見出し画像

丹波の黒豆、母のごまめ




事故や物忘れで仕事をリタイヤした母に

毎年恒例のお正月の黒豆を作ってもらい、取りに行ってきた


今年は御使い物にもするので多めに炊いてねと頼み

その実は、毎年作って配っていた人が入院したり亡くなったりで

仕事がないと塞ぎ込んでいる母へハッパをかける意味もあった



出来上がった黒豆は、大きなタッパーに入れられて準備されてたが

いつもよりも固く、ゴマメもいつもの母の味ではない


「なんで、こんなに固いの、いつもと違うね」

問うと、きょとんとした表情で

「人様にあげるのに、いつものじゃあかんでしょ」


いやいや

いつもの味が良かったけど



ゴマメも

「いつもの、パリンとした感じがないね」と聞くと

「人にあげるいうたから、わざわざ出汁もとってしたんやで」

とドヤ顔である



ここは

工夫するとこ、違うやろ



毎年、ジップロックに汁ごと入れた黒豆と

今年のおめかし豆は別物だけど

やり直すつもりで持ち帰った



「ありがとう、助かったわ」と笑顔で実家をあとにした



「ばあばの味、なんか変わったよね」と娘が言う



うん、そうだね

変わったね



でも、いつでも子供のために役に立ちたいと思っているし

しんどいなあ、あかんなあ、と言いながらも

ずっと何かしら頑張ろうとしている



近しいが故に、歯に絹着せないから喧嘩になる

優しく接してくれる兄と比べて

「あんたはキツイ!」と言い返してきて腹も立つ

けれども

母の頑張りも、徐々に老いていく姿も

どちらもしっかり受け止めて、抱き止めたいと思っている



持ち帰った黒豆は、しばらく煮汁に漬け込みなおして

ふっくら柔らかな母の味に戻った


ゴマメはしっとりした母作と、もう一つ別のを作って

どちらも持っていこう


そして、伝えよう

「美味しいでしょ?うちの母の黒豆、この味は出せないの」と

みんなに自慢しよう


大好きだよ

お母さん



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?