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マジ趣味なので。

「いや、それは有り得ない。レコードってのはね、技術的なピークが80年代後半なんだよね。だから、その頃作られたレコードってのが一番音がいいんですよ。これは間違いない」

数年前、音楽関連の仕事経験がある方とお話する機会があり、私がレコードを集めていると知ったその人に
『どうして今レコードなの?』と問われたので、

「音楽って、リマスターの様な新しく作られた物の方が音が良いと普通思うじゃないですか。でもレコードって違くて、
私はビートルズのレコードを集めてるんですが、時間を遡って行けば行くほど、 マスターテープに近づけば近づくほど、音が良くなっていく事が本当に面白くて」

とお答えした時の返答が、冒頭の言葉。
まぁ考え方は人それぞれだし、私の言葉も足りなかったので仕方ないんですが、
でもやっぱりわたし的には納得出来ないというか、

そういう作品もあるかもしれないけれど、
レコードって製造技術の他にも色んな要素で音を作っている訳で、そんな年代で音の良さを区切る事にとても抵抗があり、
私こそ「そんなこたァない」と思ったので

自分がリマスターではなくオリジナル盤に惹かれる理由についてもアレコレ説明させて頂いたんですが、
返ってくる言葉は全て「いや、そんな事はない」「有り得ないんだよね」。

勿論色んな考え方があって当然だけれど、ご挨拶もそこそこな初対面な人に対してこのやり取りの仕方というのもどうかと思うし、
そちらの問いかけに答えただけなのに、そこから先何を言っても完全否定って、それも大人げない…というか、

そもそも そちらから問うてるにも関わらず私の話す内容にハナから耳を傾ける気持ちすら感じられない姿勢、
そして一緒に仲間が何人かいたのに何故私にだけ強い語調で延々と?と思った時、

間違いなく私はこの方に嫌われており、言葉の端々やその表情から「女が偉そうにレコード語るな」って思ってるのも間違いなく
(「レコードの温かみのある音が好きなんですぅ♡」くらいの、ありきたりな答えが欲しかったのかもしれない)

流行に乗ってチョロっとレコード何枚か買ってコレクター気取りしてるって思われてるんだろうな…と思うと、とても悲しい気持ちになったと同時に

「女性のコレクターはナメられる」というのはこういう事なのか…とも感じた出来事だった。



「いや音さんホントごめんなさい、僕女性だと思って音さんナメてました!」

そう言ったのはビートルズ研究所 所長の本多さん。
先程の出来事より以前の話、友人に連れられてビートルズ研究所へ初めて行った際、検盤させて貰おうとレコードを持ってカウンターに行った時に言われた台詞で、
そんな別に言わなくてもいい事を正直に言っちゃう裏表のない本多さんは今でも好き(笑)

ただその時私は、そんなナメるとかナメられないとか考えた事も無かったので、
「男の人には私がそう見える事があるのかぁ」
というのは驚きだった。



私が子供の頃、音楽を楽しむ媒体はレコードがメインだったので、男性とか女性とか関係なく、皆何かしら家にレコードを持っていたし、
何なら実家の母は大好きな舟木一夫のドーナツ盤をダンボールいっぱいに持っていた。
コレクターとかマニアという括りで見れば男性の方が多かったとは思うが、
その頃レコードは皆のものだった。

しかし、今レコード屋さんで女性を見掛ける事は殆どなく、いつの間にかレコードを楽しむ事は男の人メインの趣味になっている。

勿論そこには理由もあって、レコードを聞くにはそれなりのオーディオ設備が必要で、メカニカルな事苦手な人の多い女性にはそれだけでハードルは高く、
手軽に楽しめるCDやサブスクに流れてしまうのも頷ける。

ただ、料理やお裁縫が得意な男性がいるように、メカニカルな事が全く苦にならない女性もいる訳で(私デス)、
何より、今は簡単に操作出来るレコードプレイヤーもある訳なので、
聴こうとさえすればレコードは誰でも聴ける、という事自体は昔と何ら変わらないのではなかろうか。

でもやはり、一部の男の人から見たら、自分達の領域と思っていた場所に女が踏み入って来るのは気分良くないのかもしれない。



『80年代後半に作られたレコードが一番良い音』という言葉、そして『いや、そんなこたァない』という自分なりの考え。それらは私の中であれからずっと澱のように心の奥底に重く留まっていて、
自分が間違ってるのかもと 、幾つか同じアルバムでオリジナル盤と80年代の物両方手に入れて聴き比べてみたりしたけれど、やはり私の好きな音は鮮度の良い活きのいいオリジナル盤の音だった。
リマスターものを否定している訳ではなくて、
音は嗜好品、あくまでも好み。
それが伝わらなかった事は今でもとても残念だし、
何より、限られたお小遣いで一所懸命な蒐集活動だというのに、女性と言うだけで一過性の「なんちゃってコレクター」と思われた事は、今でも腑に落ちないし悔しい。

ただ、その時にもっと語彙力が、耳を傾けて貰える様な語彙力が私にあれば、もう少し話を聞いてもらえたかもしれない。そういう思いもあれからずっと心の中にある。

音の良さを言葉で表現するって、本当に難しい。百聞は一見にしかずの逆、聴かせてあげられりゃ楽チンなのだけれど。

なので、音云々について論破しようなんて到底思わないけれど、レコードが好きで堪らないという自分の気持ちを表現する事は出来る訳で、それはいつも楽しく、そしていつも真剣にレコードのある生活を謳歌してるのが伝わる様な日記を書くこと。
純粋に好きという気持ちに男女差はないわけで、私のレコード愛が誰かに少しでも伝わってくれたら、それでいいかな。

そしてそう思いながら過ごした結果、前以上にレコード生活が楽しくて仕方なく、
裏を返せば、あれから更に充実した日々を送れているのは、あの頑固なおじさんのおかげも少しはあるのかもしれない…と思えなくもないかな。
ほんの少しだけかもだけど、そう思えれば、嫌な気持ちもプラスに転換出来そうな気がする。

いつの日か、私がビートルズ大好きで、レコード聴くのも集めるのも大好きで、
本気でレコードを集めている事が、その人に伝わる日が来たら嬉しいなぁ。


【おまけ】
ちなみに、、、

あの、ビートルズ研究所にて「ナメててごめんなさい」と言われた時に買ったレコードというのはこちら。

↓↓↓

「The Beatles」通称ホワイトアルバム UK Mono オリジナル盤 オールマト1の

保護紙付き 付属品完品の、

極美品✨

言ったでしょ。レコードに対しては私いつでも本気なんDeath✊🔥
だって、レコードは私のマジ趣味なんですから🎵

という事で、おしまい。

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