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香りに想う



懐かしい香りというのがある

私の場合は
蚊取り線香、雨の日のアスファルト
子どもを抱っこしたときの香り

おばあちゃんのニッキ飴
母の毛糸の匂い

香りは時空を超えて記憶を引き戻す
おぼろげにしか思い出せなかった祖母の顔が
浮かんできたりする

認知症で、自分の家にいるにも関わらず
「帰ります」という高齢者は
昔の家に帰りたいと願っている

彼女を引き戻しているのは
過去の記憶なのか、香りなのか

線香花火をした時に、彼女はどんな表情をするのだろう

毎日、建物内を徘徊している男性は
イチゴ味のかき氷を食べたら何を話すだろう

音楽や会話、食事や体操
たくさんの活動をしているけれど

もっと皮膚に近い感覚のようのものの方が
人の気持ちに働きかけるのかもしれないと思う

手を重ねたり、体をさする

視線をあわせ、微笑みかける

そんな基本的なことの方が
大切なんだということを忘れないでいたい

理屈で考えるのではなく
ただ、正直に

感じることを大切にしたい






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