フローが一本であればスタックしているかが分かりますが、二つに分けると担当者がきちんと捺印申請を上げてくれているかが分からなくなってしまうと問題となりえます。
この点、弊社ではJiraで全て案件管理することで解決することとしました。Jira上でレビューはしたけどまだ捺印に至っていないものについてはステータスで可視化されてますので、定期的にアラートして追っかけるようにしております。幸い、当社はそこまでの規模ではなく、個別に追いかければみんなちゃんと返答してくれるので、このやり方で問題ないかなと思っております。

捺印における課題へのHOW

まず捺印においては、何といっても適切な承認をうけ、ハンコ押してよいといえるかという点がポイントになるかと思います。
弊社では、購買系をバクラク、販売系をsalesforceと分けていますが、両方のワークフローとも適切な承認をもらえるフローとしております。また、最終版だけアップするのでどのファイルが最終版なのか分からなくなることもありません。改ざんもできずそれが証跡となります。これはバクラク/salesforceに限らずとも何らかの申請ワークフローであればOKだと思います。
※購買系をバクラク、販売系をsalesforceと分けている理由としては、販売系は顧客情報を全てsalesforceに集約するのが営業的にも都合がよく、それ以外はワークフローがシンプルなバクラクを使っているというのが理由です。

また、証跡・記録の保存という点では、先にも記載した通り、過去の経緯は申請に添付されているslackのスレのURLを付しております。気になる人はそれで内容チェックできます。特に法務は何件もの契約案件を扱いますので、「これ何だっけ?」ってなったらすぐにslackスレのURLをチェックすれば内容を確認することができます。
また、これであれば後任の人が過去の契約締結の経緯を簡単に追えるのも大きな魅力だと思います。私の過去の経験で、調印済み契約書だけあって当時のメールが全く残っておらず当時の経緯が全く分からないということも多くありました。slackは検索性が今ひとつで過去の経緯をslackから掘り起こすのも一苦労ですが、このようにURLをはればすぐに過去経緯にあたれるようになります。
なお、押印については、弊社ではDocusignを主としております。これは弊社の顧客がDocusignを利用することが多いという理由です。弊社のようなフルリモートOKな会社であれば電子署名は必須と思いますが、ここでは特にそれ以上はないので割愛します。

フローを変えて変わったこと、分かったこと

フローを変えて洗練されたので、ミスが起こりづらく、またガバナンス上の統制もとれるようになりました。何より、できるだけ人の手を介さずにツールを使うようにしたことで、ミスのない効率的なフローにできたと自負しております。
特に今回の学びは、フロー改善にはどんどんツールを使っていくのがよさそうと気づけた点です。契約レビューフローや捺印フローは一度定着すると固定化しがちだと思います。私も新しい会社に入って契約フローを見直す中で、当初は前職でのやり方を踏襲しようとしました。
ただ、課題を浮き彫りにしていく中でコーポレートエンジニアと話をすると、ツールを使って簡単に作業ができるアイデアをいただくことができました。これにより手作業でやってた部分や非効率だったところも改善ができています。
ツールも日々進歩して便利なものがどんどん出ています。自分が新卒の時はまだ社内便で紙のドラフトと契約検討依頼書にハンコをついたものが送られてきてそれに対応していたりしていたので、そのときからは時代は進歩したなあと思います。これがいわゆるDXというやつなのか。失われた●年とかいうけどやっぱり進歩していると思います。
特に法務の人はなかなか技術に疎かったりするところがあると思うので、エンジニアに相談してフローを検討するとより洗練された良いものが出てくるかもしれません。

最後に

ニッチな内容にもかかわらず、ここまで読んで下さりありがとうございました。
また、ここまで読まれた法務の方の中でも「これって敢えてこんなツールやソフト入れなくてもいいのでは?」と思われた方もいらっしゃると思います。その問いはおそらくYESだと思います。会社によってコミュニケーションのやり方やその他のIT環境の方法も異なります。証跡を残す等、ガバナンスは各社似たようなところを目指すと思いますが、各社ともに状況や環境も異なりますので当然課題も異なると思います。もしこのnoteを読んでそこまでは不要と思われたのであれば、特に課題感がないということだと思うのであえて何かをする必要はないのかもしれません。各社のベストなやり方を模索するのがよいかと思います。
一方、もしこのnoteを読んで、「こんなやりかたもあるのね。へーなるほど」と思われた方がいて、その方の法務業務の改善への一つのヒントになったのであれば幸いと思います。

最後に手前味噌にはなりますが、この取り組みは弊社のコーポレートエンジニアがいなかったら成り立たなかったと思います。あらためて感謝です。また、強いコーポレートエンジニアがいるというのは強いコーポレート組織の重要なポイントだと思います。法務や経理などは企業によってカルチャーの差はあれどそれほどやることは変わらないのに対し、IT領域は会社によってIT採用方針や投資額もバラバラで、企業によって差異が発生しやすい点ですし、その分レバレッジも効きやすいと思うためです。
弊社では引き続き法務職を応募しておりますので、法務課題もITでいい感じにしてくれるコーポレートに興味がある法務の方がいらっしゃったら是非応募してみてください!ありがとうございました。

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